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自主的に組織された借地借家人のための組合です。
居住と営業する権利を守ろう。



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大田区西馬込1丁目居住の上岡さんは、賃借中の木造瓦葺2階建1棟居宅兼作業場の建物を取得した隣人の家主から、建物の老朽化を理由にした明渡調停を起こされた。だが、明渡調停は不調となった。
そんな関係から、 これまでも家主に何度も雨漏りの修繕を申し出たが、それに対する家主からの返事はなかった。今回、改めて書面で雨漏りの修繕請求したところ、家主代理人弁護士から家賃と比較して工事費が高額であると拒否回答をしてきた。
上岡さんが依頼した業者の見積書は、29万円余で9万円の家賃と比べても適正であると通告した。だが、それに対する返事はなかった。
やむを得ず上岡さんは雨漏り工事を着工した。すると梯子設置等に家主の協力があり、2日で工事は終了した。家主の協力があり,修繕費に関してやや期待したが、家主は工事代金の支払を拒否した。
そこで、供託中の家賃から月額3万円X9回分の27万円と、最後2万円余との合計29万円余を相殺することを通知し、2月分の供託から実行した。
東京借地借家人新聞より
参考条文
賃貸物の修繕等
第606条 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。(民法606条1項)
賃借人による費用の償還請求
第608条 賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。(民法608条1項)
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網入りガラスの構造的欠陥によるヒビ割れ
アパートを退去する際、南側ベランダの大きな網入りガラスの交換代金として、2万5千円を敷金から差引かれた。ガラスのヒビ割れは、ある日自然に出来たものである。交換代金の負担は納得出来ない。
そこでガラス屋を何軒も廻り、網入りガラスに関して色々と疑問を訊いてみた。
①網入りガラスの網は鉄製でステンレスは殆ど使われていない。
②カットされたガラスの切断面は、切りっ放しで何の防水処理もされていないものが多い。
これらのことから以上のことが判明した。
①結露や雨水が窓の下方のパッキンの中に溜り、鉄製の網は錆びてくる。
②その錆による体積の膨張でガラスに亀裂が生じる。
これが「錆割れ」と言われるものである。
この他にガラスと金網の熱膨張率の違いで割れる「熱割れ」というのもある。
①特に南側の窓ガラスの場合は太陽が直接当たる部分と影の部分が出来る時間が長い程割れ易いと指摘されている。
②窓ガラスの直ぐ近くにカーテンが有る場合と無い場合では有る方がガラスが割れ易いという調査結果がある。
③また窓ガラスの近くでストーブを使うと熱膨張で割れ易いという。
網入りガラスは金属とガラスという熱膨張率の違うものを挟み込んでいるので、構造的に割れ易いと指摘されている。
これが硝子屋廻りをして得た結論だ。この努力が報われて、ガラスの補修費の2万5千円は返金された。
(*) 網入りガラスのヒビ割れに関する保土ヶ谷簡裁の判例(1995年1月17日)がある
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家主に下水の詰り工事を依頼するが拒否される
台東区下谷の福沢さんは、築40年になる借家で暮らして20年になる。
数年前から家屋の各所に不具合が生じてきていたが、軽微な工事だったので自費で修繕していた。
しかし、今年になってからの下水の詰りは、業者の見積もりによると高額な工事代金が必要と解り、家主に修繕して欲しい旨を伝えたが修理工事を拒否された。
下水の詰りは、炊事・洗濯・トイレ等日常生活にも支障をきたす状態となり組合に相談した
組合の指導で以下の趣旨を記した内容証明郵便を家主に送った。
①下水が詰まり困っている事(故障している事実或は状態)
②水道工事業者の復旧工事の見積では**円になる事
③いつまでに復旧工事をするのか、(着手する期日(*月*日までに)を確定する)
④期日までに復旧工事が行われない場合には取敢えず当方にて工事する事。
⑤しかし、その工事代金は家主の負担であり、支払い家賃と相殺する事
⑥満足に使えなかった期間分の家賃も差し引く事
結果は直に現れた。家主は、内容証明郵便に驚き、直ちに下水工事に着手した。
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南側窓の網入りガラスの自然破損
その交換費用を支払う義務があるのか
(問) ベランダの網入りガラス2面の破損代金を請求されています。自然にヒビが入ったものでも、弁償しなければならないのでしょうか。
(答) 網入りガラスに何もしていないのにヒビが入ったという経験をした人、現在ヒビが入っているという人は結構多い筈である。普通、ガラスに物が当って割れる場合はぶつかったところから放射状に亀裂が入る。
ところが、自然にヒビが入ったと考えられる網入りガラスは、陽当りのよい部屋の南側に位置している筈である。そして、ヒビはガラスの下部に集中している。このヒビ割れはガラスの端から始まり、次に90度の方向に曲線を描いて割れるという特徴がある。このような状態にヒビ割れていたら、それは金属とガラスの熱膨張率の差から自然にヒビ割れが生じたものである。「熱割れ」と言われるものである。
また最近、結露や雨水が下方のパッキンの中に溜まり、鉄製の網の錆による体積の膨張も原因の一つと考えられている。いわゆる「錆割れ」である。ヒビ割れ情況がガラスの下部に集中していることからも錆が原因していると考えるのが自然である。近頃業者は、網入りガラス交換に際し底面と下方側面に防水テープを貼っている。これは切口の網部分からの水の滲入を防ぐためである。熱と錆二つの理由が競合していると考えるのが合理的であろう。
質問者と同様の問題で争われた保土ヶ谷簡裁の判例(1995(平成7)年1月17日判決。平成6年(ハ)第819号 敷金返還請求事件)(註1)がある。
「網入りガラスは切断する際に網も切らなければならないために切り口に傷がつきやすく、そのため端部の強度が網のないガラスの半分程度に落ち、より小さな温度差で割れが起こり易いこと、熱割れの特徴は必ず端部から生じ、しかも端部に直角に生じること、本件建物の窓ガラスの破損は右熱割れの特徴に符号するものである」。
網入りガラスは熱膨張により破損し易いと認定し、賃借人がガラスを破損したということを認めるに足りる証拠がないから、賃借人が窓ガラス破損の責任を負う理由がないと判示している。ガラスの破損は貸主の負担すべきものとして、借家人の金銭的負担を免除している。
この裁判の控訴審の横浜地方裁判所(平成8年3月25日判決。平成7年(レ)第3号 敷金返還請求控訴事件)(註2)では、「窓ガラスの破損につき、前記認定のとおり、網入りガラスは熱膨張により破損し易いところ、被控訴人(賃借人)が右破損に何らかの寄与をしたことを認めるに足りる証拠がない(被控訴人が窓ガラスの破損の責任を認めていたことを認めるべき証拠もない。)から、被控訴人が窓ガラスの破損につき責任を負う謂れはない。」と判示している。
上記横浜地方裁判所は修理特約が契約書に書き込まれていても、「本件修理特約の趣旨は、民法606条による賃貸人の修繕義務を免除することを定めたもので、右特約により、被控訴人(賃借人)が当然に本件建物の修理・取替費用を負うことはないと解すべきである。また、本件賠償特約は、本件建物の損傷について損害賠償義務を定めるが、賃貸契約の性質上、この損害には、被控訴人が、本件建物を通常の態様で使用した結果発生した損害は含まれないと解すべきである」(註3)という重要な指摘をしている。
ヒビ割れの根本原因は、網入りガラスの構造的欠陥と切口の錆止め対策の不備に因るものであるり、相談者の故意・過失よる損傷ではない。
結論、判例などからも相談者は網入りガラスの破損代金を払う必要はない。
(註1)「賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン」(大成出版社 1999年3月)197頁
「改訂版 賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン」(大成出版社 2004年9月)には、上記保土ヶ谷簡易裁判所判決は掲載されていない。
(註2)「賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン」(大成出版社 1999年)195頁
(註3)「賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン」(大成出版社 1999年)193頁
関連記事 『自然に割れた網入りガラスの交換代金を請求される』
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備付けのエアコンの修理代金は
修繕特約がある場合でも家主の費用負担
(問) 賃貸マンションの備付けのエアコンが故障し、不動産管理会社に修理を依頼したところ、特約で修理は賃借人負担となっているので、電気店に自分で修理を依頼するようにと断られた。取敢えず自分で電気店へ修理を頼み、室外機のコンプレッサー不良交換で、5万円の修理代を支払った。本来備付けの設備は、貸主が修理代金を負担するのが道理だと思うのですが。
(答) 民法606条1項で賃貸人は修繕義務を負っている。賃借人の故意・過失がない限り、賃借人が修繕をした場合、賃貸人に対してその費用を請求することが出来る。但し、同条は、任意規定であり、特約で修繕義務を賃借人に負担させることは可能である。しかし特約を結べば何でも認められる訳ではない。
(1)「借家人の負担において修繕を行う旨の特約をもって賃借人に積極的に修繕義務まで課したものと解することはできない。仮に修理特約により何らかの修繕義務を負うものとしても、その範囲は小修理・小修繕の範囲に限られるべきである」(名古屋地裁 平成2年10月19日判決)。
(2)「修繕特約は、一定範囲の小修繕については賃借人の全額負担とする旨を定めたものであるといえるが、居住用建物の賃貸借における特約の趣旨は、通常賃貸人の修繕義務を免除したにとどまり、更に特別の事情が存在する場合を除き、賃借人に修繕義務を負わせるものではない」(仙台簡易裁判所 平成8年11月28日判決)。
(3)横浜地方裁判所は修理特約が契約書に書き込まれていても、「本 件修理特約の趣旨は、民法606条による賃貸人の修繕義務を免除することを定めたもので、右特約により、被控訴人(賃借人)が当然に本件建物の修理・取替 費用を負うことはないと解すべきである。また、本件賠償特約は、本件建物の損傷について損害賠償義務を定めるが、賃貸契約の性質上、この損害には、被控訴人(賃借人)が、本件建物を通常の態様で使用した結果発生した損害は含まれないと解すべきである」(横浜地方裁判所 平成8年3月25日判決。平成7年(レ)第3号 敷金返還請求控訴事件)
即ち、家主の修繕義務を免除したにとどまり、積極的に借家人に修繕義務を課したものではない。仮に修繕特約によって賃借人が修繕義務を負うとされる場合でも、少額の費用で済む「小修繕」についてのみ修繕義務を負い、「大修繕」については修繕義務を負わない。従って、大修繕に関しては修繕特約を結んでも無効というのが裁判例である。
上記、横浜地裁判決では、通常使用で発生した破損・損耗等の損害は賃借人に修繕義務がないと判示している。
結論、修理代金が概ね1万円以下の場合が小修繕と言われる。相談者のエアコン修理は、小修繕とは言えない。従って、修繕義務を負わない。賃借人が自ら修理費用を負担した場合は、賃貸人に対して、民法608条により、直ちに支出した費用の全額を費用償還請求できる。賃貸人が修理費用を支払わない場合は、家賃と相殺することが出来る。
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