僕が一人、この炒飯と格闘している後ろを、若者たちがぞろぞろ2階に上がっていった。
ほどなく、その2階からオーダーが聞こえてくる。
「炒飯5コで4コが大盛り」
それを聞いたお客の一人が笑いながらこう言った。
「食べ盛りだなあ」
ここは神保町の『徳萬殿』。そう、炒飯の大盛りで有名な、かねてよりO部長おススメの中華料理店だ。
その大食いのO部長でさえ挑戦する気になれないという大盛りは、確かに食べ盛りでなければなかなか完食は難しいはずだ。
だって、僕がいま対戦しているのは、ただの普通盛りなんですよ。
これだって、僕の長い人生の中で食べてきたすべての『炒飯の大盛り』をはるかに凌ぐボリュームなのだ。普通がコレなんだから、大盛りはいったい…。
いやぁ、2階へ駆け上がって、この目で大盛り炒飯を見てみたいものだ。そして、若者たちの食いっぷりを。
この炒飯、お味の方もなかなか。色合いからしても、『炒飯』というよりも『焼き飯』といったほうがピッタリ。もう、ワッシワッシいけます。一人なんだから急ぐ必要もないのに、なぜかどんどん詰め込む。詰め込めば詰め込むほど、幸せなのだからしょうがない。
と言っているあいだに、あれ?大きめの餃子5個とともに案外あっさり完食。
目の前に現れた時は、全部食べられるかどうか不安だったんだけどなあ。おかしいなあ。
もしかしたら、僕もまだ食べ盛りなのかも。
この『徳萬殿』は、あのお店やこのお店のすぐ近くです。神保町は、いい街だ