保証金/敷金トラブル/原状回復/法定更新/立退料/修繕費/適正地代/借地権/譲渡承諾料/建替承諾料/更新料/保証人
自主的に組織された借地借家人のための組合です。
居住と営業する権利を守ろう。
受付は月曜日~金曜日(午前10時~午後4時)
(土曜日・日曜日・祝日は休止 )
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。
判例紹介
更新前の賃貸借契約に関して作成された公正証書に基づいて更新後の賃貸借契約により発生した債権を請求債権とする強制執行ができないとされた事例 (東京地裁平成8年1月31日判決。判例時報1584号124頁)
(事案の概要)
X(借主)とY(貸主)は、1988年、建物賃貸借契約を締結し、90年の更新に際し賃貸借契約に基づく金銭債務に関する執行認諾約款を含む公正証書を作成した。92年の更新では、賃料や保証金等については合意が成立したが、契約締結方式について合意ができぬままXはYに新賃料を支払い続けた。
Yは、92年の更新が合意更新で94年に法定更新され、Xに更新料及び保証金償却分の支払義務があるとして、90年に作成された公正証書に基づき強制執行した。Xは右強制執行が許されないとして提訴した。
(判決の概要)
本判決は、「公正証書の債務名義として効力の及ぶ範囲は、当該公正証書の記載に従い客観的に決すべきである。本件公正証書についていかなる請求権が特定掲記されているかを見ると、期間満了前の賃貸借関係から発生する賃料債権等は表示されているが、更新された後の債権については、わずかに「次回」の契約更新のときにおける新賃料及び保証金について触れられているにすぎず、「次回」の字義もあいまいであり、しかも、その内容は、最低でも旧家賃の10%に増額するとか、双方協議の上増額するというに留まり、特定に欠けるものであって、結局、更新された後の債権については何ら特定掲記がされていないということができる。そして、他に本件公正証書の記載から、更新前の賃貸借条項がそのまま更新後の賃貸借に適用され、かつ、これについて執行認諾約款を付すなど、将来の更新によって発生すべき賃料請求等を特定表示しているものと認められるに足りる事情も窺えないから、本件証書は、……中略……これらについては債務名義とならない」と判示して、強制執行を認めなかった。
(寸評)
執行認諾約款を含む(通常公正証書にはついている)公正証書は、金銭債権について判決と同様の効力をもつもので、賃貸借契約についていえば、家賃の不払などがあった場合、公正証書を使えば裁判をせずに不払家賃取立の強制執行ができることになる。
公正証書の効力が及ぶ範囲については、公正証書の記載自体だけから判断されるべきだとされており、本判決もこの考え方を前提に更新後の賃料や保証金の追加について特定に欠けており強制執行はできないとしたもので、賃貸契約書が公正証書で作成されているケースについて参考になる判決である。
なお、本件では、92年の更新が合意更新か法定更新かについても争点となっており、どのような事実があれば法定更新となるか判断されており、この点にていても参考になる判決である。
( 1997.03.)
(東借連常任弁護団)
東京借地借家人新聞より
東京・台東借地借家人組合
無料電話相談は 050-3656-8224 (IP電話)
受付は月曜日~金曜日 (午前10時~午後4時)
(土曜日・日曜日・祝祭日は休止 )
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。