東京・台東借地借家人組合1

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【判例】 ①更新料返還等請求事件等 (京都地方裁判所 平成21年09月25日判決) 事案の概要

2010年02月08日 | 更新料(借家)判例

 判例紹介

◆事件番号・・・・ 平成20(ワ)947
◆事件名・・・・ 更新料返還等請求事件等
◆裁判所・・・・ 京都地方裁判所 第3民事部
◆裁判年月日・・・・ 平成21年09月25日
◆判示事項 ・・・・原告が,被告に対し,更新料条項及び定額補修分担金条項はいずれも消費者契約法10条に反し無効であるとして,賃貸借契約中に3回にわたり支払った更新料合計22万8000円及び契約締結時に支払った定額補修分担金12万円の返還を求めたところ,被告が,原告及び連帯保証人に対し,未払の更新料の支払を求めた。本判決は,更新料について,賃料の補充とみることや,賃借権強化の対価の性質を有するとみることは困難であるし,更新拒絶権放棄の対価という性質も希薄であって,更新料は,更新の際,賃借人が賃貸人に支払う金銭という一種の贈与的な性格を有するものであるとした上で,原告と被告との間の情報量の格差等の事情も考慮して,消費者契約法10条に反して無効であるとし,定額補修分担金についても,同条に反して無効であるとした事案である。


 平成21年9月25日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官
 平成20年(ワ)第947号 更新料返還等請求事件(第1事件・本訴)
 平成20年(ワ)第1287号 更新料反訴請求事件(第2事件・反訴)
 平成20年(ワ)第1285号 保証債務履行請求事件(第3事件)

 

主        文

 

 

 

事 実 及 び 理 由

 

 

 (1) 主文1項同旨
 (2) 原告と被告会社との間で,両者間の平成15年4月1日付け賃貸借契約に基づく,原告の被告会社に対する平成19年4月1日付け契約更新に係る更新料7万6000円の支払債務が存在しないことを確認する。

 2 第2事件(反訴)
原告は,被告会社に対し,7万6000円及びこれに対する平成19年9月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 3 第3事件
被告Aは,被告会社に対し,7万6000円及びこれに対する平成19年9月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2  事案の概要
 本件は,①被告会社からマンションの一室を賃借した原告が,その賃貸借契約中の,原告が更新料を支払う旨の条項(以下「本件更新料条項」という。)及び原告が定額補修分担金を支払う旨の条項(以下「本件定額補修分担金条項」という。)はいずれも消費者契約法10条により無効であるとして,被告会社に対し,不当利得返還請求権に基づき,既払の更新料及び定額補修分担金の合計34万8000円及びこれに対する訴状又は訴え変更申立書送達日の翌日からの民法所定の遅延損害金の支払を求めるとともに,未払の更新料7万6000円の支払債務が不存在であることの確認を求めた(第1事件(本訴)。前記第1の1)ところ,②被告会社が,本件更新料条項は有効であるとして,原告に対し,反訴請求として,その未払更新料7万6000円及びこれに対する催告期間満了日の翌日からの民法所定の遅延損害金の支払を求めた(第2事件(反訴)。前記第1の2)上,③上記賃貸借契約における原告の連帯保証人である被告Aに対しても,その未払更新料7万6000円及びこれに対する催告期間満了日の翌日からの民法所定の遅延損害金の支払を求めた(第3事件。前記第1の3),という事案である。

1  前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)
 (1) 当事者等
 ア被告会社は,不動産管理業,不動産の仲介及び売買,不動産賃貸業等を目的とする株式会社である。
 被告会社は,昭和61年11月15日に建築された京都市a区b町c-d所在の建物(以下「本件建物」という。)を,平成12年3月24日競売により取得し(甲13,乙11),これを賃貸物件とするために建物内の部屋(48室)に改装を施し,建物名を「Bハイツ」とした上,これらの部屋を賃貸していた。

 イ原告は,熊本県の出身であり,C大学D学部に進学するに際し,京都市内に居住する必要が生じたため,後記のとおり,被告会社から本件建物の一室を賃借し,平成15年4月からそこに居住していた。

 (2) 賃貸借契約等の締結(乙1)
 ア原告と被告会社は,平成15年4月1日,以下の内容の賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)を締結し,同日,被告会社は,原告に対し,本件賃貸借契約に基づき,以下の物件を引き渡した。

  物件  本件建物311号室(以下「本件居室」という。)
  期間  平成15年4月1日から平成16年3月31日まで
  賃料  月額3万8000円

  イ同日,被告会社と被告Aは,被告Aが本件賃貸借契約における原告の債務を連帯保証する旨の契約を締結した。

 (3) 本件賃貸借契約等に関するその他の定め
  ア 本件賃貸借契約の契約書では,各種の条項(以下「本件賃貸借契約条項」という。)が定められており,その中には別紙のような規定がある。

 (乙1)
 イ 以上のほか,本件賃貸借契約の内容として,原告と被告会社は,共益費及びRCV料(ケーブルテレビ使用料)を月ごとに一定額支払うことについても合意した。(乙1)

 (4) 本件賃貸借契約等に関するその他の事実
 ア 重要事項説明
 原告は,仲介人であるE株式会社から,平成15年3月14日,同日付けの重要事項説明書により,「借賃及び借賃以外に授受される金銭」として,賃料の2か月分の更新料があること,12万円の定額補修分担金があることの説明を受けた。(乙9)

 イ 定額補修分担金の支払等
 原告は,本件賃貸借契約の締結に際し,契約書中の「私は,本契約締結にあたり以上の説明を受け,上記事項を熟読の上,ここに定額補修分担金の支払いを了承し,その支払いに合意致します。」との記載の後に署名,押印し(乙1),被告会社に12万円の定額補修分担金を支払った。

 ウ 本件賃貸借契約の更新
 (ア) 原告と被告会社は,1平成16年2月27日,2平成17年2月28日及び3平成18年2月28日の3回,それぞれ,原告が被告会社に更新料として賃料の2か月分に当たる7万6000円を支払って,期間
を①については平成16年4月1日から平成17年3月31日まで,②については平成17年4月1日から平成18年3月31日まで,③については平成18年4月1日から平成19年3月31日までとして,本件
賃貸借契約を合意更新した。(甲1,2,乙2)

 (イ) 原告は,上記最終の合意更新による賃貸借期間満了後の平成19年4月1日以降も,本件居室の使用を継続し,よって,本件賃貸借契約は同日から法定更新された。原告は,この法定更新時に,被告会社に対して更新料を支払っていない。(甲3,乙3)

 (5) 関係する法律の定め
 ア 消費者契約法10条
 民法,商法(明治32年法律第48号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって,民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは,無効とする。
(以下,「条項であって」までの部分を「前段要件」,その後の部分を「後段要件」という。)。


 イ 借地借家法
 (ア) 26条1項
 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において,当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは,従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし,その期間は,定めがないものとする。

 (イ) 28条
 建物の賃貸人による第26条1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは,建物の賃貸人及び賃借人・・・が建物の使用を必要とする事情のほか,建物の賃貸借に関する従前の経過,建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して,正当の事由があると認められる場合でなければ,することができない。

 原告(借主)の主張へ続く 

第1  請求
  1  第1事件(本訴)
 1 被告会社は,原告に対し,34万8000円及び内金22万8000円に対する平成20年3月6日から,内金12万円に対する平成20年7月2日からいずれも支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 本件確認の訴え(後記第1の1(2))を却下する。
3 被告会社の第2事件及び第3事件についての各請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は,全事件を通じて被告会社の負担とする。
5 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。