旧ソ連国営Melodiaレーベルにて1975年に吹き込まれた良い感じのジャズ。今回も全くクレジットは読めませんが、少し調べてみたところによると、本作はDavid Goloshchekinなるピアニストのリーダー作のようです。当時わりと人気だったのか同じ国営レーベルから何枚か作品をリリースしているらしいのですが、僕が実物を見たことがあるのはこれともう1枚だけ。やはり圧倒的な言葉の壁のせいか、まだ日本にはそれほど入って来ていないみたいですね。さて、そんな日本においてはマイナーな存在である彼ですが、実際にはなかなかの実力者のようで、本作でも旧ソ連特有の翳りのあるピアノ・プレイが存分に楽しめます。数曲でヴォーカルを取るElvira Trafovaも、キュートな歌声でバップ・スキャットを披露していて良い感じ。軽快なテンポでスウィングするA-4のМилая Джорджия Браун(原題:Sweet Georgia Brown)辺り好きな人も多いのではないでしょうか。GoloshchekinのオリジナルによるA-3、Я Вспоминаю Чарлиもインストながら良く歌う2管のアンサンブルが気持ちよい1曲。さらにB-2のТанцы Нашего Побережьяは、例の夜ジャズ<裏>にも収録されたライブラリー風ナンバーで、天から降り注ぐようなスキャットと刹那的なピアノが美しいモーダルなソフト・ブラジリアンになっています。極め付けはB-4のБразильская Сюита。キリル文字表記のためタイトルの意味は分かりませんが、これが何とTristezaで始まる3曲のブラジリアン・メドレーとなっていて、しかもアレンジがデンマークのBrigit Lystager風味。これはサバービア好きの胸を打つこと間違いなしでしょう。ストリングス入りのヴォーカル・ナンバー2曲も、しっとりと上品で良い雰囲気。というか全曲いいです。クラブプレイ向きではありませんが、部屋聴き用としてはかなり高水準の1枚。オススメ盤です。ちなみにジャケットはこのモノクロ以外にカラーのものもあるようですね。
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