クルマのサスペンションと長いお付き合い

サスペンションの話、試乗記、旅の話、諸々・・・。

ロータスエリーゼのサスペンションセッティング その8

2016-01-29 21:29:07 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
オーナーコメントと結びつきそうなこと

エリーゼオーナーさんのコメントメモには、

(1)乗り心地が硬い
(2)ロールが大きいとRrが流れる、ヘアピンで内輪空転する、同時に失速する。
(3)Rrが流れるとコワイ。
(4)荒地のガタつきが気になる。
(5)減衰を硬くしていくと操舵に対する車体の反応に違和感がある。
(6)高速道路の乗り心地がよくない。
とあります。

現在履いている前後タイヤサイズの組み合わせが、オーナーの選択で(タイヤサイズが限られる)フロントタイヤのグリップに対して
リヤが不足気味なのは否めません。
これが(2)(3) Rrが流れる(流れ出しやすい)流れ出すとコワイの大きな原因と考えることができます。

Frショックの圧側ストロークが80mm近くあるので、旋回中に横Gが強くなるとフロントサスペンションが深くのめり込みます。

すると対角線上のリヤショックがシーソーの相手なので簡単に伸び切ります。
(伸びストロークが31mmしかない→指一本半ほどです!)

この時リヤタイヤは、地面から浮き上がりはしないものの、ボディーから吊りさがって、見かけ上接地しているだけの旋回姿勢になります。
接地荷重が少なくトラクションをかけると空転します、(2)失速の理由。

(1)乗り心地が硬い(良くない)はフロントの伸びストロークが18mm(指幅一本分)しかないのが大きく影響しています。

車体のわずかな揺れで伸びきり、伸び上がりが急激に止められるので、角のある不快な揺れのピッチングになります。

(5)減衰を高く調整すると、もともと「低バネ高減衰」の組み合わせがさらに減衰力オーバーになり、
もっさりとした車体の反応がさらに輪をかけて遅くなるので、操作入力とのズレが広がり、違和感につながります。

(6)Fr Rr共に伸びストローク不足⋯⋯フラット感が出ません。

こんなことが考えられます。




ロータスエリーゼのサスペンションセッティング その7

2016-01-23 22:56:33 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
減衰力値

エリーゼに装着されている、別タン式の減衰力調整機構ダンパーの減衰力値を測定します。

減衰力調整式なので、まずは車両入庫時のクリック位置のまま測定、続いてフルソフト、フルハードの順で測定します。

同時に減衰力波形の確認(健康状態)ガス反力値、油漏れ、などもチェック。

4本とも問題なし………取り付けブッシュの目玉が少し偏っているのを除いて。

さてその仕込まれている減衰力値をどう見るか?……

減衰力調整式のダンパーだから、クリックを回していけば答えが見つかるはず……でしょ? 伸び圧別調整式だし。

ここが意外に難しいところなんです。

中には、当たりくじの入っていない抽選会……のようなものもあるのです。

減衰値は低めよりも高めの方が収まりがよくて安定感があるのでは?

これも、多くの人が疑いを持たずに思い込んでいることです。

                

もちろんその程度によるのですが、明らかな「過減衰」は車両の動きを押さえ込みすぎて症状がわかりずらい・・・問題に気がつかないことがあります。
(動かないから安定していると勘違いされやすいのです)

減衰値だけの問題とは言い切れないにしても、リヤが流れ始めたら一瞬にして遠くまで流れるとか、
カウンターステアで車両姿勢を素早くコントロールしたいと思っても、過減衰の影響を受けてゆっくりしか戻らない⋯⋯からロールしたままスピン、
サーキットでよく見かけます。

どの位置にクリックを回しても良い感じが出なかったら、ダンパーチューニングをすることになるのですが、まずはこのままで走らせてみます。











ロータスエリーゼのサスペンションセッティング その6

2016-01-20 19:44:17 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
車高とショックストロークとバネレート

三点は深いつながりがあるので「立体的」なバランスを検証します。

まずは何をさておいての車高(ロールセンター高さ)から。

ハブセンター~フェンダーアーチ間の寸法でFr Rr 共に340mm……

現状の車高であれば適正範囲内なので問題なし。

その時のストローク分配は、伸びストロークがわずかで縮みストロークはタップリ、
特にフロントは………このバランスは問題ありです。

次にバネです。
仮に、装備されている別タン車高調が、ローダウンを想定した全長の短いダンパーセットだとすると、
現状では車高が下がっていないので、バネにプリロードが強くかかっていて、伸びのストロークが少ないのもうなずけるのですが、
セットされているバネレートは乗り心地仕様にするのにちょうどいいくらいの柔らかさで、
ハイグリップタイヤを履いてサーキットに乗り込めば、大きくロールするはずです。

と言って、硬いバネを選ぶと今度はクルマをリフトアップした時にショックストロークが余ってバネが遊び始めます。

そうなると対策はヘルパースプリングを追加するか、ショックストロークを適正な長さまで詰める(ショートストローク化)必要があります。

ショックアブソーバーを分解して、ショートストローク化などプライベーターには到底無理な話。

車高を除いて、ストローク分配とバネレートの見直しが必要そうです。





ロータスエリーゼのサスペンションセッティング その5

2016-01-17 22:46:44 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
プリロード

ショックアブソーバーにコイルオーバーされて組み付けられているバネのプリロード量を測定します。
「バネストローク」の確認のためです。

ショックストロークを使い切る前に、バネストロークがなくなる(全圧縮あるいは底付きする)と、
金属の筒状態になりサスペンションのどこかが壊れます………
その前にバネを全圧縮させる使い方は、衝撃音が出たりバネの都合からも………間違ったバネの使い方(選択)です。

直巻きバネは種類が豊富にあって、サスペンションセッティングに欠かせないものですが、バネレートが違えばバネストロークは皆違います。
(その取り扱いは意外と難しい…のです)

今回のエリーゼのそれは、フロントショックストローク98mmに対して、プリロード分を引いたバネストロークは80mm……明らかに不足しています。

リヤショックストローク97mmに対して、プリロード分を引いたバネストロークは102mm、ショックストロークよりも少し長いのでセーフ。

バンプラバーは荷重によって簡単につぶれます。
よってストローク検討する場合バンプラバーはないものとして考えます。

(バンプラバーが経年劣化でボロボロになって、役目をしなくなる可能性を考えると分かります、こういった例はよく見かけます)

今回のチェックではフロントバネストロークが18mm以上不足していることが判明。

何らかの対策が必要です。


ロータスエリーゼのサスペンションセッティング その4

2016-01-14 20:28:36 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
ホイールストロークとショックストローク

前後のホイールストローク(サスペンションストローク)を確認します。
ホイールがフルに上下した時に何ミリストロークするか。
(機械寸法のことです)

フロントショックストローク98mm リヤショックストローク97mm
(ホイールストロークに換算すると、フロント150mm リヤ139mm)

そしてそのストロークが1G車高の位置から縮み側と伸び側にどのように分配されているかを測定します。

フロント伸びストローク14mm 縮みストローク84mm

リヤ伸びストローク31mm 縮みストローク66mm

1G車高がロールセンター高さのどの位置なのかも確認します。

ロワーアームの角度が上反角なのか下反角なのか、どちらでもないフラットな状態をゼロとしてその寸法を測定します。

フロント+9mm リヤ-3mm
(プラス寸法がロワーアームの外側が下がっていて下反角がついている状態)

適正な車高があって、その時のサスペンションストロークがバランスよく分配されていることのチェックです。


ロータスエリーゼのサスペンションセッティング その3

2016-01-09 20:55:01 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
バネレート

車重の前後バランス、バネ下荷重、バネ上荷重までわかったら、次はバネレートです。

まずは車両から取り外してバネ単品のレートを測定します。
フロント4.2kg/mmリヤ5.8kg/mm

車両に取り付けられている状態のバネ固さ……つまり体感レートにするにはバネレートにレバー比をかけます。

そのレバー比とは、ホイールストロークを1としたときに、バネストロークはいくつなのかの比を表したものです。

(ホイールストロークはタイヤの上下ストロークの事、バネストロークとはバネのたわみ量の事)

今回は1G車高のポジションから、ホイールを上下20mm動かした時のショックストロークを測定しました。

フロントが0.65、リヤが0.7のストローク比でした。

(ホイールが40mmストロークした時のフロントショックストロークは26mm,リヤは28mm)

レバー比の表し方は、今回のようにホイールストロークを1とする時と、ショックストロークを1として、その時のホイールストロークを表す時もあります。
(どちらにしても簡単に換算できます)

単品のバネレートにレバー比を二乗した数値をかけるとホイールレートになります。

実車で体感するバネレート(体感レート又はホイールレート)はフロントが1.8kg/mmリヤが2.8kg/mm……………約ですが。
になります。

ロータスエリーゼのサスペンションセッティング その2

2016-01-05 21:16:42 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
前後重量配分

前後タイヤにかかる荷重データーがサスペンションセッティングには必要です。
コーナーウエイトのことです。

今回のエリーゼの場合。
実測でフロント荷重が310kg リヤ荷重が482kg トータル792kg

フロント39% リヤ61%の重量配分。

リヤの左右差は15kg程。
これにドライバー(体重55kg)が乗り込むとリヤの左右差は約30kgになります。
右ハンドルでドライバーが右に乗り、重いエンジンが右にオフセットしているからです。

コーナーウエイトが出たところで次にバネ下荷重を計ります。
ショックアブソーバーを外してタイヤの下に体重計を置いて計りました。
フロントが43.5kg リヤが46kg 。

コーナーウエイトからバネ下荷重を引くとバネ上荷重が出ます。
フロント155-43.5=111.5kg リヤ241-46=195kg
ざっくりですがこうなります。

ちなみにバネ下重量4本の合計は179kg
車重792kgから179kgを引くと613kg
バネ下/バネ上の179:613の比は約1:3.4

個々に見ると フロント43.5:111.5の比は1:2.6
リヤ46:195の比は1:4.2
参考までに………
110kgのリジットアクスルがバネ下の(リジットなので左右合計値です)ジムニーのバネ下バネ上の関係は
フロントが1:3.9リヤが1:3.1です。
エリーゼのフロントの1:2.6はバネ上の軽さに対してバネ下が重いと言えます。
軽快に見えるエリーゼも測定してみると実はという話。
乗り心地対策を施すときにバネ下の影響を考える必要がありそうです。