錦之助ざんまい

時代劇のスーパースター中村錦之助(萬屋錦之介)の出演した映画について、感想や監督・共演者のことなどを書いていきます。

TSUTAYAへ行ったり、ラピュタへ行ったり

2014-02-06 03:53:38 | 錦之助ファン、雑記
 有馬稲子特集のチラシに載せる作品解説を書かなければならない。それぞれ80字程度で短いのだが、それだけに書きにくい。ポイントは、映画を観たくなるように書くことで、受け売りの知識を物知り顔で書けばすぐに書けるのだが、やっぱり自分の見た目で、ひと言でもふた言でも気の利いたことを書きたいと思うと苦労する。ずいぶん前に観て、内容を忘れてしまった映画もあるし、実は観ていない映画もあったする。そこらは誤魔化して適当に書けばいいのだろうが、私は結構真面目な方なので、ビデオやDVDで観られる作品は再見するようにしている。
 おとといは、新宿のツタヤへ行ってきた。田坂具隆監督の『はだかっ子』、澁谷実監督の『もず』は数年前に観たことがあるが、もう一度観たいと思い、ビデオを借りてきた。早速、『はだかっ子』を観た。田坂監督は戦前、『路傍の石』を撮っているが、『はだかっ子』はこの名作に似ているところがあり、ああこれは戦後版『路傍の石』なんだと思う。近藤健という作家の原作を読んでいないので分からないが、山本有三の「路傍の石」を下敷きにして、原作も映画も作られたことは確かなのではなかろうか。母一人、子一人の貧しい暮らしぶり、小学校の担任の先生の励まし、大人の世界の身勝手さやいやらしさが子供の目から描かれているところなど、共通性が多い。『はだかっ子』のシナリオを書いたのは成澤昌茂さんだが、今度成澤さんとお話しする機会があったら訊いてみたい。

 昨日はラピュタ阿佐ヶ谷へ行って、錦之助の『七つの誓い 黒水仙の巻』を観てきた。久しぶりにリラックスして錦之助の映画を観ることができた。午後5時からで、客は10人ほどで寂しかったが、楽しめた。
 錦之助が洋装で出演するのは、『ヒマラヤの魔王』以来だが、あの服装はロビンフッドを真似たのだろうか。それともピーターパンか。茶色の三角帽子がとてもよく似合っていた。あれは当時美術助手の稲野實さんがデザインしたものとご本人からお聞きした。『七つの誓い』は、佐々木康監督の作品で、『曽我兄弟 富士の夜襲』を撮って二、三ヶ月後に作られた映画。錦之助の役名が同じ五郎なのも親しみやすい。この頃になると、錦之助の演技は飛躍的にうまくなっていて、表情も豊かである。
 丘さとみさんは、この映画が錦之助との初共演だが、実に魅力的で、演技もしっかりしていて、あの若さ(21歳)でスター性を備えていた。有名になる女優は、やはり違うなと思う。とくにラストの亡くなるシーンは、表情とセリフが一体になって、申し分ない素晴らしさだった。「黒水仙の歌」も丘さん本人が歌っているが、うまいものだ。
 この映画では、何と言っても吉田義夫のオンゴ将軍が目立つ。ユル・ブリンナーの『王様と私』を意識して、扮装を考えたようだが、あのスキンヘッドはカツラなのだろうか。頭の部分にカツラの線がまったく見えない上に、浮き出た血管の筋がリアルで感心した。吉田義夫は、額が後退していて、髪の毛は薄くなっていたから、もしかすると残りの毛を全部剃って、頭をツルツルに磨いたのだろう。
 東映東京で現代劇専門の波島進が丘さんのサラの兄の役で出演しているが、あのずんぐりした体形は問題あり。背が低い割りに太りすぎだ。毛利菊枝は母親役で、『紅孔雀』の黒刀自のようなインパクトなし。
 第一部は、舞台がヒマラヤ山脈の麓のどこかで、日本は15分くらいしか出てこない。飛騨の山里と画面に出たが、日本にいる登場人物は顔見世程度だった。千原しのぶの桜子はやや老けすぎか。東千代之介の黒覆面は一度も顔を見せず。黒覆面の衣裳、ラメが入っていて豪華。同じ黒覆面でも悪役の徳大寺伸の衣裳は安っぽい。坂東簑助、大川橋蔵、伏見扇太郎、それと三笠博子がワンカットだけ。悪役では山形勲、月形竜之介、それと中村時之介。
 セットは安っぽいが、あれで十分だろう。キャメラは三木滋人で、フィルムはアグファカラー。三木の特撮シーンがところどころにある。遠景に巨像を彫った石山が出てくるシーンがそうで、あれはキャメラの前に背景用の絵を置いて、前景といっしょに同時に撮影するのだそうだ。三木滋人が独自に開発した秘技で、手法の名前は失念した。また、スタンダードサイズの画面が紙芝居のようで、またそれを意識して作っていると感じた。途中、五郎の父親役の加賀邦男が紙芝居をやるシーンもある。あの絵は、稲野さんが描いたのだろうか。絵がなめし皮のような布に縫い付けてあって、凝っていた。
 ほかに、気づいたこと、調べてみようと思うことを書いておきたい。
 奴隷小屋の見張り役が青柳竜太郎だった。間抜けなイイ役。
 三条雅也は、オンゴ将軍の側近役(息子なのか?)だが、『紅孔雀』の信夫一角と比べれば格下げ。片岡栄二郎も悪役で、錦之助を殴り倒した。あとでファンから非難を浴びたであろう。
 オンゴ将軍のそばに女が何人かいたが、今の愛人と前の愛人の女優名がわからず。
 伊東亮英が子供受けするイイ役で、モクスケといい、日本からやって来て、大切な手紙をオンゴ将軍に騙されて見せてしまう。このシーンは、子供たちが、彼のバカ正直さに呆れながら、笑っているうちに次第に腹を立てて観るように作られた部分で、子供向け東映時代劇には欠かせない場面である。
  
 


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