安倍自民党内閣の経済政策の根底にある認識は、まず富裕層にお金が潤沢に回る様にすることで、贅沢品や交際費関連の消費が増える筈である。
この消費増加の効果が順番に回りまわって、其の周りにいる普通の人達にもお金が潤う様になるから、全体に消費が増える。
時間がかかる弱点はあるが、これを続けて行けば、必ず全体の経済は好転する。
これが、いわゆる「トリクルダウン」による経済活性化の理屈となっている。
日本が高度経済成長の時代には、この理屈で、日本全体の経済成長は確実に中間層の給料に反映されて、消費が好循環に増大した。
では先進国が軒並みに経済成長が鈍化した現代で、この理屈が正しいと言えるのかは、おおいに疑問がある。
世界の最富裕国である「アメリカの現状」を、参考にしてみてはどうだろう。
経済学者の「クルーグマン氏」は、この数十年には、アメリカ人の所得格差は拡大している、と指摘している。
アメリカの小売業に従事する従業員(管理職でない)のインフレ調整後の賃金は、1974年に比べて3割も減少している。
この間にアメリカ全体は40年間ではるかに豊かな国になったにもかかわらずだ。
アベノミクスの支持者は次の様な説明を持ち出してくるだろう。
この間に貿易に自由化が大幅に進んで、中国などの新興国での商品生産が活発になり、価格競争が激しく進展した。
だから、人件費の引き下げが必須となり、それでも引き下げが無理な業種は、生産地を新興国に移転しているからだ。
製造業の一般従業員の給料が抑制されたり、引き下げられるのは、貿易自由化のもたらす結果による。
だから為替レートを引き下げて、価格競争力を強化するのが必須なのだ。
「ちょっと待って下さいよ。」
と言うのは、小売業の従業員まで、新興国の安い賃金の影響を受ける理由には、なっていないではないか。
経団連の旧産業の経営人たちは、少しくらいの利益が増えてきても、やはり自由貿易が更に進む「グローバル化経済では、給料を増やせない。」と言う。
つまり、価格競争力を維持するために、製造業の賃金を抑制してきたために、その他の販売・サービス業までもが、給料を引き下げられて来たのである。
「グローバル化経済社会」に入った現代は、「トリクルダウン」は起きないのだ。