庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

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原子力時代の終焉となるWH社の破産と東芝の凋落。

2017-03-30 | 核エネルギー・原子力問題

東芝の巨額損失が、2017年3月末の時点で6200億円に達して、債務超過に陥る事態となって、ついに子会社のウエスチィングハウス社(WH社)を倒産させた。

「WH社を残せば、また損失が積み重なる可能性もあり、やめる覚悟が必要だ」との声が東芝社内でも強まっていた。

いや、東芝社内だけではなく、支援する金融業社の間でも、WH社を倒産させて、追加の損失発生のリスクを最小にする必要があるとの判断であった。

政府の所管官庁の経産省でも、アメリカの原子力業界の現状と先行きを見れば、もはやWH社を切り離すしかない、との判断になっている。

 

損失額は、1兆1千億円と報道されているが、東芝がWH社を買収した2006年からの投資額は6000億円に達し、総額で1兆7千億円の損失になる。

いやこれだけでは済まないで、アメリカ国内での破綻処理では、建設途中の原発4基の完成までは、さらに費用がかかるが、この費用の負担が未定である。

アメリカ政府が、電力会社に9000億円の債務保証をしているから、政府補償の対象となれば、アメリカ国民の税金が損失の穴埋めとなる。

さらにWH社の債務の大幅な棒引きに応じる原発関連企業の負担が発生するから、その損失も含めれば、2兆円以下では済まなくなる。

日本でも、東芝の原子力事業で操業している関連企業は、仕事が中断して、損失の発生や、雇用の保持が困難になり、目に見えない損失は膨大に上るであろう。

 

そもそも、東芝をこのような無謀な経営方針に突き進ませたのは、政府が原子力大国を目指すとして、【エネルギー戦略を原子力偏重にした政府の責任】である。

一時期の民主党政権時代にも、原子力立国の一点張りで、【原発の安全性神話】を補強することばかりにして、いびつな原子力村を膨張させた。

その原発安全神話があだとなって、福島原発大事故を引き起こし、その補償関連と後処理費用は、すでに21兆円を超えている。

今後もさらに増え続ける可能性が大きい。

2012年末に政権交代した安倍政権は、このような教訓も全て軽視して、原発の再稼動と新設を目論む「エネルギー長期戦略」を策定した。

 

それに乗じて、東芝の無知な経営陣が、【原発で世界一になる】無謀な経営方針に偏重して、ついに東芝を奈落の地獄に突き落としたのである。

安倍政権と東芝の旧経営陣の罪は、【万死に値する】重大な犯罪である。

いや、このままでは、東芝グループを地獄に引き込んだだけでなく、電力業界と関連産業界を、原発の損失リスクから切り離すことができなくて、ズルズルと【赤字を生み出す座礁産業化の道】に突き進むであろう。

それを止めるチャンスは、いくつもあったのに、全て関連しないように取り繕って、損失リスクを先送りしてきた。

東芝の凋落は、日本の凋落の前兆と認識する危機管理の糧にすべきだ。(続)