増改築禁止特約があっても、リフォームや修繕に地主の承諾や承諾料を支払う必要はない
(問) 借地上の建物の修復工事とリフォームを考えている。内訳は外壁の亀裂の修理、及びベランダ・風呂場・台所のリフォーム。なお、契約書には増改築特約がある。地主の承諾や承諾料を支払わないと工事は出来ないのか。
(答) 市販の借地契約書や不動産仲介業者が使用している契約書には「建物の増改築をする場合には事前に賃貸人の承諾を受けなければならない」という条項が挿入されている。これに「違反した場合、地主は催告を要しないで借地契約を解除する」という旨の特約を無断増改築禁止特約と言う。しかし、常に借地人がこの契約条項に拘束されていては借地の利用が制約されてしまう。
そこで増改築の承諾を巡る当事者の協議が調わない場合は裁判所が借地人の申立てにより、その増改築についての地主の承諾に代わる許可を与えることが出来る(借地借家法17条)。これにより地主が増改築禁止特約を盾に増築や改築を認めない場合でも裁判所の代諾許可を得れば適法に増改築が行える。
裁判所の許可の手続きをしないで無断増改築を行った場合、直ちに契約解除が認められるのか。
判例は「建物所有を目的とす る土地の賃貸借契約中に、賃借人が賃貸人の承諾をえないで賃借地内の建物を増改築するときは、賃貸人は催告を要しないで、賃貸借契約を解除することができる旨の特約(建物増改築禁止の特約)があるにかかわらず、賃借人が賃貸人の承諾を得ないで増改築をした場合においても、この増改築が借地人の土地の通常の利用上相当であり、土地賃貸人に著しい影響を及ぼさないため、賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りないとき は、賃貸人が前記特約に基づき解除権を行使することは、信義誠実の原則上、許されない。」(最高裁1966(昭和41)年4月21日判決 民集21巻4号720頁)としている。
つまり、無断増改築であっても、地主に対する信頼関係を破壊する恐れがあると認められない場合は契約の解除は出来ない。総ての増改築について地主の承諾が必要という訳ではない。
それでは地主の承諾なしに増改築出来る範囲はどの程度なのか。
前記最高裁は、家族が居住していた2階建建物の「一部の根太および2本の柱を取りかえて本件建物の2階部分(6坪)を拡張して総2階造り(14坪)にし、2階居宅をいずれも壁で仕切った独立室とし、各室 ごとに入口および押入を設置し、電気計量器を取り付けたうえ、新たに2階に炊事場、便所を設け、かつ、2階より 直接外部への出入口としての階段を附設し、結局2階の居室全部をアパートとして他人に賃貸するように改造した」という無断増改築の事例(最高裁1966(昭和41)年4月21日判決)において、無断増改築禁止の特約違反を理由とする地主の解除権を認めなかった。
「改築とは、建築物の全部若しくは一部を除却し、又はこれらの部分が災害等によつて滅失した後引続きこれと用途、規模、構造の著しく異ならない建築物を建てることをいう。従前のものと著しく異なるときは、新築又は増築となる。なお、使用材料の新旧を問わない」(昭和28年住指発第1400号 改築の定義 昭和28年11月17日 建設省住宅局建築指導課長から国家消防本部総務課長宛)
以上が建設省住宅局建築指導課が示した「改築」の定義である。
改築定義の「一部を除却」とは、建物の一部を完全に除去してしまうことを指し、例えば、柱や屋根がなくなってしまう状態である。なお内部の間仕切を変更すること自体については、上記の通り「改築」の定義から、「改築」とは言わない。例えば建物内部の間仕切り壁を解体し、間取りを変更する等の建物の外形線が残るような状態は「修繕」または「模様替」(「リフォーム」)に該当する。
既存建物の維持・保存に必要な通常の修繕修復工事や建物のリフォームが増改築禁止特約に触れないと言うことは勿論のことである。
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