USローカル・ジャズ屈指の人気盤。須永辰緒氏のフェイバリットとしてここ日本では有名なVince Andrewsの83年の1stアルバムです。一時期とんでもない値段が付いていたレア盤なのですが、最近は再発によって簡単に手に入るようになりました。言うまでもなくB-1のタイトル曲はKelly Crumとのデュエットもばっちりなハッピー・ジャズの最高峰。演奏面ではヴィンス自身のサックスもさることながら、Bobby Floydが担当するピアノとオルガンがかなり気持ちいい感じですね。少しジャズファンクの香りがするA-2のBeing With Youもサビのコーラス・ワークや感想のサックスが綺麗でなかなか良い雰囲気。静かな夜に一人で聴きたい曲です。そして続くA-3のThe One Who Needs Youが個人的にこのアルバムのベスト曲。たしかジャズ系レアグルーヴのコンピ・シリーズ「High Jazz」にも収録されていたはずですが、もうイントロの唸るようなサックスからしてカッコ良い。闇夜に高く飛翔して行けそうなキラー・フュージョン。この曲のみでゲスト・ヴォーカルを勤めているJeanette Williamsがまたソウルフルでいい声の持ち主なんです。タイトル曲がハッピー・サイドの名曲ならこちらはクール・サイドの名曲と言ったところ。何万も出して買うアルバムとは思えませんが、再発で買うならぜひオススメです。でも近年の再発とは言えどアナログはあまり見かけないんですよね・・・。
60~70年代に活躍したジャズ・シンガー、故Nina Simoneによる71年の作品。もっともジャズ・ヴォーカルと言っても皆が想像するような典型的なものではなく、どちらかと言うとソウルに近い雰囲気です。A-1のタイトル曲辺りも落ち着いていて良いですが、このアルバムの本命はA-3に収録されたO-O-H Child。オリジナルはたしかスピナーズだったと思うのですが、正直試聴くらいでしか聴いたことないので良く思い出せません。ただ、ここで彼女が歌うこの曲は奇跡的。ソウルフルで優しくて、まさに母の愛を強く感じる珠玉のフリーソウル・ナンバー。イントロの強烈なドラムとピアノ&ギターの美しいアンサンブルで既に心は完全に虜。さらに終盤へ向けて次第に盛り上がる展開は鳥肌もの。女性にしてはかなり低音域な声がまた一層優しさと暖かさを醸し出しています。あまりの声の低さに初めて聴いた時は男性かと思いましたけど(笑)B-4のMy Wayカヴァーもいいですね。ロック的な高速8ビートで展開されるアップ・テンポなナンバー。こういうMy Wayっていうのもあまり聴いたことないかも?まぁ、この曲に関しては原曲のメロディが良すぎるので、もはや語ることはないのですけれど・・・。アナログでも安い一枚、当時ものの国内盤なんかもあります。興味がわいたら聴いてみてください。
独Infracomレーベルの通産リリース100枚目の記念として発売されたアルバム「Re:Jazz」は、後にリリースされたリミックス盤を含め2002~2003年のクラブ・ジャズ・シーンを大いに盛り上げた好企画盤。フューチャージャズとして括られる打ち込みのクラブ・サウンドを完全生音ジャズでカヴァーした手法は当時はとても斬新でした。さて、この盤は大ヒットを記録した前作にあやかり二匹目の泥鰌を狙って昨年リリースされたRe:Jazzの2枚目のアルバム。正直コケるかなぁとも思ったのですが、意外にもこれが前作以上に好内容の2LPとなってます。前作ではInfracomの曲ばかりをカヴァーしていたのに対し、今作では他レーベルからのクラブ・クラシックスをカヴァーしているという点が面白い。特にA-1に収録されたSoul II Soulのカヴァー、Keep On Movin'は日本人好みするジャズ・ボッサで秀逸です。最近シングルもリリースされたバップ風のA-2、Push Pushもなかなか。D-2のWritten The StarsもSunaga t Experience直系の踊れるグルーヴィー・ジャズ・ヴォーカル。アルバム中ではこれが一番クラブ向けの曲かもしれないです。ゆるいですけど・・・。とにかく気張らず楽に聴けるクラブジャズとしてはなかなかの良盤。CDでもリリースされているのでチェックしてみてください。女の子でこういうの聴いてると多分オシャレだなって思われるのでは?
ジャパニーズ・レア・グルーヴとして古くから海外でも人気がある一枚。まぁ日本ではどこにでもある安い盤なんですけどね。A-1のSkindo-Le-Leが突き抜けるような爽快感を持ったブラジリアン・フュージョンでカッコいいです。ちなみにオリジナルはViva Brasilでこちらのヴァージョンも昔から有名。最近ではRaw FusionのA Bossa Electricaがカヴァーしたことでも話題になりましたね。その他の曲も全編が英語詞によるカヴァー曲で、初めて聴いた時は一瞬洋楽と勘違いしてしまいそうになりますが、サウンドはやはりどこか当時の日本的というかシティポップス的。ハワイもののAORなんかにも似たいい感じのリゾート感に溢れていて、何も考えずに聴いてると気持ちよくなれます。フリーソウル以降に人気が出た「揺れた」アレンジではないですけれど、A-3のPardon My EnglishやB-3のThis Side Foreverなど何気に良い曲が多いです。特に後者は跳ねたビートとホーン、美しいエレピとストリングスの音色に包まれた絶品チューン。Tripping Out辺りの2ステップ・ソウル的でもあるので、この手の曲を好きな人は多いのでは?当時もかなりの数がプレスされたようで、たぶんその気になれば一瞬で見つかるアルバム。安いだけあって特別に優れているというわけでもないですが、少なくとも値段以上のものはあるかと思います。ちなみに僕はディスクユニオンの某店で50円で買いました(笑)
メロウ・ジャズ・ヴォーカルの最高峰。これまでも数多くのレコードを紹介してきましたが、結局のところ僕が世界で一番好きなのはこの盤かもしれないです。1979年にフィラデルフィアで製作された自主盤で、Dale MeltonとDennis Meltonという一卵性双生児を中心にした4人組バンドが、Alfie Mossという女性ヴォーカリストを迎えて披露した幾つかのライブ音源を編集したもの。ジャズを基調としながらもソウルやブルースのエッセンスをふんだんに取り入れ、かつリラックスしたムードで上品にまとめた奇跡的な一枚です。特にタイトル曲のA-4、Livin' In The Cityは悲壮感溢れる都会で暮らす中にも生きる希望を求め続ける珠玉のメロウ・フリー・ソウル。どこまでも美しいエレピの音色と乾いたドラム、そこにAlfie Mossのソウルフルな美声が乗る僕の永遠のテーマ・ソングです。その他の曲も全て本当に心の底から落ち着いた環境の中でライブしたであろうことが伺える名演ばかり。まさにAt The Living Roomの名に相応しい曲が揃っています。好きな曲を挙げろと言われても全部なので困るのですが、冒頭A-1のOperatorやA-4のNo Regrets、さらにB-2のI'll Take You There辺りが特に素晴らしい。一時期に比べて値段は下がったものの、自主盤のためプレス数が少なすぎて、そもそも見ることがほとんどない一枚。これは1250枚あるという2ndプレスですが、カラージャケの1stプレスは250枚しかないそう・・・。もしも奇跡的に店頭で出会うことが出来たならば必ず買いましょう。
総勢22名+シンガー1名による西海岸発ビッグバンド・スウィング・ジャズ。1981年にリリースされたものなので、ビッグバンドとは言ってもなかなかにモダンなアレンジでカッコいい。サバービアではブラジリアン・ジャズと紹介されいるけれど、正直僕にはそのブラジル感はあまり伝わってきません。むしろ正統派スウィングとでも言うべき。まぁさすがにB-2のI Believe In Loveはブラジリアンだと思いますけど・・・。僕はA-2のLike Someone In Loveがとても気に入っていて、テンションを上げたい時などによく聴いています。イントロから大盛り上がりの高速ビッグバンド・ジャズ・ヴォーカル。要所要所でシャープに決まるホーンの音色がめちゃくちゃカッコいい。ヴォーカルを勤めるMadeline Eastmanのスキャットも見事に決まってます。前述のI Believe In Loveも人気のローズマリー・クルーニーによるカヴァーとはまた違う趣きで聴いてて楽しくなる曲。インストながらB-4のCan't Handle Itもなかなか爽快なビッグ・バンド演奏が楽しめます。ルパン三世の音楽なんかが好きな人は絶対にハマるはず。分かりやすくカッコいいジャズです。ただ残念なことに未CD化で、アナログも値段の割にはあまり見ません。あれば3000円くらいなのでしょうけど・・・。
ジャズ・ヴォーカル屈指の正真正銘メガレア盤。ところが一昨年にアナログで再発され、去年にはP-VineからCDでもリリースされましたね。これほどレアな一枚が普通に聴けてしまうなんて本当にあり得ない話です。コレを再発してくれた方々には本当に感謝します。全体的にはソウル的な香りも漂うしっとりとしたジャズ・ヴォーカル・アルバムでありがちなものなのですが、B-4に収録されたMarvin GayeのWhat's Goin' Onカヴァーはまさに奇跡としか言い様がないです。高揚感溢れまくりの超高速なピアノとスキャットで始まるイントロから一気にブレイク・ダウン、一転してフルートが映え渡るソウルフルで上質なミディアム・チューンへ。しまいには終盤で♪ハレルヤ~とグレゴリー賛歌のような曲へと変わっていく完全に謎なアレンジ。ただグルーヴィーであることは確実で、聴くたびに胸が熱くなってしまいます。山の数ほどあるWhat's Goin' Onカヴァーでもかなり珍しい展開。高速ジャズからフリーソウルへの橋渡し的に使うとDJでも盛り上がることは必至でしょう。World Standard IIでもParis Jazz AllstarsのDainayaと流線形の「東京コースター」を繋ぐパイプ・チューンとして収録されていました。その他の曲も夜中に一人で聴くと落ち着く佳曲が多く激オススメな一枚です。
1982年に自主制作されたジャズ・ヴォーカリストのSheila Landisによる3rdアルバム。オルガンバー・クラシックスとして有名なA-1、Shcemes Of Mad Septemberは9月じゃなくても聴きたくなる瑞々しいサンバ・ジャズの大名曲。アメリカでリリースされた作品ながらも、なぜかヨーロッパの古い街並みを一人で軽快に散歩しているかのような印象を受けます。めずらしく早く起きた朝に洗濯でもしながら聴きたくなる1曲。当然外は曇りのない爽快に晴れた天気でね。続くA-2のOrdinary Rainはサビでのテンポ・チェンジも印象的なフュージョン・テイストの曲。こちらもとてもオススメ。イントロから何度も出てくるコミカルなスキャットが素晴らしいB-1のI Want To Join Their Songもなかなか洗練された音で好き。途中のベース・クラリネット(たぶん・・・)のソロもカッコいいです。全編に言えることですがバックを勤めるLarry Nozeroのカルテットの演奏力が非常に安定していて、それがSheilaのヴォーカルと相まってこのアルバムを統一性あるものにしているのでしょう。オリジナルのLPはレアでしたが、近年に日本のCelesteからアナログ/CD共に再発されました。この再発アナログは中古屋でもたまに安価で見かけるので、ぜひ聴いてみてください。
ジャズの名門レーベルVerveからデビューした初の日本人女性歌手Akikoが、僕の大好きなDJである須永辰緒氏とコラボレートした注目作。CDでアルバムも出ていますが、これはそこからインタールード含め5曲をカットした限定アナログ盤です。全編通して演奏しているのは辰緒さんのお抱えバンドだから、ある意味ではヴォーカルにAkikoを起用したSunaga t Experienceの作品と言ってもよいかもしれません。A-1、Old Devil Moonが白眉。もはや伝家の宝刀とも言える毎度お馴染みのアーロンのスポークンで幕が開ける国産バップ・ジャズ・ヴォーカルの最高峰です。これをDJでかけているときの辰緒さんのカッコ良さはヤバ過ぎる。これからパーティーがピークタイムに突入していくという時に抜群。そしてB-3のDusko Goykovichカヴァー、Old Fisherman's Daughterの美しさもこの上ない。ここではAkikoというヴォーカリスト入りでカヴァーしていますが、インストのオリジナルにも負けず劣らずの気品に満ち溢れた作品。とにかくピアニストでもある太宰百合のアレンジ力が異常なまでに高く、それが全体をただのクラブ・ミュージックの枠では収まらないモダン・ジャズの域にまで底上げしています。下手な旧譜のレア盤なんかよりもよっぽど優れた内容。ぜひ聴いてもらいたい屈指の一枚。
去年、下北沢の吉田レコードさんに教えてもらった大好きな一枚。1980年にリリースされたもので何と言うかコンテンポラリー・ジャズとフリーソウルの中間を行く音作りが自分としてはとてもツボです。80年代当時のフュージョンっぽい感じも若干ありつつも、しっかりとグルーヴィーな好盤です。A-3、Feeling RightはConcord時代のErnestine Andersonなんかにも通じるメロウ・ジャジー・ヴォーカル。チャーミングなスキャットも披露され、まるで夜の始まりを静かに告げてくれるかのよう。B-2、スティーヴィーの大定番カヴァーYou Are The Sunshine Of My Lifeは爽快なボッサ・チューン。しかしボッサな中にも、しっかりとフリーソウル風味なアレンジがなされているのが彼女の特徴。ピアノの音色が良い感じに都会的です。間奏でのフルートもとても気持ちよい。夜に似合うボサノヴァという感じでしょうか?そして、この盤屈指の名曲は吉田さんも大プッシュしていたB-3、Pure Imagination。バラードちっくに始まって徐々に盛り上がっていくイントロ、そしてフリーソウル直系な超込み上げグルーヴィーなミディアム・ボッサ・アレンジで展開される曲調にはただただ感動の嵐です。高音のピアノの響きがあまりにも美しすぎます。ヴォーカルの声も超キュート。間奏でのサックスのメロウ度もパーフェクト。夜明け近くに海沿いのハイウェイを走りながら聴いてみたいです。なかなかのレア盤ですが、あればそこまで高くないので激オススメ!