錦之助映画祭り最後のトーク・ゲストは岩崎加根子さん。岩崎さんにお目にかかるのは初めてだった。いくら人見知りしない私でも、ちょっとだけ緊張したものの、10年前から直接お会いできる機会を待ち望んでいたので、ものすごく楽しみでもあった。それで、ラピュタの事務室で岩崎さんにお会いして自己紹介し、これまでの経緯をお話したら、5分もしないうちに打ち解けてしまった。岩崎さんの自然体で飾らない率直な話しぶりと奥床しく飄々としたお人柄のせいだと思う。それで、本番ではわりとリラックスして聞き手を務めることができた。
トークの内容も実に興味深かった。『反逆兒』の時に、付き人もなくたった一人で東映京都撮影所へ行ったら、錦之助さんが気遣って何かとスタッフに指図して世話を焼いてくれたこと。また、お二人とも舌足らずで(舌が短い)、舌比べをした楽しい思い出なども話してくださった。錦之助さんとの濃厚なキスシーンについて質問すると、岩崎さん、他人事のように「すごかったわね。今見て、びっくりしました!」(お客さん爆笑)
『反逆兒』は、築山殿(杉村春子)と徳姫(岩崎加根子)の姑と嫁の丁々発止のやりとりが見ものだが、杉村春子さんとの面白いエピソードも紹介。岩崎さんが着物の裾を上げてセットに入ろうとしたら、素足を見た杉村さんが「あなた、こっちへ来なさい! 足にも白粉塗らなきゃダメでしょ」(杉村さんの口真似をしたので、爆笑)そんなところ見えないのにと思ったが、杉村さんの注意は守ったそうだ。「錦之助さんに抱き上げられて足が見えたカットがあったけど、みなさん、分からなかったでしょ?」(また爆笑)
岩崎さんを凄いと思ったのは、伊藤大輔監督にしろ、杉村春子さんにしろ、また内田吐夢監督にしろ、決しておじけることなく、仕事だと割り切って、常に芝居に打ち込んでいらしたように思えたことだ。ダメ出しもなかったという。さすが大女優! どんな役でも自分のものにして堂々と自信を持って、演技をなさってきたのだろう。
ほかにもいろいろ話してくださったが、書ききれない。(このトークは録音したのでいつか文字起こししたい)。
(岩崎さんの隣りにいるのは俳優座のホープ椎名慧都さん。私の隣りは映画監督の細野辰興氏)
さて、トーク後、写真撮影(上の画像)を終え、岩崎さんとお連れの方(歯医者さんの女性で、車を運転していらした)を誘って、近くのレストラン(「青松」)で歓談。細野さんも参加。岩崎さん、昼食を抜いていらしたので、赤ワインを飲みながら、おいしそうに中華料理を召し上がっていた。店を出て、細野監督と別れ、駐車場まで歩きながら、すぐそばに猫バーがあることをお教えすると、「あたし、カネコというくらいで、猫大好きなの」とおっしゃる。で、Tom’s Bar へ行くと、前田店長がいたので、開店前なのに入れてもらう。ここでまた、猫を観察しながら、1時間半ほど岩崎さんのプライベートなお話を聞きながら、楽しく過ごす。これまで猫は代々5匹飼って来られたとのことで、「半平」というオス猫を最近亡くなるまで飼っていたという。月形半平太から取った名前だそうだ。
7時半まで猫バーにいて、お別れしたが、「きょうはなんだか一日中遊んじゃって、楽しかったわ」と岩崎さん。良かった!