(前回からの続き)
ご存知のように中国は世界一の外貨準備保有国です(3.06兆ドル:2017/6時点)。そしてドイツに次ぐ2番目の経常黒字国でもあります(1630億ドル:2017年推計値)。他方で中国は、じつは外国から巨額の借り入れを行ったりしています。国家外貨管理局によると、同国の対外債務残高は2017年9月末時点で1.68兆ドルにもなるそうです。とくに近年は中国企業によるドル建て債の発行が増えており、2016年には1110億ドルと、前年から26%もの増加となっています・・・
いったいどうしてこんなことになるのでしょう。本来なら中国は、対外収支が黒字なうえにドル等を大量に持っているのだから、外国からおカネを借りたり投資をしてもらう必要がないはずです。実際、同じような状況にある日本は国内で貸し借りができている―――中央政府や地方自治体、民間企業等の多くが国内で資金調達ができている―――わけです。であればかの国だって、国「内」のおカネの余ったところからおカネを必要なところに融通させれば、流出リスク等が想定されるマネーをいちいち国「外」から借りてこなくても十分にやっていけそうに思えますが・・・
・・・このあたりは中国の特異な金融事情が大きく影響しています。つまり中国では、実質的には政府管轄下にある銀行が、共産党などの意向を受けて、鉄鋼をはじめとする様々なジャンルの大手国有企業にばかり融資をするのに対し、民間企業等にはおカネをなかなか貸し付けません。よって彼らはやむなく、ノンバンクとか海外の銀行などから高利のマネーを借りてくることになります。いっぽうの国有企業は、けっこう簡単におカネの調達ができるので効率の悪い企業でも資金繰りがついて生き残るし、市場動向とか経営リスクの見極め等も甘くなり、設備等を余計に抱えることになりがちに。こうして中国は上記のような、外準が潤沢なのに対外債務もまた多い、といったミョ~なことになっているわけです・・・
このへんは先述した鉄鋼産業が典型例でしょう。中国では共産党政府が保有する大手の鉄鋼会社のほか、地方政府系の企業や民間の鉄鋼メーカーが乱立しています。そうなった理由は上記のとおり、投資傾倒型の経済政策とか国有企業優先の融資などのせいでしょう。この歪みを解消するべく、前回書いたように、中国は2年間で1億トンもの鉄鋼生産力を整理等したそうですが、余剰分があと2億トン分もあるもようです。まあ国も民間もこのようにスゴイ勢いで立ち上げちゃったわけですから、これだけ残っているのは不思議ではありません。それでも2億トンって日本2国分に近いスケールですから、これを本当に何事もなくリストラできるのか、非常に疑わしいところです。いくら一党独裁の国でも、相当に揉めそうな気がしますが・・・