甍の上で

株式会社創瓦 社長 笹原真二のブログです。

甍会の総会、頑固者の話

2014-06-01 20:39:45 | 瓦のこと
 昨日、今日と尾道で、瓦の勉強会、NPO法人日本瓦葺技能継承甍会の総会が開かれました、尾道という町は、浄土寺、西国寺等、地方において国宝や国の重要文化財が多く、なぜ、地方の狭い坂の街に多くの古いお寺があるのか不思議に思っていましたが、古来より瀬戸内の港町で大名に支配されず、戦国時代の大阪の堺のような街であったそうです。鎌倉時代から多くの大店、今でいう商社があって、それらの大店からの寄進によって競うように立派なお寺が建立されたのでしょうと、尾道市の文化財保護課の西井さんが教えてくださいました。
お寺仕事に入りかけた30年前、尾道のお寺巡りを一人で回ったことが懐かしく思い出されました。改めて奈良の古寺を思わされるようなお寺、いぶし瓦が還元しきれずに赤茶けた瓦になっている、屋根は、今から50年くらい前、斑鳩の最後の宮大工と呼ばれた西岡常一棟領と瓦の昭和の大名人井上新太郎さんが組んで修復した屋根は、いまだ崩れる気配もなく、個性あるいびつないにしえの瓦が荒々しく整然と葺かれ、また繊細に葺かれています。良いものを見るということはやはり刺激になりますね。
 またこの会がいいのは、面白い人たちに会えることでしょうか?年は私よりずいぶん若いけど、静岡に永田君というものすごく上手な職人さんがいます。人当たりのいい頑固者なんですが、彼の話を聞いて、いつも勉強させてもらっています。私がこの会へ参加させてもらうようになったきっかけは、永田君の親方である、この甍会の理事長、塚本さんがやった仕事の写真を見たのがきっかけでした。やはりものすごく上手かったですね。彼の仕事の写真が手本、参考になりました。そんなところで仕事をしているから、永田君は当然、上手くなりるわけですが、彼のの場合はそれだけじゃないですね。持って生まれたあの頑固な性格が、幸いしたのではないかと思います。今回も永田君が葺いたシンプルな山門の写真は最高でしたね。たぶん、200年後には、静岡の文化財になるでしょう。私も今、200年後には井原の文化財になると思われる仕事に取り組んでいます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

5月のマンスリー

2014-06-01 20:38:02 | Weblog
    意識改革という言葉を意識しておきたい
 昨年から、岡山県瓦工事協同組合では、ガイドライン工法の普及に力を入れている。「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」は台風19号、さらには23号の被害を受けて、平成13年から全日本瓦工事業連盟が全国の瓦工事業者に向けて指導普及してきた。しかし、気候風土文化の違う様々な地域においては、決してガイドイン工法が浸透しているわけではないのが現状だ。
自然災害の少ない岡山は、台風19号、23号では被害が出たものの、ガイドラインで謳っている軒瓦、ケラバ瓦の3点留め、平瓦の全数釘打ち、棟の鉄筋の配金等の補強をしている工事業者は、そう多くはなかった。うちで言えば、40年前は平瓦に釘を打つということは無かった。それが、住宅金融公庫仕様で4枚に1枚釘留めをするようになり、昨年までの平瓦緊結率は70%、また棟においても普通の練り土から、石灰等を混ぜて作った南蛮漆喰に変えた。それなりに試行錯誤しながらやってきた。だから、強さには自信を持っていた。
しかし、昨年、岡山県瓦工事協同組合は、山陽新聞一面を使って「ガイドライン工法」の広告を出した。そうなると、3点留めにしていない、鉄筋を入れていないでは、言い訳が立たなくなるという意図で普及を推し進めた。
今月18日、19日と、全日本瓦工事業連盟の総会(新潟)に参加した。2日目の分科会では、どんなことがテーマになるのか楽しみだったのだが、議題は、岡山と同様、「ガイドラインJ(和型)」の普及が中心となった。全国の状況も、「ガイドライン工法」という言葉が出て13年、やっと前に進みだした。「付加価値を付けた分のお金がもらえるのか?」「今までのやり方で対処出来ているじゃないか?」等、岡山の理事会と同じような話が聞かれ、全国的な進捗率も高くないことが伺われた。そんな中、東北の人が「ガイドライン工法で仕事をしたところの屋根は崩れなかった」という一言は、印象に残った。
実はガイドライン工法は、新築物件だけに適用されるという。だからコンプライアンスについても、葺替工事は除外されている、これもおかしな話だ。他にも細部について議論しだすと重箱の隅を突っつくような話になって、それは、岡山の理事会でも、新潟の分科会でも同じような状況が起きた。本来の「お施主様に良い仕事を提供する」という話からそれてしまうのだ。
物事を変えていこうとするとき、「やらない理由づけ」はいくらでも出すことが出来る。しかし「やる理由づけ」は表面的な言葉になってしまうことが多く、説得力に欠けることが多い。今回の総会に出席してふと「意識改革」という言葉が浮かんできた。月並みな言葉かもしれないが、意識しておきたい言葉だ。     2014年5月28日             笹原 真二
追伸  今回、岡山の組合からは、かつてない6名という大所帯での総会への参加となった。これも組合の意識改革の表れだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする