クルマのサスペンションと長いお付き合い

サスペンションの話、試乗記、旅の話、諸々・・・。

いい脚あり〼 ゼロタッチバネ その4

2021-06-29 14:11:39 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
ゼロタッチバネが市販車の多くに採用されていても良さそうですが、
一部の車両、あるいはリヤーサスペンションのみだったりして少数です。

一番の理由は、乗用車向けのバネは乗り心地を考えて、ピッチ挙動を
なるべく起こさない「前後の」組み合わせを重要視した設計、選択をされるからです。

地面に対して平行に揺れるフラットライドのモトになるものです。

前後のバネバランスが取れていて、バネレートがソフトなら、揺れを抑えるための減衰値も
最小限でいいので乗り心地に有利。というループが考えられます。

快適な乗用車のそれです。

ゼロタッチバネの場合は、車体を支えるのに必要な前後のバネレートを「個々に」決めるので、
ピッチ挙動に対しては特に考慮していない組み合わせ と言えます。

と言っても乗用車バネに対して二軒隣ほどの近いレートなので大袈裟なピッチングの心配はありません。

乗用車然としたクルマのバネレートに比べてややハード目なのと、
ピッチ挙動を出さないように減衰を仕込むので、締まり気味の仕上がりになります。

これがそのままスポーティーと言えるかどうかは分かりませんが、
バネレートアップによる動きの軽快さ、減衰を生かした収束性の良さと言ったことが合わさるので、
筋力アップしたサスペンションの印象になるとも言えます。

それもほどほどに。

いい脚あり〼 ゼロタッチバネ その3

2021-06-17 12:42:42 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
NCEC用のゼロタッチバネが出来上がってくるのを楽しみにしているのですが⋯もう少し時間がかかります。

「ゼロタッチバネ」とは呼ばれていませんが、プリロードがわずかで
ほぼゼロタッチに近いバネが純正装着されているケースがあります。

よく見かけるのは軽量なFF車のリヤスプリングです。

FF車の軽いリヤと長いストロークに合わせてバネを選ぶとソフトなレートになります。

しかしソフトなバネだと五名乗車に荷物を乗せるとお尻がへたり込んでしまいます。

積載を考えるとバネレートは高くしたい、でもそうすると今度は一人乗りの時に車高が高いままです。

そこで、バネを遊ばせないで車両重量とストロークから算出してレートを決めます。

これは今回のゼロタッチバネの考え方と似ていて、バネはなるべくハード目で
空車時に適正車高の範囲に入るものに落ち着きます。

他にも、サクシードのリヤバネ、35GTRの前後スプリングも理由は同じで、乗り心地に必要なストロークを保ちつつ、
重いバネ上荷重を支えられるバネとして専用設計されています(非線形バネ、又は可変レートと呼ばれるものです)

市販車に採用されているので、今回NCECロードスター用に計画しているゼロタッチバネも、
乗り心地の心配はいらないということです。

しかしゼロタッチならなんでも乗り心地OKかと言うと、ダンパーストロークを勝手にいじってしまうと、
そうはいかなくなります。

一般道をフツーに走らせるに必要なストローク範囲、或いは人中心とした常識的な乗り心地範囲があるからです。

必要なストロークを決めるところからサスペンションセッティングが始まる⋯⋯に話が戻ります。





いい脚あり〼 ゼロタッチバネ その2

2021-06-04 09:54:53 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
市販されていない(おそらく)NCEC用のゼロタッチバネの製作をスタートさせました。

通常バネを選択する時、バネレート、自由長、バネストローク、形状から探します。
又は製作依頼します。

ところが今回は取り付け寸法とストロークとバネ上荷重の情報からバネを作るので、レートは「できたなり」です。

あまり聞かないバネ選びの方法かもしれません。

仮にですが⋯真っさらのフォーミュラカーが目の前にあるとします。

これからシェークダウンのためのスターターセットを組むとします⋯

まずリヤから始めます、ゼロタッチ(プリロードゼロ)で組み込んで、
1G荷重を掛けてストロークの20%〜30%までたわむバネを選びます。

(ダウンフォースの掛からないマシンの場合は40%ー50%を狙います)

ここではゼロタッチからの「たわみ量」で選択するのがポイントで、車高はプッシュロッドで合わせます。

次にフロントのバネです。
前後重量配分を40:60として、前後バネレートの比率もこれに準じます。

リヤを1として、0.6〜0.7倍がフロントレートの目安なので、先に決めたリヤレートを基準に計算で出します。

フロントバネを組み込む時はゼロタッチではなく、今度は「プリロード」を掛けて
0G〜1Gがジャッキアップしても足が伸びない、ジャッキから下ろしても
車体が沈み込まないように組み込みます。最後にプッシュロッドで車高調整します。

これでシェークダウンの1周目から全開走行できます。

絶対車高とか、減衰力調整、スタビライザー⋯等々もあるのですが、
サーキットインしてからバネの選択に費やす時間が大幅に短縮できます。

この時の「リヤバネの選択方法」を使ってロードスター用の前後バネを作ります。

NCロードスターの場合、車高調整が自由にできるわけではないので、狙い車高になるように1G車高を指定します。

そんなんでいいの?はバネ屋さんの一言。