東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

【Q&A】 私道を所有している地主が下水道工事の承諾をしません

2011年11月01日 | 承諾に関して

 【問】 私の借地は公道から私道を入った奥にありますが、今度水洗化工事をしようと思っています。ところが、私道を所有している地主が、地代の値上げとか・承諾料とかを要求して下水道工事を承諾してくれません。どうしたらいいでしょうか。


 【答】 下水道整備は地方自治体や政府の重要な施策になっていることはよく知られています。水洗化工事をしようとするとき、自分の土地だけで下水道管の埋設工事が出来ればいいのですが、ご質問のように他人の土地を使わしてもらわなければ工事が出来ないという場合もめずらしくありません。たいていの場合は、私道に下水道管を埋設することについて、近所の方々は了解してくれるものです。しかし、地主から不当な妨害を受けたとき、水洗化工事を諦めなければならないのでしょうか。諦める必要はないというのが結論です。

 借地人は、地主から建物を所有する目的で借地しています。借地上の建物には当然人が居住したり・営業したりするわけですから、地主としては、借地人に対して建物所有が全うできるように土地を貸す義務があります。昔は、下水道がなくともそれが当たり前であったでしょうが、現在は、下水道を引いて水洗トイレを使用することが普通の状況にあります。ですから、地主は、土地を貸すという義務の内容として、借地人が下水管埋設工事をすることに協力する義務があります。

 また、法律は隣地の土地利用について、いろいろな規定を設けています。例えば、塀や建物を作ったり修繕するときは隣の土地を使用することが出来る(民法209条)、袋地となった土地の人は他人の土地を通行することが出来る(民法210条)、一段高い土地の人は隣の低い土地を使って排水を流すことが出来る(民法220条)という具合です。

 私道の奥に居住する人はどうしても他人の土地を利用しなければ日常生活が出来ませんので、こういった法律を置いているわけです。さらに、下水道法という法律には、公共下水道が出来た場合、排水区域の土地所有者はその土地の下水を公共下水に流入させるために必要な配水管その他の排水設備を設置することが義務とされています(下水道法10条)。借地人にもこの義務があるわけです。その場合、他人の土地を使用しなければ下水を公共下水道に流入させることが出来ないときは、他人の土地に排水設備を設置することが出来る(下水道法11条)とされています。

 これらの法律の規定から見ても、地主が下水管埋設工事を拒否することは法律が認めていません。地主がどうしても承諾しないときは、裁判所に、承諾を請求したり、工事の妨害を禁止したりする法的手続きをとることが出来ます。

 

東借連常任弁護団解説

Q&A あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より


(参考) 
 【判例紹介】 地主は借地人に下水道敷設につき承諾義務を負うとされた事例東京高裁平成9年8月30日判決、判例タイムズ1998年10月25日号134頁以下)

 

東京・台東借地借家人組合

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