庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

目先の小悪よりも次世代に対する巨悪を日のもとに! 

2010-02-08 | 暮らし・健康問題
マスコミ界の目先主義には多くの弊害があり、それに迎合したり、悪乗りしてきた国や自治体の政治家、官僚に大きな責任がある。
その中で、親方日の丸の依存体質の典型が、土建国家を造り上げた【政・官・業】の悪のトライアングルであろう。
今さら採りあげるでもない話題と思われるだろうが、ダム問題がその代表である。

朝日新聞の2月4日朝刊(30面)に、「現役ダム、初の撤去へ」として、熊本県荒瀬ダムの撤去問題が報じられ、2月10日の社説でも「老朽ダム撤去」として採りあげている。
コンクリートダムは、寿命が50年~100年と言われている。
荒瀬ダムは球磨川の発電用で高さ25㍍、幅210㍍の、1955年に完成した県営のダムである。
当初は県内の16%の電力を供給していたが、現在は1%程度である。
その上、ダム湖には汚泥がたまり、悪臭が発生してアユなどの漁業資源にも悪影響を与えている。

1級河川にある発電用のダムは1551基で、そのうち800基以上が50年以上90年に達している。
既に役割を終えて撤去した方が良いダムは全国で100基以上ある。
このダムの撤去費用は、荒瀬ダムで試算した場合は、総額で92億円必要で、発電事業での収益で賄う予定であったが、28億円も不足するという。
埼玉県の荒川中流にある玉淀ダムでは、すでに発電事業から撤退して不要になっているが、撤去はされていない。
埼玉県の試算で、撤去に170億円かかるとのことで、どうするか難航している。

大自然の中に大規模なコンクリートの施設を造る場合には、その建設時のことだけでなく、途中の維持、保守、補修の費用はもちろん、最終的には撤去して無害にして自然に戻すことが当然のことである。
造ってしまえば、建設費用を払ってハイ終わりました、ではない!
土建業者は現在を生き延びることに必死で、将来のことなどは考えている余裕はない。

やはり、地域の国土と自然と資源を永続的に守るのは、地域の自治体であり、国の重要な責務である。
それに責任を負うべき政治家や官僚が、土建業者と同じ感覚で今さえよければ良いというのでは、あまりにも無責任である。
ダムの撤去費用は、仮に1基で100億円として、発電用だけでも全国で1550基であり、撤去費用は15兆円を超える規模になる。

この費用は、今の世代が電気料金として上乗せして積み立てておくべきものである。
国も県自治体も電力会社も、そのことを国民に知らせて、適正な料金を設定しなければならない。
それを無視して、ダムの撤去費用は次世代にツケとして回そうと言う根性は「悪」と言うべき。
そのことを知らせず、権益や利益を守ることばかりを行う、官僚と電力会社は、「巨悪」と言うべき存在である。

このような「巨悪」を見逃して、新たなダム建設を進めようと言うのは論外であろう。