2012年の暮れに発足した安倍政権は、経済が何よりも優先するとして、「デフレ脱却」を目指す「超金融緩和政策」の実施に突き進んだ。
しかし、デフレ現象は民間企業の投資意欲の減退によって起こるが、お金が潤沢に流通して金利が下がれば、投資を促進するという期待は、経済に対する偏った見方である。
企業の投資は、将来にリターンが見込まれる新規需要を期待して、効率的な事業拡大を意欲的に実行するのだ。
この新規需要が見込まれる状況は、消費者の購買意欲が盛んになり、その源泉となる収入が増加していて、初めて新規需要が増加する。
しかし、現実には大企業が率先して、海外に生産を移転し、国内に残した生産でも従業員を非正規社員に切り替えてきた。
その影響は全勤労者の4割が不安定で低賃金の、派遣社員やパート従業員で占められてしまい、引きずられて正社員の給与も抑制された。
この非正規社員の拡大を政府に要請して、人件費の引下げを長年に渡って進めてきたのは、経団連の大企業の経営者たちである。
いまになって、消費購買力の低下と、将来への期待がしぼんでしまった消費者に、新規需要の拡大を期待する方が不合理なのである。
消費不況を起こして、それで投資不足に陥るのは理の当然だ。
安倍政権と日銀は、経済の基本的な構図が理解できていないのだ。