【衝撃事件の核心】「墓地の上なんて不気味すぎる」六本木地上げ頓挫で超高級ホテル計画〝暗礁〟 宗教法人法の手続き怠る(1/5ページ) - 産経WEST
東京・六本木の超一等地で4年越しに進められてきた地上げが頓挫しそうだという。対象用地はもともと寺が所有していたが、宗教法人法で規定された財産処分の承認手続きを経ないまま売買が繰り返されてきた。このため、最終的な買い手となった香港系不動産会社が法的に所有権者と認められない恐れが浮上。2020年東京五輪に開業を間に合わせる計画の超高級ホテルの着工にめどが立たなくなっているのだ。おまけに、用地内の旧墓地を掘ると人骨が出る始末。実は墓地の廃止許可手続きもなされておらず、旅行業界の関係者は「超高級ホテルといっても墓地の上に建つなんて不気味。誰が泊まるのか」とあきれ顔だ。大阪の不動産会社なども関与したとされる六本木の土地売買で何があったのか。
■時価220億円の土地次々手放す
地下鉄六本木駅(東京都港区)の出口を出て六本木通り(都道412号)を東へ歩くこと3分。通りに面して金属製の塀に囲まれた土地が見えてくる。退去が済んだビル、マンションなど3棟が並び、一部は砂利敷きの更地だ。残りはコイン式駐車場として利用されている。
不動産登記簿などによると、用地は約4千平方メートル(約1200坪)。かつて曹洞宗の寺院、湖雲寺(こうんじ)があり、土地の一部はマンション用地やビル用地として貸し付けていた。しかし平成18年に京都や都内の法人、個人が土地に地上権を設定し、22年には同寺が土地を担保に借金するなど、異変の芽が見え始めた。
24年ごろになると税金滞納による差し押さえが行われるようになり、区画ごとに静岡の建設会社などへの売却を余儀なくされた。その結果、本堂などは無くなり、寺の所有地は十数基のお墓が残る墓地110平方メートルだけになった。
湖雲寺は27年2月、債権者から第三者破産を申し立てられ、宗教法人としての同寺は事実上消滅。曹洞宗は檀家に迷惑がかからないよう、墓地を他の末寺に引き取らせて管理を任せている。
時価220億円の土地を所有しながら、借金を重ねて土地を次々と手放した住職。破産時の基本財産は簿価でわずか561万円になっていた。土地を切り売りして得たはずのお金が一体どこに消えてしまったのか、真相は薮の中だ。
■本山(注1)の承認なしに…
ここまでなら当時の住職による放蕩経営の「なれの果て」で話は済んだはずだった。しかし、25年に大阪市の日用品製造販売業L社が土地全体を買い占める大きな動きがあったところで、水面下で法規上の問題がくすぶり始めるようになった。
宗教法人法は、寺が境内地をはじめとする基本財産を売却、処分するには包括団体(宗派の本山)代表役員の承認が必要と規定しており、湖雲寺も寺の規則で同様のルールを定めている。住職の独断専行による土地転がしを防ぐためだ。
関係者によると、湖雲寺は最初に土地を切り売りした際も、宗教法人法と同寺規則に基づく財産処分の承認申請を曹洞宗に対して行っていなかったという。当然、L社が買い手となった売買に至るまで、本来なら必要な曹洞宗による承認書は存在していない。
L社による買い占め後、曹洞宗には「『曹洞宗代表役員の承認書がある』『承認書を取り付けることができる代理人が存在する』という情報は本当か」という事実確認の問い合わせが寄せられるようになり、曹洞宗は対応に苦慮するようになった。これらはL社が土地の転売先を探していた時期と重なる。
三大財閥系不動産会社も関心を寄せていたとされるが、これら財閥系大手は「情報」が虚偽だと知った途端に手を引いたという。ところが、大阪市の中堅不動産業M社がL社から26年10月までに土地を取得。さらにM社は約3カ月後の27年2月、一部を東証2部上場のアルデプロ(東京)へ再転売したのだ。
■法令違反次々と明らかに
宗教法人法を無視した土地売買に上場企業までもが参戦してきたため、静観していた曹洞宗は同月、アルデプロとM社や両社に取得資金を融資したノンバンクと信用組合に対し、ある通知書を送付した。
通知書は「現時点において、湖雲寺の土地処分の承認書や、承認を取り付けられる代理人は一切存在せず、当宗は一切承知していない」と一刀両断する内容だった。
これに対しM社とL社は27年6月、「曹洞宗には一切の責任がないことを認め、承認書が無いことをこれ以降の買い手に積極的に通知する」との連名の誓約書を曹洞宗に提出した。また、両社が同時に提出した報告書によると、アルデプロの社長(当時)はこの誓約書への捺印に同意したものの、同社法務部門が同意せず、捺印には至らなかったという。
こうした紆余曲折を経たにもかかわらず、アルデプロとM社は翌月、香港系不動産会社と土地の売買契約を締結し、売り抜けた。
金額は計222億円。香港系は30階建て、延べ床面積約3万5千平方メートル(約1万坪)、客室270室規模の超高級ホテル「ランガム」を開発する計画で、建設費用を含めた総投資額は500億円を超えるとみられている。
■取り残された「お墓」
しかし、曹洞宗の承認がなければホテルの着工はできないとされる。
香港系不動産会社は今年6月末、アルデプロとM社に契約金額の9割に当たる計200億円を支払ったが、「ランガム」プロジェクトは宙に浮いたままだ。アルデプロ広報は取材に「守秘義務契約があり、コメントは差し控える」と答えた。
また、売買された土地の一部には、かつて墓地があった。湖雲寺を管轄する港区のみなと保健所によると、墓石などは撤去されて更地になっているが、墓地埋葬法に基づく廃止許可は出ていない。
土地の地目を「墳墓地」から「境内地」あるいは「宅地」へ変更するには、本来なら保健所が出した墓地の廃止許可が必要だが、湖雲寺の地目変更はすでに登記が実行されている。
実際に今年8月、業者が現場を試掘したところ、陶器製の棺に入った人骨が出土した。みなと保健所は、人骨は曹洞宗に引き取りを要請。棺は江戸時代以前のものであるため、区教委が念のため発掘調査を行うという。
ホテルの開業に際して旅館業法に基づく営業許可を出すのも保健所だ。
みなと保健所の担当者は取材に「ホテルの底地の状態は旅館業法の許可要件には当たらない」として、墓地の廃止許可がなくてもホテルの営業許可は下りるとの見解を示した。が、大手旅行会社の担当者は「廃止されていない墓地の上に建つホテルに、いったい誰が泊まるのか」と突き放した。
このため同保健所は現在、十数基のお墓が残る西隣の墓地を含めて廃止手続きを進める方向で曹洞宗と協議を進めているという。廃止許可を得るには、隣地に取り残されたお墓を全て改葬する必要があり、一朝一夕にはいきそうもない。檀家の反発も予想される。
曹洞宗関係者は「本山(注1)は檀家の不利益が生じないよう善処しようとしているが、保健所の対応が不十分だ」と批判している。
超高級ホテル建設計画の行方が注目される。
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(注1)今回の場合、曹洞宗関係者が取材や問い合わせに「本山」とは言及しないそうです。
曹洞宗の法務関係を取り扱うのは「曹洞宗宗務庁」で、それは寺院ではありません。
お坊さんに必要以上のお金をもたせるとダメなのかもしれませんね。
修行や布教に専念して欲しかったです。
お寺は再建出来れば良いのでしょうけど、おそらくは金額的に無理でしょうね。
残念なことです。
都市優遇、大店法などの大企業優遇、いらない道路を作ったり都市開発優先。
下町とか個人店舗がなくなっているのが問題かと。
オリンピック開催は賛成です。東京で開催する一定のメリットは理解できますが、デメリットやどうしても東京に必要かというと、、、、。
以上
東京・六本木の超一等地で4年越しに進められてきた地上げが頓挫しそうだという。対象用地はもともと寺が所有していたが、宗教法人法で規定された財産処分の承認手続きを経ないまま売買が繰り返されてきた。このため、最終的な買い手となった香港系不動産会社が法的に所有権者と認められない恐れが浮上。2020年東京五輪に開業を間に合わせる計画の超高級ホテルの着工にめどが立たなくなっているのだ。おまけに、用地内の旧墓地を掘ると人骨が出る始末。実は墓地の廃止許可手続きもなされておらず、旅行業界の関係者は「超高級ホテルといっても墓地の上に建つなんて不気味。誰が泊まるのか」とあきれ顔だ。大阪の不動産会社なども関与したとされる六本木の土地売買で何があったのか。
■時価220億円の土地次々手放す
地下鉄六本木駅(東京都港区)の出口を出て六本木通り(都道412号)を東へ歩くこと3分。通りに面して金属製の塀に囲まれた土地が見えてくる。退去が済んだビル、マンションなど3棟が並び、一部は砂利敷きの更地だ。残りはコイン式駐車場として利用されている。
不動産登記簿などによると、用地は約4千平方メートル(約1200坪)。かつて曹洞宗の寺院、湖雲寺(こうんじ)があり、土地の一部はマンション用地やビル用地として貸し付けていた。しかし平成18年に京都や都内の法人、個人が土地に地上権を設定し、22年には同寺が土地を担保に借金するなど、異変の芽が見え始めた。
24年ごろになると税金滞納による差し押さえが行われるようになり、区画ごとに静岡の建設会社などへの売却を余儀なくされた。その結果、本堂などは無くなり、寺の所有地は十数基のお墓が残る墓地110平方メートルだけになった。
湖雲寺は27年2月、債権者から第三者破産を申し立てられ、宗教法人としての同寺は事実上消滅。曹洞宗は檀家に迷惑がかからないよう、墓地を他の末寺に引き取らせて管理を任せている。
時価220億円の土地を所有しながら、借金を重ねて土地を次々と手放した住職。破産時の基本財産は簿価でわずか561万円になっていた。土地を切り売りして得たはずのお金が一体どこに消えてしまったのか、真相は薮の中だ。
■本山(注1)の承認なしに…
ここまでなら当時の住職による放蕩経営の「なれの果て」で話は済んだはずだった。しかし、25年に大阪市の日用品製造販売業L社が土地全体を買い占める大きな動きがあったところで、水面下で法規上の問題がくすぶり始めるようになった。
宗教法人法は、寺が境内地をはじめとする基本財産を売却、処分するには包括団体(宗派の本山)代表役員の承認が必要と規定しており、湖雲寺も寺の規則で同様のルールを定めている。住職の独断専行による土地転がしを防ぐためだ。
関係者によると、湖雲寺は最初に土地を切り売りした際も、宗教法人法と同寺規則に基づく財産処分の承認申請を曹洞宗に対して行っていなかったという。当然、L社が買い手となった売買に至るまで、本来なら必要な曹洞宗による承認書は存在していない。
L社による買い占め後、曹洞宗には「『曹洞宗代表役員の承認書がある』『承認書を取り付けることができる代理人が存在する』という情報は本当か」という事実確認の問い合わせが寄せられるようになり、曹洞宗は対応に苦慮するようになった。これらはL社が土地の転売先を探していた時期と重なる。
三大財閥系不動産会社も関心を寄せていたとされるが、これら財閥系大手は「情報」が虚偽だと知った途端に手を引いたという。ところが、大阪市の中堅不動産業M社がL社から26年10月までに土地を取得。さらにM社は約3カ月後の27年2月、一部を東証2部上場のアルデプロ(東京)へ再転売したのだ。
■法令違反次々と明らかに
宗教法人法を無視した土地売買に上場企業までもが参戦してきたため、静観していた曹洞宗は同月、アルデプロとM社や両社に取得資金を融資したノンバンクと信用組合に対し、ある通知書を送付した。
通知書は「現時点において、湖雲寺の土地処分の承認書や、承認を取り付けられる代理人は一切存在せず、当宗は一切承知していない」と一刀両断する内容だった。
これに対しM社とL社は27年6月、「曹洞宗には一切の責任がないことを認め、承認書が無いことをこれ以降の買い手に積極的に通知する」との連名の誓約書を曹洞宗に提出した。また、両社が同時に提出した報告書によると、アルデプロの社長(当時)はこの誓約書への捺印に同意したものの、同社法務部門が同意せず、捺印には至らなかったという。
こうした紆余曲折を経たにもかかわらず、アルデプロとM社は翌月、香港系不動産会社と土地の売買契約を締結し、売り抜けた。
金額は計222億円。香港系は30階建て、延べ床面積約3万5千平方メートル(約1万坪)、客室270室規模の超高級ホテル「ランガム」を開発する計画で、建設費用を含めた総投資額は500億円を超えるとみられている。
■取り残された「お墓」
しかし、曹洞宗の承認がなければホテルの着工はできないとされる。
香港系不動産会社は今年6月末、アルデプロとM社に契約金額の9割に当たる計200億円を支払ったが、「ランガム」プロジェクトは宙に浮いたままだ。アルデプロ広報は取材に「守秘義務契約があり、コメントは差し控える」と答えた。
また、売買された土地の一部には、かつて墓地があった。湖雲寺を管轄する港区のみなと保健所によると、墓石などは撤去されて更地になっているが、墓地埋葬法に基づく廃止許可は出ていない。
土地の地目を「墳墓地」から「境内地」あるいは「宅地」へ変更するには、本来なら保健所が出した墓地の廃止許可が必要だが、湖雲寺の地目変更はすでに登記が実行されている。
実際に今年8月、業者が現場を試掘したところ、陶器製の棺に入った人骨が出土した。みなと保健所は、人骨は曹洞宗に引き取りを要請。棺は江戸時代以前のものであるため、区教委が念のため発掘調査を行うという。
ホテルの開業に際して旅館業法に基づく営業許可を出すのも保健所だ。
みなと保健所の担当者は取材に「ホテルの底地の状態は旅館業法の許可要件には当たらない」として、墓地の廃止許可がなくてもホテルの営業許可は下りるとの見解を示した。が、大手旅行会社の担当者は「廃止されていない墓地の上に建つホテルに、いったい誰が泊まるのか」と突き放した。
このため同保健所は現在、十数基のお墓が残る西隣の墓地を含めて廃止手続きを進める方向で曹洞宗と協議を進めているという。廃止許可を得るには、隣地に取り残されたお墓を全て改葬する必要があり、一朝一夕にはいきそうもない。檀家の反発も予想される。
曹洞宗関係者は「本山(注1)は檀家の不利益が生じないよう善処しようとしているが、保健所の対応が不十分だ」と批判している。
超高級ホテル建設計画の行方が注目される。
---------------------------------------------
(注1)今回の場合、曹洞宗関係者が取材や問い合わせに「本山」とは言及しないそうです。
曹洞宗の法務関係を取り扱うのは「曹洞宗宗務庁」で、それは寺院ではありません。
お坊さんに必要以上のお金をもたせるとダメなのかもしれませんね。
修行や布教に専念して欲しかったです。
お寺は再建出来れば良いのでしょうけど、おそらくは金額的に無理でしょうね。
残念なことです。
都市優遇、大店法などの大企業優遇、いらない道路を作ったり都市開発優先。
下町とか個人店舗がなくなっているのが問題かと。
オリンピック開催は賛成です。東京で開催する一定のメリットは理解できますが、デメリットやどうしても東京に必要かというと、、、、。
以上