(前回からの続き)
前述したように、実体経済の観点からは、わが国には通貨安環境を望むべき理由があるとはいえません。したがってアメリカ・・・の財務省が為替等報告書において日本のことを為替操作等に関する「監視リスト」国に指定してまで警戒する必要はなさそうに思えます。
それでも実際には、日本・・・の安倍政権と黒田日銀が円安をポジティブに、円高をネガティブにとらえているのは明らかです。両者がタイアップして開始された「アベノミクス」以降、上記報告書が指摘するように過去20年平均値より25%も円安となり、そのせいでわが国のGDPも国富も国防力も激減してしまったにもかかわらず・・・です。いったい、どうして?
・・・って、もうこれは「株高を演出したいから」以外にないでしょう。本ブログでは「カブノミクス」と勝手に名付けて何度も指摘しているように、実体経済面では超マイナスだらけのアベノミクスの取り柄は「株のみ」です。現状の日本の株式市場は、主要プレイヤーである外国人の投資行動(≒円キャリートレード)の影響で、円安になると株高に、円高になると株安に、という、他国ではまず考えられない通貨と株価の逆相関トレンドが定着しています。よってアベノミクス日本としては、実体経済はそっちのけで(?)―――対米貿易黒字額が増えないことが分かっていても、そして個人消費を冷やすことを知っていても―――外国人投資家の買いで株高がもたらされる円安環境を自ずと望むことに・・・(?)
「円安にしたがっている・・・」―――アメリカはそんないまの日本の本心を感じ取っているのでしょう。だからこそ今回の報告書で日本が意図的に通貨安誘導をしていないか監視することにしたのだと考えられます。けれど安倍政権・黒田日銀は、株高になるから円安を喜んでいるのであって、アメリカが嫌がるような意図―――円安をテコに対米輸出をさらに増やそうという意図―――は、おそらく持っていません(?)・・・って、これだけ通貨安にしているのだから、そのダメージを少しでも埋め合わせるため、米トランプ大統領にいくらどやされようが、アベノミクスにはド派手な集中豪雨型輸出攻勢を米市場にかけるくらいの迫力がほしいところですが・・・(?)
このあたりに関連しますが、上の「25%近い円安水準」(nearly 25% below its 20-year average)といった重大かつ当然の(?)指摘は、いまのわが国の同種報告書等ではなかなかできないだろうな~と感じます。そんなことを書いたら、為替レートを円高方向に是正して円安インフレの痛みを緩和するべきだ、といった声があちこちから上がり、円高→株安となりかねないためです。上記のとおり、アベノミクスはカブノミクスですからね。円高でガソリンや小麦粉の価格が下がっても株価まで下がってしまっては・・・