(前回からの続き)
これまで書いてきたように、半期に1回発行される米財務省の為替等報告書は、アメリカの国益目線ながらも、同国およびその主要パートナー国の国際収支やその特徴などについて、けっこう興味深い見方を提供してくれています。とくに今回、これが経済ニュースで比較的大きく扱われた(と個人的には感じられた)のは、米ドナルド・トランプ大統領・・・の貿易不均衡に対する関心と是正への熱意がわたしたち日本人にも強く感じられるからでしょう・・・
ここでいちばん注目されるのは・・・やはり、為替レート。アメリカ、とくに現トランプ政権には、中国や日本が巨額の対米貿易黒字を計上できるのは(意図的な)「通貨安」のおかげという思い(込み?)があるに違いありません(?)。だからこそ、一方的に定めた3条件(貿易黒字、経常黒字、為替介入)に抵触した国を「為替操作国」すなわち輸出に有利なように恣意的に通貨安誘導をしている国に指定して経済制裁をかけようというのでしょう。
このあたり、中国はともかく、日本については当てはまらないことは先述したとおりです。つまり、日本は為替レートに大きく左右されずにドルベースで一定額の同黒字額を保つことができるので、かりに同操作国に指定されて円高ドル安になっても、アメリカから見た対日貿易赤字はそう大きく減ることはないだろう、ということです。よってアメリカの為替を通じた対日政策は、同国にとっては効果薄、というわけです(?)。
もっともこのとき、日本にとっては円換算の対米黒字額、そして所得収支黒字が減ることになります。が、いっぽうで輸入インフレのダメージが大きく減るために内需が喚起され、トータルの日本経済は個人消費がけん引するという望ましいかたちでのプラス成長軌道に回帰していくでしょう(?)。他方で円高は・・・外国人投資家の円キャリートレードの巻き戻しをともなって株安を引き起こすので、「株高>実体経済」な立場の「アベノミクス」(≒カブノミクス[株のみ])日本としては歓迎はできませんが・・・
このように考えてみると、アメリカも日本も、ドル円レートの影響に対して誤解があるように思います。つまり日米ともに、実体経済面(カブノミクス除く)での円安は・・・アメリカが損(対日貿易赤字↑)、日本は得(対米黒字↑)、逆に円高は、アメリカが得(同赤字↓)、日本は損(同黒字↓)と勘違い(?)してはいないか・・・。本当のところは上記のとおり、アメリカは変化なし(ドル建て対日赤字額は円高でも減らない)、日本はいまより円高の方が円安よりもプラス、といった感じ(?)だと予想します。したがって・・・ヘンな話ですが(?)、上記誤解に基づいて、アメリカが日本にプレッシャーをかけてくれたほうが、日本にとっては・・・(?)
・・・といったことを含め、トランプ政権下での上記報告書の書きぶりは今後、要チェックですね・・・
(「アメリカ様の一方的な評価に見える鋭い分析」おわり)
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