錦之助ざんまい

時代劇のスーパースター中村錦之助(萬屋錦之介)の出演した映画について、感想や監督・共演者のことなどを書いていきます。

錦之助映画祭りをラピュタ阿佐ヶ谷で

2018-09-24 13:21:11 | 【ラピュタ阿佐ヶ谷「錦之助映画の上映」】
ラピュタ阿佐ヶ谷で来年の春、「錦之助映画祭り」(仮題)を催すことになりそうだ。
きのう、支配人の石井さんといろいろ話して、ぜひラピュタで特集を組みたいので協力してほしいと要請された。
私が代表をつとめる錦之助映画ファンの会では、これまでずっと池袋の新文芸坐で錦之助映画祭りを企画開催してきたのだが、2013年11月の「錦之助よ、永遠なれ!」(下の画像)を最後にやっていない。
ラピュタではこれまで錦之助の映画をいろいろ上映してきたが、錦之助だけの特集を組むのは初めてである。時代劇俳優の特集では何年か前に近衛十四郎をやっているが、それ以来ではあるまいか。
今回の「絢爛 東映文芸映画の宴」では錦之助主演作を5本上映しているが、来年の春(3月~5月の約2ヶ月間)にやるとなれば、この5本を除き、30本くらい上映することになるだろう。
ニュープリントも、ラピュタと錦之助映画ファンの会で製作費を出し合って、2,3本は作ろうと思っている。
乞うご期待!





『ちいさこべ』を見る

2018-09-22 14:48:18 | 錦之助ノート
ラピュタ阿佐ヶ谷通いが続いている。
先週土曜は、支配人の石井紫(ゆかり)さんに頼まれて、私の作った錦之助関係の本を6種類持っていった。ロビーの映画書籍コーナーに置いて、販売してくれるというのだ。ラピュタでは、これまで東映作品の特集があるたびに、何度も売ってもらっている。ちょぼちょぼしか売れないのだが、ジュンク堂や紀伊國屋書店よりも売れるので嬉しい。
ラピュタの石井さんとはもう十数年の知り合いである。映画館には珍しい女性の支配人で、しかも昔から評判の美女。最初に会った時は、可愛らしい女子大生のようだったが、今もほとんど変わらない。彼女のプライベートなことは全然知らないが、きっと映画が恋人なのだろう、と私は勝手に思っている。
で、土曜は本を納品した後、『娘の中の娘』を見た。『恋愛自由型』と同じく、ひばりちゃんと健さんのラブ・コメディで、監督も佐伯清だった。しかし、こっちは出来があまり良くなかった。

昨日は、『ちいさこべ』を見にいった。
昼過ぎに行って、1階のロビーの書籍コーナーを見ると、テーブルの上の真ん中に、他の出版社の本を脇にのけるかのように、私の持っていった本がずらっと平積みで並んでいる。
石井さんがいたので、「いいとこ置いてくれて、ありがとう!」と言うと、「あのー、もう2冊売れちゃったのがあるんで、また今度持って来てくれませんか」と石井さん。錦之助映画ファンの会の記念誌「青春二十一」の第三集なのだが、3冊入れて2冊売れてしまい、残り1冊。錦ちゃんファンが買ったのだろう。
ロビーに映画狂の落語家・快楽亭ブラックさんがいたので、声をかけ、ちょっと話をする。『ちいさこべ』は何年か前にフィルムセンターで見たそうだが、いい映画だったので、また見に来たとのこと。
ラピュタは2階が映画館になっていて、切符の番号順に案内されて外階段から2階へ上がっていくのだが、48席の小さな名画座である。入りが悪いと数名しかいない寂しい時もあるが、この日の『ちいさこべ』は、雨の日にもかかわらず、30名以上入っていたかと思う。



さて、『ちいさこべ』(田坂具隆監督、錦之助主演、昭和37年東映京都作品)、171分の大作である。私がスクリーンで見るのは3度目なのだが、今度も途中で泣けてしまった。前回も前々回も同じ箇所だった。この映画を見たことのない人には分からないと思うが、焼け跡で子供達が人形劇をやる場面になると、目がうるんでくる。私だけではなく、見た人の多くがそうなのではないかと思う。感動して胸が痛む映画というのは、そうざらにあるわけではないが、私にとって『ちいさこべ』はその一本である。山本周五郎の原作は、ずいぶん昔に読んだことがあるが、映画の方が感動的だった気がする。

映画が終わって、感動さめやらないまま席を立とうとすると、ラピュタ館主の才谷遼さんも見ていた。彼とも知り合いなので、挨拶すると、早速お茶でも飲みに行こうという話になる。
で、才谷さんと近くの喫茶店へ行き、1時間余り雑談。また、道楽で映画を撮ったと言うので、その話を聞く。現在編集中とのこと。宣伝用のチラシをもらう。原案・脚本・監督才谷遼、映画のタイトルは『ニッポニアニッポン』。
才谷さんと別れて、馴染みのラーメン屋で夕食をとり、ラピュタでもう一本映画を見た。

『カレーライス』(渡辺祐介監督、昭和37年東映東京作品)。初めて見る映画である。阿川弘之の小説が原作だそうだが、その小説は知らない。江原真二郎と大空真弓が主演の恋愛喜劇で、出版社を首になった二人がカレーライス屋を始める話なのだが、出来のほどはまあまあだった。面白く作ろうとして、所々で客受けを狙ったのだろう。封切り時のことは知らないが、今見るとあざとさが目立って、笑えない。共演者の若水ヤエ子、世志凡太は、当時は人気のあった喜劇役者だったが、もう見るに堪えない。
それに江原さんには悪いが、こういう三枚目のような役には向かない感じがした。江原真二郎と言えば、今井正監督作品の『米』『純愛物語』の青年役、時代劇では内田吐夢監督作品『宮本武蔵』五部作での吉岡清十郎役などの印象が強すぎるからだろう。
私が見たこの回は客の入りも悪く、10名ほどだった。
『カレーライス』、才谷さんの話だと、ラピュタで上映するのは二度目で、前回は江原さんご自身が見に来たそうだ。才谷さんがこの映画、面白いから見てよ、と勧めるから見たのだが、残念ながらそんなに面白くなかった。



ラピュタ阿佐ヶ谷で『海の若人』を見る

2018-09-14 18:59:06 | 錦之助ノート
半年近くブログを休んでしまった。
きのう、錦之助映画ファンの会の方たち数名とお会いし、何でもいいから書いてほしいという要望をいただいた。私もずっと気にはしていたのだが、錦之助関係の資料を調べることやノートをとることのほうに専念して、ブログを書くことがおろそかになっていた。涼しくなり、夏バテからも回復したので、きょうからブログ再開したい。
あまり張り切らずに、気軽に書いていこうと思う。

さて、ラピュタ阿佐ヶ谷で現在、「東映文芸映画の宴」という特集をやっていて、約2か月間の特集期間に錦之助主演作が5本上映される。
『海の若人』『ちいさこべ』『花と龍』『続花と龍』『武士道残酷物語』である。
で、きのうは『海の若人』を見てきた。
この映画を映画館で見るのは本当に久しぶりである。調べてみたら、2009年11月、新文芸坐での錦之助映画祭りの時見て以来なのだ。9年近く前だ。
ビデオではこのブログに『海の若人』を6回にわたって書いた時(2015年5月末から6月初め)、数度見ているが…。

『海の若人』を今回また見て、感じたことを書いてみたい。ずっと前に書いたことと重複するかもしれないが、悪しからず。

まず、22歳の錦ちゃんであるが、時代劇の錦ちゃんとはイメージがずいぶん違う。ほぼノー・メークで普通の髪の毛だからか、時代劇の時より若く見える。未成年のようで、学生服が良く似合う。甘いマスクが余計引き立ち、いいとこのお坊ちゃんという感じ。当時の錦ちゃんファンが錦ちゃんのことを「マシュマロ」にたとえたことがあったが、分からないこともない。
演技も、初めての現代劇とは思えないほど、しっかりしている。現代語もまったく自然で、違和感なし。

ひばりちゃんは、17歳(もうすぐ18歳)だが、この頃はちょっとふっくらしていた。大根足で、足首も太い(きのう『海の若人』の後、ひばり主演の『恋愛自由型』を見たのだが、20歳のひばりちゃんはずいぶん痩せて、足もほっそりとしていた。大根足も治るのかと不思議に思った)。
ひばりちゃんもセーラー服が似合う。ほとんどのシーンはセーラー服で通していたが、兄の結婚式のシーンでは着物、家にいるシーンではセーターにスカートの私服だった。セーター着では胸のふくらみが目立っていた。ひばりちゃんの演技は、相変わらず自然で上手。

錦ちゃんとひばりちゃんの二人のシーンはどれも印象的でほほえましい。
ピクニックの帰り、バスの中で森永ミルクチョコを半分に分け合って食べたあと、芸者の田代百合子が乗り込んできて、パーカーの万年筆が布団の中にあったと言って、錦ちゃんがあわて、ひばりちゃんが怒るところが面白い。
この映画、パーカーの万年筆という小道具が実にうまくストーリーに生かされている。
森永チョコレート・コンビは確か昭和29年暮には錦之助と北原三枝だったと、どこかで読んだ気がする。とすると、ひばりが錦ちゃんと組むため、森永の宣伝を買って出て、北原三枝と代わったのだろうか。

海岸で星十郎と対決する場面。錦ちゃんのあざやかな一本背負いが2本決まる。錦ちゃんは、中学時代、講道館で柔道を習っていた。昔とった杵柄か。
芸者の田代百合子を錦ちゃんがおんぶして歩くところは、場所を変えながら3カットもあった。よくもまあ、錦ちゃんファンが嫌うおんぶのシーンをこんなに長く撮ったものだと思う。田代百合子は豊満で、いかにも重そう。

『海の若人』の主題歌(木下忠司作曲)の歌詞を書いておく。
おも舵、取り舵
とも綱、解いて
錨を上げたら、出発だ
若い僕らの憧れ乗せた
船は海原越えていく