庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

3本の矢の一番重要な成長戦略の中身は貧困な発想だ。

2012-12-21 | 経済問題
安倍総裁は経済の活性化策には「3本の矢」の強化が必要だと宣言した。
3本の矢のひとつが【金融政策の転換】で、物価上昇率の目標を2%に定めて、日銀に責任を負わせて「お金の供給量」を大幅に増大させる。
これには、日銀も政府の意向に沿った「国会での日銀法の改訂」を武器に迫られると譲歩せざるを得ない。
『インフレターゲット2%』の効果は、市場におカネが出てゆくコトは確実に実現するが、必要としている民間企業に回るかは定かではない。
むしろ、金利が上がったりしたら、経済を冷え込ませる可能性もある。

二つ目の矢は【財政政策】であり、借金大国の日本が国債の金利負担で財政悪化で身動きが取れなくなることを対策する。
物価上昇率2%が実現すれば、政府の借金700兆円の2%分の14兆円が減る効果があることは説明した。
しかし、このお金は、民間の貯蓄から「知らない合間に政府におカネを移した」コトで、財政を改善したことになる。
消費税の増税5%分よりも大きいおカネを、政府と日銀での決定で、国民から徴収したことと変わりはない。

3本目の矢は『成長戦略』であるが、安倍宣言では、中身は全く乏しい。
唯一の具体策は、【補正予算で10兆円】の景気刺激政策をとることだけである。
この財源には、建設国債などを追加で発行して、市場から調達することになる。
民間での総需要が不足している時は、政府が積極的に借金をしてでも、その不足分の需要を喚起する。
これは、80年以上も前から言われている、ケインズ政策のおさらいで、間違い政策ではないが、【安易な当面の景気対策】である。

安倍総裁の訴える「3本の矢」の中身は、結局のところ、民間の貯蓄から14兆円を調達して、政府が決める景気対策に10兆円のお金をつぎ込むのだ。
この民間のお金10兆円が、将来の新技術や新産業の育成に役立つ使い方ならば、供出する国民も、おカネの出し甲斐があるのだが、どうやら「土建国家」の再来になりそうな雲行きである。

老朽化したコンクリートインフラの建て替えや、地震・津波・自然災害への備えを強化する【公共事業】への投下が大部分になるであろう。
これでは、新産業が起きるキッカケにもならないので、波及効果はほぼゼロだ。