庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

外交力は勇ましい口先ではなく、したたかな外交カードだ。

2012-12-09 | 経済問題
数週間前に「マスメディア」が報じていた「総選挙の争点」に、今後の経済活性化の為には、輸出産業に有利になる様に「TPP交渉参加」を実行するかどうか、を問うべきだとする論調があった。
この外交交渉を選挙の争点にする【浅はかなメディア】の論調に対して、野田首相は民主党議員に【TPP参加】を公約とする路線で、賛同しなければ「公認しない」との踏み絵を計画していると報じていた。
しかし、多くの民主党員は、TPP参加表明には議論百出状態で、総選挙の公約にはできないとして、アイマイな表現にとどめることに決断したのだ。

まさに、決断する民主党?を現わす事態だが、「TPP交渉参加」の表明が是か非かは、本来は「自由貿易への考え方を議論して決める」のが本筋だ。

しかし、経済外交の実情は論理だけで動くのではなく、駆け引きの世界である。
野田首相が【TPP参加】を前ノメリに見える姿勢で、党内を取りまとめる動きを加速する中で、長年の懸案であった「日中韓の自由貿易協定」が、正式協議に踏み出すことに決定した。
自国の利益を最優先する中国の姿勢が、「日本がTPPでアメリカよりになる」ことを、避ける方向に転じたことによる。

さらに、日中韓と東南アジア10カ国の経済連携協定の協議に、日本が提案して来た「インド、豪州、ニュージーランド」を加える案を、中国が受け入れる姿勢に転じて、一気にアジア圏の自由貿易への協調体制が進展している。
この事態を、日本の通商関係者は、「TPP効果」と呼び、中国の譲歩を引き出す為に有効な外交カードとなっている。
領土問題で、ツノ突き合わせている中国、韓国との外交面で、貿易協定の更なる緊密化を促進する通商交渉が本格化する。

この状況を見て、アメリカが「TPP交渉」の中身を一方的な国益主張を控えて、日本に譲歩をする姿勢に転じる様になるかもしれない。
野田首相は、この様な駆け引きの重要な『外交カードとして、「TPP交渉参加」の前ノメリ姿勢を演じた』とすれば、かなりのしたたかな外交手腕である。
軍事的な外交はご法度だが、経済外交においては、将来の日本の国益を見据えて、当面の駆け引きとなる外交カードを存分に活用すべきである。

外交上の機密事項は、選挙戦においては、駆け引きの成果を説明するわけにはいかない点で、野田首相にとっては、大変残念なことであろう。