日本の安全保障政策の中で、常に不安定な要素として、「北朝鮮の暴発」が懸念となっている。
小泉元内閣の時期には、拉致被害者問題が不安定な関係の要因となっていたが、小泉首相はリーダーシップを発揮して、当時の「金日正書記長」に働きかけた。
一時的には緊張感を緩和する方向に動き出したが、北朝鮮の国内状況の変化によって、その成果は限られた範囲での「拉致被害者の帰還」で終わってしまった。
しかし、歴代の内閣が何もできない状況の中で、少しでも緊張緩和に踏み込むリーダーは、そうはいないと考えると、大いに評価すべき成果である。
その当時の北朝鮮訪問には、現総理の安倍晋三氏も、見習い的に同行していた。
だが、その後の第一次安倍政権では、全く何も進展できないで、早期退陣して「外交力は全くゼロ」で終わった。
2012年末に政権復帰をしてから、「北朝鮮に対する外交政策」は、アメリカの方針の追従者に成り下がり、六カ国協議のおまけに同席するだけであった。
その期間に、北朝鮮の金正恩委員長は、アメリカに対抗心をむき出しにして、核兵器の開発を急ぎ、大陸間弾道弾の性能向上に力を注いできた。
今では、日本の本土には、いつでも打ち込めるミサイルが多数配備されて、破壊力を向上させた「核兵器の保有」は、公然の事実である。
こうした状況で、北朝鮮の脅威から日本の安全を保障できる状況は、【アメリカの核兵器による報復攻撃の脅し】だけが、北朝鮮の暴発を防ぐ手段となった。
これまでの「民主党政権の無策」と、安倍政権の追従主義の結果が、この状態に行き着いた結果である。
北朝鮮が、無謀とは言っても、「先制攻撃で核兵器を日本に発射する事はない」との楽観的な観測が、今の危機感を最小にする口先の安全宣言である。
しかし、万が一の被害の想定は、極秘のうちに研究がされているはずである。
単純に考えても、日本に少数のミサイルを撃ち込んで、最大の成果を上げるには、首都圏に近い原子力発電所を狙うであろう。
今の原子力発電所の規制基準には無謀国家からの核攻撃の被害は想定していない。
いくら原発の建屋が強固であっても、関連の設備が破壊されたら機能を失う。
核シェルターの防備がない原発は、確実に炉心熔融にいたって、核攻撃の被害どころか、放射性物質の大量拡散に到るので、首都圏に大被害をもたらす。
その時になって、原発の安全性は万全であったが、【核攻撃の事態までは想定外】でしたから、政府の責任あありません、と宣うつもりなのだ。
いまや、津波被害の想定も織り込み済みだろうが、【絶対の安全性を保障できない原発の再稼動路線】は、北朝鮮の政治指導者の胸三寸に依存している。
北朝鮮がさらに国内情勢の変化によって、正常な判断をすると期待できるのか。
そうならないように、アメリカの核抑止力は機能していると信じるしかない。