ビバップ期から活躍していた数少ない白人ピアニストの一人、ジョージ・ウォーリントンによる57年のリーダー作。詳しいことは分かりませんが、何でも30年ほど前の「幻の名盤」ブームの頃に話題になった作品のうちの一枚だそうで、当時は非常に貴重視されていた作品のようです。内容の方はと言うと、同じく白人のアルト奏者フィル・ウッズと、後に大学教授にまで登り詰めるドナルド・バードの2人をフロントに従えたハードバップ・セッション。一般に本場アメリカのハードバップと言うと黒く荒々しいブローイング・セッションを連想しがちですが、上記のような白黒混合のメンバー構成になっているせいか、いわゆるブルーノートの諸作などとは異なる風味の洗練された演奏が繰り広げられていて、わりとスッキリした味わいの一枚となっています。昔からのジャズ・ファンの方には異論がある人もいらっしゃると思いますが、真っ黒な演奏が苦手な僕としてはかなり好きなタイプの演奏。スウィング・ジャーナル誌別冊の「ハードバップ熱血事典」では酷評されていたウォーリントンの演奏も個人的にはなかなかだと思いますし、この盤に限って言うならば何よりフロント2人の相性が抜群です。収録曲単位で言うならば、気になるのはやはり冒頭A-1のIn Salah。ニック・スタビュラスによるタイトなドラミングの上で展開される急速調のハードバップで、エキゾチックな中に哀愁を潜ませたテーマと、歌心溢れるフロント2人のソロが素晴らしいです。どことなくダスコ・ゴイコヴィッチ等の作風に通じるところもあるので、その辺りのファンは聴いてみると良いかもしれません。あまりメジャーな部類ではないと思いますが、こういう曲はクラブで大音量でかけたら良く映えそうですね。また、その他の曲ではA-2のUp Tonight CreekやB-3のSol's Ollieもなかなか。ファンキーなB-2の'Dis Mornin'は残念ながら少し苦手ですが、その他の曲は全体的にかなり良い感じです。ちなみにプレスティッジの廉価レーベルNew Jazzからのリリースと言うことで、オリジナルはそこそこレアかつ高価だと思われますが、国内のリイシュー盤であれば安価に手に入れることが出来るのでご安心を。僕と同じくアメリカのハードバップが苦手だという人にこそ聴いてもらいたい一枚。隠れた名盤だと思います。
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