原子力発電事業という「膨大な利権構造」を作りあげて、政権維持の資金源にしてきた自民党は、いまだに、その悪弊から抜け出せない。
「原子力発電は安価」という存続理由はすべて崩壊しているのに、化石燃料費がかさむ火力発電よりも、国益を守るためには必要だ、と主張し続ける。
今回の大事故は、「電力会社の利益優先」の体質が、安全対策の想定を甘くして、必要な事故対策を怠った【電力会社の無責任・能力不足】に原因がある、と言いたいのである。
自民党の政治家達は、経済産業省の官僚と電力会社の幹部の言うことを、信用してきたのは間違いだった、とホンの少しの非を認めるだけである。
だが、安全対策だけに落ち度があったわけではない。
現在の「使用済み核燃料」の行き場が、全く決まっていないことは、電力会社の責任よりも、政府と自民党政治家達に、大部分の責任があるのだ。
小泉元首相は、この問題に確たる方針も示さずに、「原発を稼働し続けることは無責任だ!」と言い切った。
今頃になって、それを認めるのも遅すぎると言いたいが、それでも、率直に現実を直視して、責任感を取り戻したい意識は評価すべきであろう。
それに対して安倍首相は、代替の電源供給もあてに出来ないのに、「原発ゼロ」を言い出すのは無責任だ、とご都合主義の言い逃れに終始している。
電力会社にとっては、放射性廃棄物の最終処分方法と処分地の決定は、政府の責任でやるとの方針の下に、原発の増設を進めてきたのだ。
ところがプルトニウムを採りだす【再処理路線】は、今や完全に破綻している。
2011年11月の時点の核燃料サイクル検討会では、プルトニウム燃料を1グラム利用する度に、40ドル(現時点で4000円強)の損失が出る、と試算した。
日本には、英国に保管してもらっているプルトニウムが17トンある。
これを引き取って、日本の原発で【プルサーマル稼働(プルトニウム混合燃料)】で消費する方法は、原発再稼働さえ国民不安で実現が難しいのに、この処理方策は実現性がない。
つまり、製造してしまった「プルトニウム」は、核兵器に利用出来ない形にして、廃棄処分にしかできないのが現実である。
この処分法で、イギリス政府は3年後に処理設備の稼働を計画している。
イギリス政府に依頼して処分をするにも、高額の廃棄処分費用が必要だ。(続)