出来るだけオリジナル・アルバムを紹介していきたいから、古いレア音源なんかを集めたコンピものってここではあまり書きたいとは思わないんだけれど、このコンピは別。ビクターの企画で90年代初頭にリリースされたコンピで、なんかテクノとロックのあいのこのような曲が大半。正直今の自分の感性的には少し辛いアルバムなんですけれど、ここにはあのKrush PosseのChain Gangが収録されているのです。Krush Posseと言っても分からない方もいるかもしれませんが、これはKing Of Diggin'ことMuroさんとDJ Krush、それからDJ Goという人による3人組ユニットで、J-Hiphop界では半ば伝説となっているユニットです。そんな彼らが音源として残したのはたったの3曲のみですが、ここに入ってるM-10、Chain Gangはその中でも屈指の名曲。前述したように後にブッダブランドとシャカゾンビがアンサーソングをリリースすることになる日本語パーティーラップの最クラシックです。ダンスクラシックス定番A Taste Of HoneyのRescue MeとInner LifeのI'm Caught Upを組み合わせたトラック、そして若々しいMuroさんのラップは今聴いても文句なしにカッコいい。残念ながら今のところここでしか聴けない音源な挙句にCDはすでに廃盤ですが、ブックオフなどで意外にときたま見かけるのでぜひ買ってみてください。このシリーズ、ちなみに他のは聴いたことありません(笑)
ブラジリアン~オルガンバー系DJの森田昌典を中心としたユニット、Studio Apartmentによる1stアルバム。去年2ndもリリースされたけれど、アルバム全体の完成度の高さはこちらの方が上だと思っています。街角の雑踏のようなイントロからフェイドで入っていくM-2、Campo Na Primaveraの気持ちよさと言ったらないです。天から降りてくるようなスキャットとピアノ、そしてアコギにゆるい4つ打ちと全てが完璧なグルーヴィー・トラック。このアルバムのマイ・ベストです。少しジャングルの香りとオルガンによる民族的なアプローチが印象的なM-3、Maravilhaも秀逸。心地よいグルーヴに揺られ、つい体が動き出します。少しゆるめのダウンテンポ・ブラジリアン・ハウス、M-6のSom Estranhoもピアノが綺麗な一品だし、M-7のFantasmaはブロークン・ビーツに美しいピアノと込み上げ系ヴォーカルが乗るフロア向けの曲。ノリが良い中にもどこか洗練された大人感が漂っていて都会的な印象を受けます。クラブ系の音楽として軽いものと思う方もいるかもしれませんが、そんなことは全然なく素晴らしく優雅でグルーヴィーな1枚。下手なレア・ブラジリアンより遥かにカッコいいので、ぜひ聴いてみてもらいたいと思います。ちなみに、これもアルバムはCDのみ。
Flower Records首領である高宮永徹らによるディープ・ハウス系ユニット、Little Big Beeの知る人ぞ知る2000年にリリースされた唯一のアルバム。自身のFlowerからではなくテイチクから、それもラウンジ系企画アルバムの一枚としてリリースされたものなので、存在自体を知らない人も多いと思います。おそらくアナログはリリースされていないでしょう。ここに収録されているM-10、FinderをOrgan b. SUITEのCD版で聴いてとても気に入り、オリジナルを探しまくった結果、辿り着いた一枚です。タイトルに偽りがないアルバムで、Little Big Beeお得意の4つ打ちではないラウンジーな落ち着いた曲が並びます。僕個人的にはLittle Big Beeはこの路線の方が好きかも。プラザ藤崎さんのキーボードが優しくて心に染みます。ヴォコーダー使いによる前述M-10のFinderがベストですが、女性ヴォーカルをフィーチャーしたラウンジーR&B的なM-1、Still Dreaming辺りもかなり良いです。全体的にゆったりして心地よい音が展開されているためにカフェで流しても映えそう。エレクトロニクスを多用しながらもAt The Living Roomなオススメの一枚です。この手のラウンジ系で一枚通して聴けるってのも僕の中では比較的珍しいかもしれない・・・。
当時、和製ヒップホップしか聴いていなかった僕の音楽観を全く変えてしまった思い出の一枚。これを聴いてからサバービア~オルガンバーへと僕の趣味志向は一変することになります。とにかく全編に渡って美麗な極上サウンド。彼のミックス・テープそのままにジャズ~ボサノヴァ~ハウス~ヒップホップと様々なジャンルの音楽が展開されていますが、その全てが須永辰緒というフィルターを通した一つの流れのなかでうまくまとまっています。M-1のIstonichcoffでのアーロンの語りからM-17、猫沢えみによる「かすかなしるし」までとにかく気持ちよすぎる和製ラウンジ・ミュージックの決定盤。今回ここに紹介するに当たって久しぶりに聴きましたが、今聴いてみても全然古さを感じさせない名盤。まだ太宰百合とも出会わず今のようにモダン・ジャズに傾倒する前の辰緒さんサウンドですが、お洒落でラウンジーな音という点では今の彼の音よりも上。特に好きな曲を1曲プッシュしろと言われて選べないくらいに全曲が名曲名演です。でも、あえて選ぶのならばストリングスが超美麗なM-4、Kidかな?当時はよく友達にこの曲を聴かせてお洒落ぶっていました(笑)ちなみにアナログはプロモのホワイト盤のみです。ジャケ付きなら買ってもいいんだけれど、ノンジャケで買っても微妙なんで今のところ買ってません・・・。ユニオンなどで年に数回は見かけるんですけどね。
久々に実家に戻ってきているので昔買ったCDモノから更新。Nicola Conteがプロデュースしたヒップホップ・ユニットによる唯一のアルバム。リリース年度の記載がないから分からないけれど、たぶん90年代後半だったと思います。微妙に古い作品、でも未だに人気あるみたいですね。こないだリリースされたRoutine Jazzの最新コンピCDにもここから一曲入ってたはず。簡単に言うとジャズとヒップホップの融合的な一枚なのですが、いわゆるアンダーグラウンドのジャジー・ヒップホップと違うのは、演奏が基本的に完全に生音だという点。ビートのパターンを含め、よりモダン・ジャズ志向が高いです。MCのMax M-Bassadoもラップとポエトリーの中間のような感じで、なんとなく最近話題のShuren The Fireのスタイルと少し近いかも?ちなみに曲単位でいうと、M-5、Street Jazz UnitやM-7、Breakin Thru Ice辺りが気に入ってます。唯一ガッシリしたヒップホップ的構成を見せるM-1、Soul Jazz Document Part.2も好きですけどね。フルートやサックスの音もかなりモーダルで、渋いという表現が似合うアルバム。ちなみにこのアルバムはたしかCDのみのリリースだったはず。アナログだと数曲が入ったEPがあるだけだったと思います。僕の持ってるのはCD。ジャジーなの聴きたい方にはオススメです。
昨年大ヒットしたアメリカ西海岸発のクラブジャズユニットによる1st。プロデューサー兼アレンジャーのCarlos Ninoを中心にした総勢24名という大所帯クルーです。フェンダーローズを駆使したアレンジで、全体的に角がなく丸っこい音を出すのが特徴なのかな?Two Banks Of Fourによる変態的なブロークンビーツ・リミックスもヒットしたA-1、You've Gotta Have Freedomは言うまでもなくPharoah Thundersの名曲カヴァー。ファラオによるオリジナルやBoogalooのカヴァーはピアノ使いでかなりジャズっぽいけど、ローズ使いと男性ヴォーカルが生きてどことなくフリーソウル的な印象です。最近別のアーティストのカヴァーで知ったB-3、Pure Imaginationも好き。この曲はメロディがとても込み上げます。それをギター中心の柔らかいアレンジで好カヴァー。そしてGilles Petersonのコンピにも収録されていたD-2、The Blessing Songは牧歌的な名曲。良く言われるようなスピリチュアル・ジャズっぽさってのは正直それほど感じられないけれど、単純にグッド・ミュージックとして素晴らしい。クラブジャズ系リスナー以外の方にも是非聴いてもらいたい盤です。
Flower Recordsの看板コンピレーション第一作「F.E.E.L.」から99年にカットされた12インチ。これがどこまでも美しいクラブ・ボッサの大名曲。壮大な大地と朝焼けを思わせるフルートが美麗なイントロがまず百点。いったん曲が切れて静かに入ってくるパーカッション、アコースティックギター、そしてキーボードにフルート。さらにサビで入ってくるあどけない女性のスキャット・コーラスまで全てが完璧。7分くらいある曲もまったく長さを感じさせません。まさにジャケとタイトルに偽りなし、ピースフルな朝を彩る爽快なボッサ・ナンバーです。この手のクラブ世代による日本人アーティストの曲としては最も完成度が高いかもしれない。裏に収録されたDJ Noriによるリミックスも原曲のテイストを踏襲しつつ、フルートの変わりに透明感あるキーボードでメロディをリードするメロウなボッサ・ハウス。こちらは男性によるソウルフルなスキャットをフィーチャーしててこれも爽快です。プレス数が少ないためかあまり見かけることはありませんが、あれば比較的安くで買える(1000円くらいかな?)12インチなので、ジャパニーズ・クラブ・アーティストのコーナーを漁ってみてください。クラブ発にも関わらずクラブ系以外のリスナーにも訴えられるエヴァーグリーンな一枚です。
Readymade InternationalとSecond RoyalからダブルネームでリリースされたHalfbyの2枚目となる12インチ。一瞬で市場から消えましたね・・・。新曲2曲の相変わらずの完成度も去ることながら、この盤の人気を圧倒的に高めているのはB面に収録されたDJ 440(a.k.a.小西康晴)によるNo Conection B-Jrのリミックスということになるのでしょう、やはり。エイメ~ンという謎の女性コーラスと気持ちいいバックトラックが秀逸だったオリジナルの上に様々なフリーソウル・クラシックスを乗せた小西さん節炸裂のやりたい放題ブレイクビーツ。この雰囲気は、なんとなくECDのDirect Driveの小西さんリミックスにも通じるところがあるかな?とにかく出だしからいきなりLa Feteだし、その後もWhat Am I Gonna Doだったり、Good Morning To Youだったり、Chocolate Butter Milkだったり、Am I The Same Girlだったりとどこまでもクラシックスな曲が次々と登場してきます。基本的に小西さんの派手派手リミックスは少し苦手なんですけど、これはアリ。90年代のフリーソウル・ムーブメントを振り返ることができる素敵な1曲。CD化希望です。
少し早起きした朝にはクラブジャズを聴いてみるのもいい。最近はそういう風に考えている。なんだかクラブジャズだなんて言うと夜の音楽、そしてダンス・ミュージックだと思いがちだけれど実は意外とそんなこともない。昼間から家でコーヒーでも飲みながら聴くのにも結構最適。僕自身それほど進んでクラブに行く人間でもないので、ここで紹介するクラブミュージックの大半は部屋聴きも可能という視点で選んでるんだけれど、そんな中でも最近自分の中でまたよくかけているのがこのアルバム。特筆すべきはサバービアにも紹介されていた冒頭4曲。Nicola Conteなんかの60's直系の完全生音ジャズとも違い、こちらはエレクトロニクスと生音の心地よい融合が気持ちいい21世紀のスピリチュアル・ジャズ。何も僕は生音しか受け付けないわけではないので、こういう音でまったりするのも悪くないなぁと思う。B-1、One Dayを聴いて一日の始まりを思う。テレビから流れてくるのは嫌なニュースばかりだけれど、少なくとも外は天気も良くて気持ちがいい。それだけは真実。今日もまた素晴らしい一日でありますように。そんな願いを込めながら、朝から苦めのコーヒーを飲んでみます。
Chari Chariこと井上薫が2002年にリリースしたアルバム、In Timeからカットされた12インチ。タイトル曲でもあるAuroraは、もはやジャパニーズ・クロスオーヴァーを代表する一曲と言っても良い存在でしょう。海外のコンピなどにも良く収録されているらしいです。ギターの音と心地よいブラジリアン・ビート、そしてコーラスが冴え渡る最高のイージーリスニングです。終盤に向け次第にストリングスなども交え盛り上がっていき、9分強のトラックがまるで一瞬のようにも感じてしまえます。美しいという形容がとても良く似合う。クラシックと呼ばれるのも良く分かります。ちなみにChari Chariは前から名前だけは知っていましたが、実は曲を聴いたのは最近のこと。彼とかCalmとかってスピリチュアル過ぎて少し僕の趣味とは合わないかなって思っていたから食わず嫌いをしていたんです。でも今さらながら食わず嫌いはよくないと反省しています(笑) この曲がきっかけとなって生まれた井上薫の別ユニット、Auroraもなかなか良いピースフルな楽曲をリリースしていて、こちらもまたオススメ。全てのミュージック・ラヴァーにいつかは聴いてもらいたい大名曲。Jazz Next Standardにも書いてありましたが、DJ諸氏なら是非12インチで持っていることを勧めます。