クルマのサスペンションと長いお付き合い

サスペンションの話、試乗記、旅の話、諸々・・・。

ゼロタッチバネ デミオ15MBの場合

2023-09-28 10:06:48 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
デミオ15MBでヒルクライム競技に参加されている方からの依頼で、ゼロタッチバネを製作しました。

すでに特注ビルシュタインを装着しているので、ゼロタッチバネを組み込む時に減衰力もチューニング。

今回のゼロタッチバネ製作にあたって純正バネ、車高、コーナーウエイトなどの
データを送って先方にゼロタッチバネ仕様を検討してもらったところ、
リヤはすでにゼロタッチバネであることがわかりました。

なので今回のゼロタッチバネはフロントのみ製作。

余談ですが、FF車のリヤはゼロタッチバネ仕様になっていることが多いのです。

*「ゼロタッチバネ」は一般用語ではなく、スペックを表すのに便利なので勝手な命名語です。

FF車のリヤは軽い上に、粘りのある接地感を得るため一般的にショックストロークをフロントよりも長く設定します。

ところがFF車の場合燃料タンクがリヤにあり、荷物、人が乗れば重くなります。
荷重変動幅が大きところにソフトなバネだと人が乗り降りするたびに車高が大きく変わります。

変動幅を少なくするには極力ハードなバネを選択したいのですが、
狙いの車高が出せて、ジャッキアップした時にバネが遊ばない⋯
その答えはまんまゼロタッチバネになってしまうということです。

さて、ゼロタッチバネを組み込んだデミオ15MBヒルクライム仕様。

軽く試乗してみました。

ひらりひらりの切り返しはもちろんコーナリングがとにかく軽快。

エンジンを降ろしたFF車のような応答といえばいいんでしょうか。

もちろんイメージですが・・・FF車なのにコーナリング番長!いや〜びっくり。

ゼロタッチバネのその後

2023-08-24 13:29:46 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
これまで製作してきたセロタッチバネキットの車型は次の通り。少しづつですが増えています。

・NA/NB共通。
・NC 専用
・ND 1.5l/2.0l共通
・デミオ ディーゼル4WD専用
・デミオMB専用
・Swift1.2l専用
・997ポルシェ専用
・レガシーアウトバック専用(納品待ち)

ローダウンキットと一番の違いはサスペンションの「アンチロール角」を生かしていること。
アンチロール角はロワーアームの下反角のことです。

ロワーアーム角と車高は連動しているので、ゼロタッチバネ製作時に「適正車高」になるように
こだわりの数値を依頼します。

個々の車両の特徴に合わせて調整をすることもあるのですが、適正車高はほぼ純正車高です。

ゼロタッチバネ仕様にしてバネレートアップした分、アンチロール角の角度変化量が純正バネの時よりも
少なくなるので、ロール運動に対して有利に働きます。

アンチロール角はロールに抵抗する力を生むのと、横Gを受けている間ロールを「起き上がらせる力」を
発揮し続けるので、ハンドル操作に対してキレキレのロールレスポンスが返ってきます。

これは元の構えに戻りやすいと言いかえることもできます。

サスペンションの筋力が何倍にもなって、ハンドル操作に対して車体ごとの動きが
ピタリついてくるクルマとの一体感が、笑顔で試乗から戻ってくる、の理由です。

仮に車高を下げてしまうと、ロワーアームの角度がアンチロール角からプロロール角ゾーンに移行するので、
横Gを受けるとロール角を増やす力を生みロールが深くなります。

今度はロールを「起き上がらせない力」として働き、横Gが消えるまでフラット姿勢に戻らなくなります。

もしローダウン仕様に乗っている人がいたら、ないしは経験者だったら、直進姿勢に戻る時、
「ハンドル」でロールを戻していることに気がつくはずです。

「適正車高仕様」と「ローダウン仕様」とはアンチロール角を効果的に使うか、プロロール角領域で
ロール応答をやっかいなものにして乗りにくくするかの違いがあります。

アンチロール角の存在は教科書に載っていません。

(それらしい説明がどこかにあるかもしれませんが⋯)

しかし、車高の上げ下げで起きることは明白で、ほとんどのクルマが当てはまります。

ゼロタッチバネの仕様を走らせれば、その「なるほど」が笑顔で実感できます。





サスペンションの相談

2023-07-28 14:34:10 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
知り合いから、最近手に入れたクルマについていたバネダンパーのキットが送られてきました。
どんな仕様なのかチェックして欲しい⋯

車高調整、全長調整、減衰力調整ができる優れものです。

減衰力値の測定から始めます。

これはダンパーの健康状態のチェックを兼ねています。

オイル漏れ、ピストンロッドの曲、傷も見ていきます。

それと作動ストローク寸法測定。

このキットの場合、フロントが110mm、リヤが140mm。

フロントに自由長180mmのバネが組み込まれているのですが、もしやと思ってバネストロークを計算してみました。

線径が11.7mm 巻き数が7巻なので11.7×7=81.9mm(全圧縮した時の計算上の寸法)

バネのセット長が178mm(プリロード2mm)

有効ストロークは178mm~81.9mm=96.1mm

ショックストロークが110mmなので、フルストロークする13.9mm手前でバネが底付きする計算になります。

さらにバネは全圧縮まで撓ませないで使うルールもあるので、バネストロークがさらに不足していることになります。

なので今回の組み合わせは当然NGです。

しかもバンプラバーが入っていない!

という結果が見えてきたのですが。

この先は知り合いと相談しながらです。




NA8C ロードスター用ドア内張をデザインしてもらいました

2023-06-30 10:03:34 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
ドア内張をデザイン

湿気で弱っていたドア内張のボードは、年月とともにドアから浮き上がって何とかしたい状態。

中古で出回っている純正品を探しても同じような年月を経ているので痛み方はそれなり。

テキトーな材料をカットして穴あけして⋯この方法なら綺麗に穴あけ加工されたボードが売られているので、
これにビニールレザーを貼れば修復完了。

なんですが。

FRP工房にお願いしていた試作品ができ上がってきました。



黒い方がFRP試作品一号、素の状態。

左側が内装用の赤い布を貼り付けて仕上げたもの。

内張を外した時に見えるドアの凹みを生かしたデザインをお願いしました。

室内空間が広がって見える視覚効果もあります。

平面剛性アップも。

それと端っこを切りっぱなしにするのではなく、
前後と下側をドアに抱きつくように回り込ませたので格段に剛性アップ。



カパッとドアに被せるイメージです。

取り付け前と後の写真。





FRPなので湿気の心配不要。



エンジンがかからない!?

2023-05-19 15:56:40 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
エンジンがかからなくなったので修理をお願いできますか。

車両はインプレッサです。

可能なら今からローダーで持ち込みます、と少し焦った感じの連絡が入りました。

聞けばエンジン不調でディーラーで点検してもらったところ、ウチでは修理できないと断られ、
帰路でトラブル再発⋯道路脇からの連絡と言うのが今回の話。

幸い⋯と言っていいのかどうか、フロントマンに、
別のお客さんが過去にエンジン修理をしてもらったことのある工場として当社を紹介されたとのこと。

さらにローダーが入っていけないような狭い路地の奥に自宅があるので、
自走できなければガレージに辿り着けない。

なんとも困った内容だったのでひとまずどうぞ⋯

ローダーから手降ろしした後エンジン始動を試みると⋯キュルキュルブルンッと一発で始動。

しかし直後にカンカンカンと耳を塞いでも聞こえてきそうな強烈な金属音、
あわててエンジンカット。

・・・何日か後にエンジンを分解してみると、一番のコンロッドメタルがどこかに消えてしまっています。

(粉々になってオイルパンの底にべったり付着していました)

こうなれば、コンロッド大端部とクランクピンの間に、メタルの板厚分を差し引いたガタが生じるので、
シリンダーヘッドまでピストンが届いて金属音⋯

2〜4番の子メタルもペラペラに薄くなって打楽器になる寸前。

あまりというかここまで摩耗してしまっているメタルを目にしたことがありません。

この状態でエンジンが掛かって走行できていたことが驚きです。

時々持ち込まれる、息の根が止まったから仕方ない"修理に出すか"のパターン。

気がつく?気がつかない?

2023-04-25 10:40:25 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
整備をお願いします。

運転練習用に最近手に入れたクルマがNBロードスター。
オーナーさんから、乗り出しの前に一通り整備しておきたい。
とメールがありました。

各部点検はもちろんのこと、気になる症状の項目が
・クラッチが重い
・MTの操作が重い、固い
・スロットル操作が微妙に引っかかる時がある(ごく僅かに開ける時)
⋯⋯原文のまま

クラッチが重い・・・
クラッチが重いは、クラッチディスクが摩耗して、クラッチカバーに
使われているダイヤフラムスプリングがコーン形状になって
重さを感じている可能性が一つ。
それか単純に強化クラッチに交換されているかもしれない。
他にペダル周りかレリーズベアリング周りの動きが渋くなって、
その重さがペダルに加わっているのかもしれません。

オーナーさんはこの中のどれかをおかしいと感じているのです。

ここがポイントで、不思議なことにクルマの操作系には重さの約束がある、
というのをほとんどの人が知っています。
つまり、これは正常ではないが分かるとも言えます。
人の道具を扱う本能!?とでも言えばいいのでしょうか。

MTの操作が重い・・・(シフトレバー操作)
これも同じで操作した時に何かおかしい!
しかし、このことに気がつく人と「乗りこなしてしまう」人がいます。

そこの境目はわかりませんが、気がつかない人でも正常なものと乗り比べれば、
その違いがわかるはずです。

スロットルが・・・
これについては、言われてみればそうだ!という人と。
知ってはいたけど時々だし、異常とは思っていなかった!
くらいの印象でとらえている人が多いかと。

でもそれが気になる人がいるんです。

クラッチが重いのは純正部品に、
スロットルとMTのシフトについてはオリジナルの"対策部品"があるので作業は簡単。

しかし⋯この"対策部品"は気がつく人向けのチューニングパーツ。

気がつかない人には無用の〇〇ということです。


乗り心地

2023-04-15 13:50:59 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
このクルマの乗り心地は◯◯◯。

その一言がズバリ的を得ていることがあります。

クルマのメカニズムに精通しているわけでもないし世間の評価も知らない。

女性の直感からくる一言。

どんな巡り合わせかこの手のドキッとコメントを幾度となく聞いています。

・コツコツする乗り心地が気になる。

これはルノーツインゴの印象。

この「コツコツ」を紐解いていくと、軽いショックと繰り返し入力であることが想像できます。

こんなシーンで起きる⋯を言われていないので、普段の道、良路でも起きているだろうこともわかります。

オーナー夫婦は、履いているタイヤの影響かあるかもしれないと考えて、
インチダウン、扁平比も1サイズアップして入庫。

さらに、新車購入前に試乗もしているので、その時には気が付かなかった⋯

購入後、旅の足として長距離で乗っているうちになんとなく気になり始めた。

それがコツコツする乗り心地⋯

試乗経験のある方でも、言われてみればそんな印象があったような
⋯程度の記憶に残るか残らないかの仔細なコツコツ。

助手席の人の一言にグゥ〜となったことはありませんか。

写真は村の厄神祭の参道作り。




データシート

2023-03-30 17:23:49 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
サスペンションのアライメントデーターをメモするためのデーターシートを
日々使用しているのですが、コレくらい作っておけばこの先しばらくは使えるはず⋯
と思って、作っておいたのが、最近になって残り少ないことに気がつきました。

一冊/100枚綴りで、20冊。

1ページに4回分のアライメントデータが書き込めます。

フェンダーアーチハイトと呼ばれる、ハブセンターとフェンダーアーチ間の寸法。
つまり車高からメモが始まります。

さらに・タイヤキャンバー角・サイドスリップ寸法(トーイン表記ではなく)・0G-1Gのホイールストロークなどを記録します。

仮にアライメント調整作業で入庫してきたとしたら⋯

入庫時のデーターと調整作業後のデーター、その後の試乗を挟んで、
足回りが馴染んだところでもう一度チェックして出庫時(引き渡し時)のデータを記録、
三段目まで書き込むことになります。

サスペンションキットを組み付ける場合だと、車高、ホイールストロークがどう変わったかを記録します。

白紙のメモ用紙でも事足りるのですが、データシートが重宝しています。

そろそろ印刷屋さんに注文せねば。


クルマのサスペンション その8

2023-03-12 12:51:09 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
ピッチング

車体が上下に揺れることをピッチングと言います。

しかしピッチングと聞いて思い浮かぶのは、前が下がると後ろが持ち上がり、
後ろが下がると前が持ち上がるシーソーのような揺れ方です。

遊具のシーソーには真ん中に軸があって交互に上下するのですが、クルマの場合は物理支点ではなく、
動きの一番少ないところを運動中心と考えます。

この運動中心がどちらかの軸上にまでくると、逆相で動く相手がいなくなるのでシーソー運動しなくなります。

割り箸の端っこを掴んで、反対側だけ上下させている状態で"片ピッチング"とも言えます。

揺れの中心が車軸よりも前方か後方に出てしまえば"同相"で上下し始めます。

ところが揺れの上限下限の車両姿勢から線を引いた先に交点があれば
これもピッチングセンターと教科書では説明されています。

同相で動いても逆相で動いても、あるところを中心にして動いているのだから
そこがピッチングセンターである。という説明は間違いではないのですが、
ピッチングセンターがホイールベース内にあるのと外にあるのとでは、快適さに違いが出ます。

「ピッチング」でひとくくりにしてしまうとこの違いを見逃してしまう可能性があります。

外にピッチングセンターがあれば快適方向。内側にあると不快な揺れです。

そこでホイールベース内に揺れの中心があるシーソー揺れを表すときはピッチング。

揺れの中心がホイールベースの外にあって、同相揺れを表すときはバウンシング。

これで揺れ方の違いがより分かりやすくなります。

サスペンションチューニングの基本は前後サスペンションが同相で動くようにすること。

乗り心地を損ねるピッチング(シーソー揺れ)はNGです。

クルマのサスペンション その7

2023-03-04 10:03:14 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
レーシングカーサスペンションと題したオートスポーツ4月号が出ました。

2023型スーパーフォーミュラのシャシーを中心に数十ページの大特集。

かなり見応え読み応えがあります。

ダンパーの話、ロールセンターの話、7ポストリグの話。

振動をどう処理するかがメインテーマのような雰囲気で話が進みます。

しかし紹介されている中で自分の経験にないのがマスダンパー、イナーター。

その使い勝手も含めて一体どんなものなのか分かりません。

その使用感、装着感をドライバーに聞いてみたいものです。

全ページかなり濃い内容で、おすすめです。