湘南ライナー日記 SHONAN LINER NOTES

会社帰りの湘南ライナーの中で書いていた日記を継続中

打ってない

2012-02-25 18:57:58 | あんな話こんな話


先に言っときますが、今日のはまた一段と長いので、読まなくて結構です。いや、たぶん読めない。読んでも気分が悪くなる可能性もありますので、心配な方、すっ飛ばしちゃってくださいな。一応、記録しておくだけですので。
めまいのその後である。


一日休みをもらい昨日は仕事に復帰、午後までいつものようにデスクワークをしていたのだ。しかし、なんとなくモヤモヤが強くなってきた…と思うころには、もうめまいを通り越したグワ~という何とも表現しがたいツラい感覚に見舞われた。
グワ~ッというツラさに耐えていると回復し、ほっとして仕事を始めるとまたグワ~ッとくる。体を動かさなくても、しゃべったり、頭を使ってもまたグワ~がやってくる。その間隔もどんどん短くなっていくようだ。
さすがに耐えかねて5時過ぎに早退させてもらい、タクシーでクリニックへ向かった。もちろんその間もグワ~が何度となく訪れては去りの繰り返しで緊張感がほぐれることはなかったのである。

クリニックは1階が駐車場なので、階段を歩いて上らねばならない。グワ~が来ないように気をつけてゆっくりゆっくり上がったのに、受付に着いたタイミングでグワ~ッときた。
カウンターに手をかけ、うつむきながら「いまちょうどグワ~ッてきて」と、わけのわからないことを口走る。
「えっ?熱ですか?」
たぶん不整脈で…
で納得いただき、ベッドのある部屋に案内される。初めてだな、病院に行っていきなり寝かされちゃうなんて。

横になると、ちょっとだけ落ち着く。
看護師さんに症状と、以前「心室性期外収縮」の疑いがあるといわれた旨を伝えると、先生がやってきて腕の脈をとる。
「おー、ぜんぜん打ってねーや、心電図、それから血圧ね」

おかしなことをおっしゃる。
打ってねーって、いったいどういうこと?
かつて血圧が高めだったので「打ち過ぎ」ならわかるけどなぁ。

さて、心電図をとるころにはかなり落ち着いてきた。
「血圧は130の80ですから大丈夫ですね」
何が大丈夫なんだかわからないが、大丈夫という言葉が妙に嬉しい。

診察室に場所を移して先生の話を聴いているうちに、またグワ~がきた。
「来ました」
どれどれと先生、脈をとる。
「おぉ、ぜんぜん打ってない、ほら」
促されて自分でも手首を押さえてみるものの、よくわからない。
「だろ、打ってないんだからわからないよ、横になったほうがいいな」
ベッドに急ぎ移動。
「つまり、こういう時は血圧が下がってるんだ」
なるほど!打ってないって、そういうことか…ってヤバイじゃん!
なんか脈は打っていないのに、精神的にはドキドキしてきたぞ。
少ししてまた血圧を測ると、「戻ってきました、上が108です」
数字で聞かされるとリアルで怖い。怖い、怖い、怖いです。

心室性期外収縮という症状は日常的に誰にでも起きている普通のことらしい。ただし、頻度とか程度に差があり、僕の場合は触れ幅が大きく現れやすい体質ではないかとのこと。
今回は、オーバーワークやストレス、疲れといった複合的な要因に、やはり風邪薬がスイッチになったといって間違いないらしい。

いやいや先生、ストレスなんてあんまり感じないほうだから…
「そう言ってる人こそ危ないんだ」
そういえば、前職時代はほとんど見たことのなかった仕事の夢を、今は毎晩のように見るなぁ。
楽しい仕事には違いないが、一つ一つにかなりのプレッシャーを感じているのも確かである。

「ここまで激しいと精密検査して、今後のことを検討しないとマズイね。◯◯監督みたいになりたくないでしょ」
というわけで、総合病院への紹介状を書いていただく。

「この土日は家でじっとしていて、月曜日に必ず行ってね」
ハイ!もちろんです。
「どうしても耐えられないのがきたとき用に薬を出しておくから」
ありがとうございます。そりゃ安心!
「普通は1錠だけど、あなたの場合2錠飲んだほうがいいな」
ギャ~!

診察を終え待合室の椅子に座る。
またきた。グワ~がきた。なんか、すげーグワ~だ。ん~~~~~…

わっ、すごい、初めてだ今の感覚。これか、気が遠くなるっていうのは…
あぁ、怖かった。大丈夫なのかしら。もしもダメな時は救急車を呼べって先生いってたけど、今みたいな状態だったら、自分では呼べないよ、ゼッタイ。恐ろしい。どうしよう。このままさっきのベッドで寝かせてもらえないかな…と思っているうちにお会計だ。

そして、あのヤクを受け取りに、僕はひとり夜道を指定された取引場所に向かうのだった。

さっきのビッググワ~があったからか、やや回復の兆しである。向かいの薬局で処方を待つ間も、比較的平穏な時は流れていた。
薬剤師さんから、あのヤクの説明を聞く。そして質問をしているその時だった。
平穏だと思っていたのは、たぶん引き波が強かったせいだろう。そのぶんダイナミックなビッググワ~がやってきたのだ。
ん~~~~~ん~…

「い・いま、飲みますか? 水もありますよ…」
見かねた薬剤師さんが言う。
ツラさと恐怖に耐えかねて、じゃお願いしますと、1粒だけ飲むことに。
2錠と言われていたけど、土日に残り2錠では何とも心許ないから、ここはぐっとこらえる。だって、あと2錠しか残っていないという恐怖で病気になりそうだからね。

ここ、笑うところですよ、一応。
それにしてもすごいなぁ、あなた。そうこれを読んでいるあなたのことです。読むのにかなりの労力を費やしているはず。ご苦労さまです。そして、ありがとうございます。
さあ、もう少しだ、がんばれ!(病人が励ましてどうする)


「少し休んていかれて結構ですよ」
じゃ、お言葉に甘えて。
その間に自宅にメール。タクシーを呼ぶほどの距離でもなし、さりとて途中で倒れてもこの夜道では気づいてくれる人もいないであろう。

ムカエニコラレタシ

と妻に打電すると、なんと夜道に現れた人影は図体のデカイ息子だった。もちろん免許を取らないママチャリ野郎だから徒歩でのお迎えである(笑)。まあ、いくらパワフルとはいえ、妻では僕の体は支えられないからもっともである。


「大丈夫?」
いや、大丈夫じゃないから頼んだんだ。

「カバン、持つよ」
あ・ありがと…
感動に胸が震えた途端に、スモールグワ~が到来、道端にへたり込む。
泣いてるわけじゃないぞ。グワ~ッてきて、ツラくてしゃがんでるだけだかんな。

「つかまっていいよ」
おいおい、ホントに泣きそうになるじゃないか、おまえ…

静かな夜道を歩く二人の姿。さて、他人の目にはどう映ったのだろうか。
ノロノロ歩く年寄りの散歩に付き合う息子、いや面倒見のいい孫に見えたかもしれない(笑)。

ただ、ツラかったこれまでがウソのようなちょっとあったかな帰り道となったことは確か。
そして、あのヤクのおかげか、息子のおかげか、帰宅後から今まで一度もグワ~がきていないのである。


写真は、先日たまたま駅前を通過した行進。ドンドドンドン、ドンドドンドンと規則正しい太鼓の音が冬の空に響いていた。