錦之助ざんまい

時代劇のスーパースター中村錦之助(萬屋錦之介)の出演した映画について、感想や監督・共演者のことなどを書いていきます。

ラピュタ阿佐ヶ谷の桜町弘子トークショー

2012-06-30 14:53:38 | 監督、スタッフ、共演者
 書き込みがひどく遅れてしまった。
 先日、ラピュタ阿佐ヶ谷の支配人の石井紫(ゆかり)さんが写真を送ってくれたので、その掲載もかねて、6月9日(土)に行なわれた桜町弘子さんのトークショーの模様を書いておきたい。が、もう20日も前のことだし、残念ながらトークを録音していなかったので、覚えていることだけをお伝えしておく。

 9日の土曜は朝から小雨だった。
 朝10時半から映画『車夫遊侠伝 喧嘩辰』上映。最後列の席で桜町さんと並んで、映画を観る。ラストシーンで、桜町さんが感極まり泣いてしまったので、「お化粧室、行かれますか」と私。「大丈夫」とおっしゃるので、正午少し過ぎからトーク開始。石井さんからの紹介があって、桜町さん、続いて聞き手の私がスクリーンの前へ。
 桜町さん、立ったままで丁寧なご挨拶。涙声で、
「雨が降っている中を、みなさん、こんなにたくさん、わざわざいらしていただき、本当にありがとうございます!」
 ラピュタは超満員。大きな拍手。私の知り合いも10人ほど来ている。



 まず、今観た『車夫遊侠伝 喧嘩辰』のことをお聞きすると、桜町さん、この映画は大好きな思い出の作品だそうで、
「わたし、ちゃんと結婚できなかったんですけど、この作品で三度もお嫁さんになれてほんとに良かったわ」
 それから、加藤泰監督のことをいろいろ話される。
「撮る前にずっと(キャメラを置く)穴掘って、準備が終ってやっと始まると、わたしが何度やっても加藤先生がムスッとなさっていて、オーケーが出なくて……」
 撮影は毎日大変だったそうだ。桜町さん、心の中で監督に腹を立てながら、むきになって演じたという。加藤泰監督は、俳優に何度も何度も演技をやらせながら追い詰めて、その中からイイものを取り上げる。辰(内田良平)が花嫁の桜町さんの頭をこづくシーンでは、文金高島田の角隠しを何度直したか分らないほどだったと。監督は俳優のアイディアも生かし、喧嘩に行く前の辰と桜町さんのシーンで、辰がおにぎりを食べるところがあるが、「あれは、内田さんのアイディアなの」とのこと。
 ここで、私がお客さんから、この映画についての質問を受け付けると、三、四人の方から質問があり、桜町さんのお答えがあって、その後、女優桜町弘子誕生のいきさつをいろいろとお尋ねする。私も拝聴していて、ここからのトークが非常に面白かった。
 ラピュタでのトークショーはなごやかでアットホーム。舞台の上でやる新文芸坐のトークショーより、聞き手としてもやりやすい。(つづく)

 

浅草名画座で『宮本武蔵』を観る

2012-06-05 22:14:03 | 錦之助ファン、雑記
 昨日は映画ざんまいの一日だった。午前10時半よりラピュタ阿佐ヶ谷の「桜町弘子特集」で『胡蝶かげろう剣』を観て、それから浅草名画座へ行き、三本立てを全部観た。『博徒外人部隊』『抱かれた花嫁』『宮本武蔵』。プログラムを見ないで浅草へ行ったらちょうど『宮本武蔵』が終ったところだったのでついでに全部観てしまった。『抱かれた花嫁』(番匠義彰監督、有馬稲子、高橋貞二、高千穂ひづる他)は、松竹初のカラーシネスコ作品で、私の好きな映画で、観るのは三度目。浅草の鮨屋を舞台にした面白いヒューマン・コメディだ。有馬稲子と高橋貞二のペアがなかなか良い。
 『宮本武蔵』(内田吐夢監督)第一部は、スクリーンで観るのは二年ぶりくらいか。京都Tジョイで「内田吐夢&月形龍之介特集」をやった時だが、あれはいつだったか?物覚えが悪くなって、何年前といった勘定が出来なくなっている。一昨年の秋だったと思う。
 『宮本武蔵』は何度も観ているが、いつ観ても新鮮な感じで観られる映画だ。細かい所に注意しながら見直すと、いつも新たな発見がある。昨日観て、気づいた点を二、三、書いておきたい。
 クレジットタイトルの出演者で、最後は三人並んで、三国連太郎(一行空いて)、入江若葉(新人)、丘さとみの順になっている。つまり、大トリは丘さとみで、これは非常珍しく、どうしてなのかと思った。朱美役の丘さんは、最初の三分の一くらいで消えて、それから一度も出て来ないのだが……。出番で言えば、沢庵の三国連太郎とお通の若葉さんとは比較にならないほど少ない。 
 タケゾウが村に帰って来て逃げ回り、山道で炭焼きの村人に姉の居場所を尋ねる場面がある。その村人が石丸勝也だったことを確認。この村人からタケゾウが弁当箱を奪って、中を開けると空っぽで、箱を放り投げるところだ。
 移動長回しのワンカットに注意して観た。まず、タケゾウが縛られて沢庵に連れられ、村に戻ってくるところから、本堂の柱に結わえ付けられ、村人の合議が始まるまでの長いことに驚く。もう一箇所、ラスト近く、タケゾウが岩山の上から、下にある砦まで降りて来るシーン。この場面は、助監督の山下耕作が内田吐夢に音楽を入れないようにと進言したことで有名である。つまり、音楽を入れると、点のように小さなタケゾウの人影が目立たなくなってしまうというわけで、しばらく無音で続く。タケゾウが下に降りて来てやっと静かに音楽が入るのだが、山の上から駆け下りて来て、姉が閉じ込められているはずの砦が空っぽだということに気づくまでを、スタントマンを使わずに錦之助自身をずっと動かして撮影している。内田吐夢に明らかに演出意図があってのことだが、どう考えればいいのか。自然の大きさに対するタケゾウのちっぽけさを強調したかったのだろうか。
 沢庵がタケゾウを白鷺城へ連れて行く前後の場面で、沢庵があちこちに出没するのが不自然に思えた。
 最後に赤松家の幽霊が三人(その一人が汐路章)登場して、血が湧き出すシーンは、今もってよく分らない。





近況報告

2012-06-04 06:26:57 | 錦之助ファン、雑記
 5月中旬からずっとシナリオの執筆で忙しく、30日にようやく終って、一区切りついた。
 その間、13日(日)には故内田有作さんの納骨で明大前の墓所へ行き、18日(金)は故岡田茂氏の一周忌で善福寺での法事と東映大泉撮影所での式典へ参列した。
 22日(火)は錦之助さんの義理の息子の島英津夫さんと池袋で会い、2時間ほど飲みながら話した。島さんは7月に錦之助さんを称える一座を立ち上げ、池袋のグリーンシアターで時代劇の旗上げ公演をするというので、私も協力することになったからだ。
 25日(金)は友人の展覧会を見に渋谷へ行き、その後、京橋で荻上直子監督の新作『レンタネコ』を鑑賞。荻上直子の映画は好きでほとんど観ているが、『レンタネコ』は不出来だと思った。ネコ好きにとっても不満な映画だった。
 29日(火)は、渡部保子さんの著書「昭和のスター 最後の証言」の発行を祝い、渡部さんを励ます会を脚本家の石森史郎さん夫妻と俳優の石濱朗さんと私とで開いた。新宿の橙家で3時間ほどの楽しい会食だった。
 そんなわけで、最近20日間で外出したのはこの5日間くらいで、あとは仕事場に引き籠りだった。
 先週、ラピュタ阿佐ヶ谷の支配人の石井さんから電話をもらった。今度桜町弘子さんのトークショーをやることになったので、私に聞き手を頼みたいとのことだった。桜町さんにはご挨拶もせずにそれっきりになっていたので、6月2日の土曜の午前中にラピュタへ行き、お昼に映画が終ってから桜町さんに初めてお会いした。15分ほどの簡単な打ち合わせだったが、桜町さんは初対面とはいえ、ほとんど思った通りの方で、ざっくばらんに話が進む。私が二、三、質問をすると、いろいろなことをよく憶えていらっしゃって、へえと思うこともあった。東映に入るきっかけ、『隠密七生記』での錦之助さんとの共演の話をちょっとだけお聞きした。
 桜町さん「わたし、口下手だから、うまくしゃべれないわよ」「いや、ぼくがときどき質問しますから、あとはお好きなように話してください」「はいとか、いいえとか簡単にしか答えられないかも」「今、ちょっとお話聞いただけですが、大丈夫ですよ」「なんだか心配ね」
 桜町さん、私がお渡しした名刺を見ながら、「トークの前の日に電話するから、ちゃんと打ち合わせしましょう」とのことだった。
 ラピュタ阿佐ヶ谷での桜町弘子トークショーは、6月9日(土)『車夫遊侠伝 喧嘩辰』終了後、お昼の12時ごろからの予定。