庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

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ドイツの路線と共通点もないのに自由貿易最優先は不可解。

2017-03-23 | 経済問題

G20の首脳会議で、「自由貿易の推進」を将来の共通目標にすることは、アメリカの強硬な反対姿勢にあって、共同声明からは外された。

ところが、日本の安倍首相はあいかわらず「TPP路線の継続」にこだわって、ドイツのメルケル首相との会談で、自由貿易をさらに進める方針を確認している。

アメリカは、トランプ政権になって「自由貿易の行き過ぎを是正」する路線に転換して、「TPP交渉」は、完全に放棄した、と明確に言っているのに、である。

なぜ、日本の現状を見ていながら、これ以上の貿易自由化を、無制限に進める必要があるのか、不可解な安倍政権である。

 

ドイツが「従来のEUの発展」を目指す将来戦略から、自由貿易を拡大する路線にこだわるのは、今や明らかである。

ドイツだけの人口規模の市場では、ドイツ企業と産業界の発展は不可能で、最低でも「4億人以上となるEUの自由化された市場」が、必須の経済圏である。

さらに、拡大して東欧諸国の加入を進めるにも、自由貿易の原則を進めることが、ドイツにとっても最優先の国策である。

そして、低賃金国の東欧諸国がさらに門戸を開いて、消費市場が拡大する上に、低賃金労働を必要とする産業界の要求にも応えられる。

ものの自由化と人の移動(移民)の活発化は、ドイツにとって大歓迎なのだ。

 

EU自体が、「共通通貨ユーロ圏」の矛盾によって、将来の揉め事が予想されるが、貿易の自由化を制限する路線にはならない。

ユーロの継続は「ドイツにとっては経済的な優位」が、さらに増長される「願ってもない好条件が維持される」。

ドイツのような経済強国は、ドイツのみの通貨(例えばドイツのマルク)を使用していれば、貿易の黒字を是正するために「為替レートが上昇」するはずだ。

ところが、共通通貨のユーロを使用しているので、経済弱小国のイタリア、スペイン、ギリシャ等、「ユーロの価値を引下げる国」がいることで、平準化される。

つまり、ドイツは実力よりも、低い為替レートで貿易を出来るのである。

自由貿易を拡大することは、自国の地位を最大限に利用できる国策となっている。

 

ころが、日本のような狭い市場だけでは、輸出力が向上すれば、円高となって為替レートで貿易量が制限される。

逆に貿易自由化を図っていくと、為替レートの変動で、輸入が急増する懸念も生まれて、国内産業が大きなダメージを受けやすい。

貿易の自由化は、発展しつつある新興国には有利であるが(例えばメキシコ)、アメリカのような【産業が老朽化した先進工業国】にとっては悪夢なのである。

日本でも、【主要な産業はすでに老朽化の段階】に入っているので、鉄鋼業、造船業、家電業界、など、軒並みに事業縮小を迫られている。

次の産業が育成されるまでは、自由化どころか保護貿易が必要なのである。(続)