(前回からの続き)
前述したように、この先は価値劣化必至のドル・米国債を金(ゴールド)で置き換えようとしたところで、金が貴重過ぎるがゆえにこれを市中に放出することができない(金を売って人民元を回収することができない[金融引き締めができない])中国(≒中国人民銀行)は、結果として金融緩和しかできなくなって過剰流動性、すなわちインフレの発生を防ぐことができなくなるだろう(?)と予想しています。おそらく中国当局もそのように考えるはずです。繰り返しますが、中国では数千年の昔から金が信奉され続けていますから、いったんこれをゲットしたらけっして手放してはいけない、と一般国民のみならず権力層だってそう信じている(?)でしょうからね。けれど、それでは上記のように金融政策を適切に運営できません。ではどうするか・・・
・・・って、そのあたりの策のひとつが、こちらの記事でも書いた「一帯一路構想」だと思っています。これを本稿の文脈に沿って言うと、インフレリスクが高まっているドル・米国債の代わりになり得る(?)ユーロ・ユーロ圏の国債をもっと手にするべくEU圏への輸出をいま以上に増やそう!といったあたりでしょう。金と違ってユーロおよびユーロ建て国債であればドル・米国債と同様に市中への随時の売却(≒金融引き締め)が可能ですし、ドルのリスクヘッジにもなるわけで、このあたりは金を用いるよりはずっと現実的といえそうです。といったことで(?)中国は(ってロシアとかもそうですが)現在、外貨準備・・・というより中銀のB/Sに占めるユーロ資産の割合をドルに対して高めつつあると思われます。
けれど、こちらの記事等を含めて何度も書いているように、ユーロ・EU国債にも固有のインフレリスクがあります。せいぜい、いまのドル資産よりはマシ、といった程度でしょう(って、場合によってはドル以上に危険かも?)。よって、これを中銀資産にしてしまうと、自分の金融政策がEU圏諸国の経済情勢に伴うユーロ資産価額の変動に大きく影響されてしまう、といったことになってしまいそうです(って、同じ意味で現状は米経済に振り回されているわけですが)・・・
以前から述べているように、中央銀行の目的は、物価と金融システムの安定を図ることです・・・が、もっとはっきりいえば、中銀は「インフレファイター」であるべきです。人類の経済史を振り返れば分かるように、権力の崩壊や社会の混乱に必ず伴うのはインフレであり、逆にインフレを食い止められなくなると権力は崩壊し、社会は混乱・・・して最悪、内乱やら戦争やらが起こってしまうことになります、第二次大戦がそうであったように。したがって、インフレファイト―――インフレを抑えることこそが中銀の最大の使命といえるでしょう。
そのあたりは金がこの間、一環として高い価値を保ってきたのと同じです。すなわち金はインフレ―――その時代や国などにおいて発行されていた(発行されている)通貨の劣化・無価値化―――から資産価値を守ってくれる、ということ。なので、本来ならば、金を通貨にするのがベストなのでしょう。そうすれば物価と金融システムの安定はおのずと確保される・・・から中央銀行なんて不要になるはず(?)。でも実際には、金の扱いの難しさ等から、それは現代社会においてはほぼ不可能。であれば・・・