庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

日本の漁業資源を持続的に利用する政策の説明と国家の品格。  

2010-02-07 | 海洋産業問題
クジラの捕獲問題は限定された領域の議論にとどまることは、将来における展望を描いていない、目先のことしか考えない表れである。
世界の人口は将来にかけて増え続けて、2050年頃には今の65億人から90億人に増える予測である。
この先、経済発展する新興国も増えて、生活水準が上がっていけば、食料の消費量が増えることはもちろん、蛋白質を摂取する量も飛躍的に増える。

そのころには漁業の資源がどのような状況になっているのかも検討して、持続的に利用できることを目標とすべきである。
クジラは大量に海の動物を食べて成長するので、魚類やオキアミ、動物プランクトンなどの生存量と関係が深い。
絶滅の危機にさらされているクジラは、貴重な生態系を維持する目的で保護しなければならないが、ミンク鯨の様な、生息頭数が50万頭を超えるくらいに増えている種類は、捕獲利用することによって、増加を抑える必要がある。

それは人間が必要としている魚を大量に食べる習性で、食料確保との関連で、適切な量を維持することが正しいと言える。
欧米の一部のクジラ保護団体は、自然界の生き物は捕獲して食べてはいけない、という、偏った動物愛護の主張を繰り返している。
世界中で飢えた人がいると言うのに、食料源をなる魚を食べてしまう鯨ばかりを、人間よりも優先して保護すべきだという論理は、どう見てもおかしい。

しかし、今までの日本の水産庁は、とにかく既得権としての捕鯨、特に南氷洋の捕鯨操業を守ろうとして、鯨の資源や漁業資源の持続的な保全と利用を基本に据える姿勢を、きちんと説明していない。
だから日本は、お金儲けの商業捕鯨を続けたいのが本心だとして、批判され続けている。
世界全体のことを考え、次世代に対する食料資源としての、海の恵みを持続的に利用することを重要とする説明を、世界中に発信できなければならない。
人間が安心して生きていくための長期政策が、基本になることは言うまでもない筈である。
情緒的な動物愛護の問題もあるが、それは、本流の議論にはならない。

その考え方に沿っていけば、今回の日本の農水省の政策転換は、良い方向に向かっている。
調査捕鯨と言う、タテマエとホンネが破綻している論理にしがみつくことを止めて、日本の近海において、ミンク鯨などの、頭数が増えている種類のクジラを、商業捕鯨の形で健全な操業を続けられるように、国際的に承認を得ていく。
本来、排他的経済水域と言う、経済的な行為を国際的に認められている地域で操業をするのは自由であるが、それを、健全な資源の維持を目的とすると宣言するわけである。

これをキッカケにして、日本の将来の食糧安全保障も配慮して近海における漁業を立て直し、天然の資源と人工的に成長させる養殖漁業の拡大を、長期的、戦略的に取り組むことを、目指すべきである。

世界の食糧不足に備える姿勢も、日本の取り組みの「国家の品格」を表す、重要な要素である。