既に当ブログでも紹介が4度目となるテナー・サックス奏者、ハンク・モブレイによる63年の2管クインテット録音盤。ブルーノートの4149番です。例の赤いジャケットで有名なDippin'の約2年ほど前に作られた本作は、ドラムのフィリー・ジョーを除くサイドメンを丸ごとチェンジした2種類のコンボ編成による演奏が2:1の比率で収められた構成となっていますが、ここでの注目は盟友Lee Morganとの2管フロントが冴える3月録音時のセッション。若干ジャズ・サンバ~アフロ・キューバン調で始まる冒頭A-1のThree Way Splitから、明快で楽しげなハードバップと言った雰囲気で良い感じに仕上がっています。そして、何と言っても本作最大の魅力はB-1のタイトル曲。以前ニコラ・コンテがモーダル・ジャズのベスト1に挙げていたというこの曲は、数あるモブレイの曲のなかでも際立ってモード色が濃い作品で、非常に聴きやすくも洗練された仕上がりを見せています。特にフィリー・ジョーの跳ねたドラミングが高揚感を煽る冒頭部、そこから雪崩れ込むように入っていく2管ユニゾンによる耳障りの良いテーマ部、そして続くモブレイ自身のソロへの流れが絶品。ついつい何度も繰り返して聴きたくなってしまうような、ある種の中毒性を持ったメロディーが小気味良いですね。モーガンやアンドリュー・ヒルのソロも当然悪くはないですが、やはりこの曲の魅力は前半部に8割が集中しているような気がします。前半部の完成度がそれほどまでに圧倒的。ちなみにバードとハンコックが参加した4月録音のセッションでは、A-3のUp A Stepがなかなか。リズム隊は正統派の4ビートを奏でているものの、フロントの2人がやや特殊なアプローチでそこにソロを乗せているので、音楽的には面白い出来となっています。まぁ何にせよ、タイトル曲1曲のためだけに買って損はしないアルバム。オリジナルはともかく、東芝EMI盤等でなら高くなく見つけられると思うので。
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