錦之助ざんまい

時代劇のスーパースター中村錦之助(萬屋錦之介)の出演した映画について、感想や監督・共演者のことなどを書いていきます。

映画『祇園祭』ノート(6)

2018-11-01 13:31:15 | 錦之助ノート
 先日、京都で『祇園祭』のシンポジウムに出席し、研究者たちの発表を聴いて、初めて情報を得たことがいくつかある。

一、京都府から『祇園祭』の製作費の融資をしたのは、1967年ではなく、68年で、金額は5000万円。当時の京都府議会の議事録に記載されているそうだ。京都銀行が京都府へ5000万円を入れ、その金を日本映画復興協会へ回したらしい。しかし、京都府からその後の融資が行われたかどうか、また、あったとしたら金額はいくらなのか(再度5000万円だったのか)? その点については未調査で不明のようだ。

二、京都市民(府民)に売った前売り券(350円)とは別に、1000円券というのもあったという。これは、無料試写会付きで、広く市民に資金援助を求めたものだが、売った団体や売れた枚数は不明。

三、京都文博に所蔵されている伊藤大輔文庫(夫人から寄贈)に、『祇園祭』の未定稿が数冊残っていること。発表者の京樂真帆子さんが脚本家の八尋不二(伊藤大輔と連名)が書いた二冊の脚本に目を通したという(京樂さんは、一冊目を「山鉾本」、二冊目を「未定稿本」と名付けていた)。山鉾本は原作をずいぶん変えたものだが、山鉾本の方が史実に添っていて、これを映画化した方が良かったのではないかという感想を述べていた。また、加藤泰の書いた脚本も残っているらしい。

四、史実では、祇園祭を阻止したのは、足利幕府というより、むしろ延暦寺の大衆(だいしゅ、仏僧の集団)だったが、実際に作られた映画では、延暦寺の「山法師」「僧兵」という言葉(鈴木・清水脚本にも出てくる)が全部削除され、足利幕府だけが阻止勢力になっていた。
 こうした描き方は、明らかに原作者はじめ京都府議会の日本共産党の政治的意図によるものだったと思われる(京樂さんははっきりと言わなかった)。つまり、政治権力を有する支配者階級を武士(侍)による足利政権に限定し、武士階級が民衆(町衆、農民、下層民)を搾取・抑圧し、民衆は武士に対抗し、自治体制を確立するといった構図を明確にしたかったのだと言える。



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1 コメント

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久保圭之助 (太田文代)
2020-07-20 10:57:11
久保圭之助に関して書かれた記事があればお教えください。
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