湘南ライナー日記 SHONAN LINER NOTES

会社帰りの湘南ライナーの中で書いていた日記を継続中

中華丼はなぜ丼に盛られていないのか?

2013-02-01 23:11:13 | B食の道
中華丼はなぜ丼に盛られていないのか?

長い人生の中でずっと抱き続けてきた謎が、今日ようやく解き明かされることになったのだ。

その現場となるのが、おっさん二人飯で出かけた本牧に近い『華香亭本店』。外観も内装も年季が入いり実にいい具合に枯れた、おっさん好みの中華料理店である。
さっそく頼んだ「中華丼」(800円)が、目の前に現れた。



人生で初めて出逢う、丼タイプの中華丼である。
具がどれも大きめで、写真ではわかりづらいが、海老やタケノコ、豚肉(焼豚)、蒲鉾なども入っており、おまけに人参などは花形にカットされているという仕事ぶりだ。

おっと、手にした丼がズシリと重いぞ。瞬間、僕の胃は「さあ来い!」と容積を増やす。よーし、ガバガバいこうと具に箸を突っ込んだ。

おやっ? おいおい、この具はどこまであるんだ? なかなかご飯まで到達しないぞ!
挟んで持ち上げても、挟んで持ち上げても、発掘されるのは、具ばかりなのだ。すごい具のボリュームではないか!
断面図を描いてみたら、きっと上2/3が具で、ご飯は丼の底の方に茶碗1杯分ほどになるはず。そりゃ嬉しいけど、バランスを考えるとどうも手放しでは喜べない。
トッピングの具材と一緒にかっ込むことで、その魅力が倍増する丼物である。それが、具材とご飯のバランスが悪いのでは、かっ込む喜びが存分に味わえないではないか。これは由々しき問題である、断固として即時ご飯の増量を求める!とシュプレヒコールをあげたい(笑)。

で、このときハッキリと僕は理解したのである。
世の中の中華丼がなぜ丼ではなく、
カレー皿のような浅めの器に盛られているのかが。

その推論はこうだ。
もともとは今日の『華香亭本店』のそれのように、丼に盛られていたに違いない。だからこそ、中華「丼」なのだ。
ところが、やっぱり丼は直径が小さいので具があふれてしまう。そこで、あふれないようにあらかじめご飯を少なめにしておく。すると、食べたお客はバランスが悪くて「ご飯を増やせ」とシュプレヒコールをあげ始めた。あっちのテーブルこっちのテーブルでシュプレヒコールがあがる。そのうち、街のあちこちの中華料理店でシュプレヒコールがあがる。ついにはそのシュプレヒコールは全国へ広がり、これを鎮めるために考案されたのが画期的な皿盛りへの転換だったのである。
以来、中華丼は現在のような皿盛りに定着、中華丼なのに丼に盛られることはなくなったといわけだ。

こうして、これまで誰も解き明かそうとさえしなかった中国四千年の謎は見事に解明されたのである。

ただ、大きな声では言えないけど、ひとつだけ説明がつかないのは、じゃなぜ『華香亭本店』はいまだに丼で出てくるんだろってこと。
なんでだろ。でもまぁ、なんだかんだいってもうまかったからいいか。