(前回からの続き)
先述したことからも推測できるように、フランス国民にとって現下の最大の脅威はロシア・・・ではなく、エネルギー価格を筆頭とするインフレといえるでしょう。単純に、それこそずっと身近で、かつ確実に自身の経済生活にダメージを及ぼしているからです。これに比べれば、ウクライナ危機は・・・たしかにロシアはけしからん、とは思うものの、(ウクライナ難民が大量に流入中の)ポーランドやモルドバなどとは違って自国の国境線から東にずっと遠いエリアの出来事で自分事とは感じにくいよね、といったあたりでしょう、少なくとも一般的な仏国民の本心は。つまり・・・ウクライナに思いを寄せるゆとりがないほど、目の前のインフレがヒドい、ってことで・・・
この点、フランス・・・を含む共通通貨ユーロ圏においては、最近ではこちらの記事に詳述したとおり、本来ならインフレの抑制に動くべき中央銀行(欧州中央銀行)が、(もはやフランスを含む?)南欧諸国(イタリア、ギリシャなど)などの支払い能力の低い国々の債務を持続可能にするために、どうしても金融緩和的な―――インフレ喚起的な(低金利誘導の)―――スタンスを取らざるを得ません。したがって、フランスらがインフレを抑えようというなら、金融・通貨政策以外のところで、その要因を取り除く必要に迫られるわけです(っても、インフレ鎮圧はあくまでも金融政策で行うべきなので、その効果のほどは限られますが)。で、それは何か?いまの欧州で、ってなれば、当然、ウクライナ危機・・・に起因する部分でしょう、エネルギーインフレのうちで。
というところで、次期の仏大統領の座をめざす国民連合のマリーヌ・ルペン党首は、そのあたりで現職のエマニュエル・マクロン大統領とは、前述のようにほぼ180度異なる対ロシアの姿勢を示している、という印象です。それらは一見、親ロシア・親プーチンに思えるかもしれませんが、そうではなく、同氏が語るように、対ロ制裁の対象からのエネルギーの除外とか、ウクライナ危機収拾後のロシアと北大西洋条約機構(NATO)との戦略的和解などによって、欧州におけるエネルギー需給を緩和させる・・・ことで、仏国民をインフレの苦しみから解放したい、少しでも・・・ということなのだろう、と理解しています。
逆に言うと、マクロン現政権(を含むNATO加盟国の大半)の対ロシアのスタンスのもとでは、(ルペン新政権?よりは)ロシアを多少は?苦しめることができても、同国産原油&ガスの欧州への供給が大きく制限されてしまいかねないため、それらのプライスがどんどん上がって、結局、人々の日常生活・・・はもちろん経済全体に及ぶインフレのダメージがますます大きくなって、フランス国家はいっそう弱体化へ、となる可能性は・・・低くはないでしょう、控えめに逝っても・・・
もっとも、いずれが大統領になるにせよ、そしてロシアとの関係がどうなるにせよ、フランスの経済的な将来の見通しは・・・暗い感じです・・・