クルマのサスペンションと長いお付き合い

サスペンションの話、試乗記、旅の話、諸々・・・。

ポロGTIの場合 その3

2017-09-26 21:21:28 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
減衰力チューニングの前に⋯⋯

縮み側のストロークが足らなくてすぐに底付きするならバンプラバーを短くするとか、
ショックアブソーバーのケースを加工して、見かけのストロークを稼ぐ方法(ショート加工)があります。
ローダウンしたい⋯邪魔するものは切ってしまえ?と言った発想です。

考えるまでもなく、大きな入力を受けた時の衝撃をそのまま車体に伝えないように「緩衝材」の役目を持たされているのがバンプラバーです。
短く切れば当初の能力が無くなり、コンビニ入り口の段差などではそ〜っと通過せざるを得なくなります。

ウレタン製のバンプラバーの特徴として、力を受けて縮む時とそこから反発して伸びる時の力の大きさが違う⋯ダンピング機能を備えているので、
積極的に旋回中の外荷重をバンプラバーで受けさせて、ロールの深さを制限しているのです。
バンプタッチし始めるまでの距離と長さを変えるとその約束が崩れます。

さらにショックストロークとロワーアームは連動して動いているので車高を落とせばロワーアーム角が違ったセット位置になってしまうことです。
ロワーアームの角度は操縦性、安定性の「要」。

少しぐらいはと考えている人は⋯⋯おそらくそのことを知らないからだと思います。

続く⋯⋯





ポロGTIの場合 その2

2017-09-14 12:43:15 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
フロントショックの縮み側ストロークは43mmだというのが分かりました。

しかし見かけのストロークが43mmあってもすぐにバンプラバーを押しつぶしていくので全部はストロークしません。
押しつぶしていくにつれてバンプラバーの硬さが二乗倍三乗倍と、少しのストロークで一気に硬くなっていきます。
なのでバンプラバー長さの3分の1程が日常で使えるストローク(10数ミリ)、実用となるのは3分の2以下⋯約20〜25mm。

縮み側に30mmもストロークしたとしたらすでに2G近くの荷重で押しつぶしているはずです。
これは上からの荷重に限らず、下から突き上げられて車体を持ち上げる力を受けたときに、
車体とタイヤの間にあるバンプラバーが押しつぶされて発生する力なので、ストロークが止められてボディブローのような底付き感が出ます。
それがピッチングモーションの元になります。

ちなみに縮み側のストローク20mmというのはフォーミュラマシンのリヤサスペンションストローク(縮み側)と同じです⋯⋯

ここでカッコいい‼︎・・なんて思わないでくださいよ。
サスペンションの役目をタイヤがしてくれているのでガタガタするほどひどくはないものの、
乗員が受けるGは不快です。これが今回のガレージ入りに繋がったわけです。

縮みストロークを確保する方法として仮に25mm車高を動かしたとします(ショックストロークで22mm)

するとロワーアーム角はプラス5mm(2名乗車で下半角が付いた状態)になり、
ストロークのバランスは縮み側65mm(バンプラバーのつぶれを30mmまでと勘定すると52mm)伸びストロークは83mmです。
*車高の移動量にレバー比0.9を掛けてショックストロークに換算。

25mm車高を動かしただけでアーム角もショックストロークも良い位置に落ち着きました。
このことから、GTI以外のグレードは20〜25mm車高が高い位置にあるのでは? と推測できます。

結局GTI仕様にするために車高を下げたことでおかしなバランスになっていただけで、基本的な問題はなさそうです。

足し算引き算で、乗り心地の良い足にするために必要なストロークバランスを見つけることができました。
次は動的ストロークの味付けです⋯⋯減衰力チューニングのことです。

続く⋯⋯

ポロGTIの場合

2017-09-08 13:10:38 | ガレージレポート(オリジナルボックス)
ホイール径を17J→16Jに替えられている以外は純正サスペンションの「VWポロGTI」が入庫してきました。

乗り心地で気になるところが⋯

試乗の印象は、路面の凸凹の大半はうまくいなしてくれるのですが時々気になる振動が含まれています。
特に後席の乗り心地がやんわりとした上下動ではなく、上下ストロークの中にコツンコツンと軽くブレーキをかけるようなショックがあり、
この「小コツ」が乗り心地全体の印象に影響しているようです。

後席の乗り心地といってもフロントサスペンションの影響も受けるので、やはり全体を見ていく必要があります。
乗り心地はサスペンションストロークに依存しているのでまずはそこからチェックしていきます。

静的寸法と動的寸法⋯と書くとややこしいのですが、バネとか減衰値を硬くしていくと動かない足「動的ストローク」が短いと考えることができます。
乗り心地が硬くなる、あるいは不快な方向です。

これの元になっているのが機械寸法です。例えば縮みストロークが極端に短かったりすると底突きして強いGが発生します。
なので持ち合わせているストロークを伸びと縮みでどのような分配にするか、
つまりは車高をどの位置にセットするのがいいのかといった考え方です。

アライメントリフトに乗せていつもの身体チェックから始めます。

フロントロワーアーム高さはマイナス5mm(バンザイしている上反角状態)1Gー0Gのホイールストロークが105mm。

2名乗車で車高はさらに12〜13mm下がります。
そうなるとロワーアーム高さはマイナス17mm、1Gー0Gのホイールストロークは117mmとなります。

次にショックストロークとの関係をみます。
ホイールストローク(1として)ショックストロークは(0.9)のレバー比で動くので117mm×0.9は105mm。

ストラットのストローク寸法は148mm(伸びきりから縮みきりまでの可動量)なので、148mmから1Gー0Gの105mmを引きます。
これはジャッキアップしてタイヤがだらんと釣り下がったところから、ジャッキを外して地面に降ろした姿勢までのショックストロークです。
残りのストロークは43mm。

現在の車高から足が伸びる方向に105mm、縮む方向に43mmの分配だということがわかります。

フロントストラットの148mmストロークの中にはバンプラバーが組み込まれていて、伸びきり時のバンプラバー先端からタッチ開始までのストロークが105mm。

ちょうど2名乗車時の1G姿勢の時が105mmストロークしている位置なので、ゼロタッチポイント(押し付けてはいないが触れている状態)にバンプラバーが待機していることがわかります。

縮み方向には常時バンプラバーをつぶしながらストロークすることになるので、入力(ストローク寸法)が大きくなればバンプラバー硬さの影響を受けます。

凸にフロントが乗り上げるとピッチングモーションのきっかけを生み、車体リヤが沈み込む方向の入力を受けつつ凸を通過するので
⋯⋯特に後席の乗り心地がやんわりとした上下動ではなく、の理由が見えてきます。


続く・・・