錦之助ざんまい

時代劇のスーパースター中村錦之助(萬屋錦之介)の出演した映画について、感想や監督・共演者のことなどを書いていきます。

「錦之助映画祭り」日誌(3月28日)

2009-03-29 03:51:23 | 錦之助映画祭り
 午後4時ごろまで、このブログの記事を書いたり、メールに返事を書いたりして過ごす。
 雪代敬子さんから電話をもらう。京都シネマでゲストトークをお願いして、快諾をいただく。6月6日は予定があるので、7日の日曜なら都合が良いそう。雪代さんは木曜にラジオの「ありがとう浜村淳です」で「錦之助映画祭り」のことを聞いたとのこと。喜んでいらした。雪代さんは浜村さんと大変仲が良いので、もしかすると雪代さんが一言伝えてくださったのかもしれない。
 夕方、神保町の一誠堂書店へ「一心錦之助」を3冊持って行く。一週間ほど前に電話で注文をもらったのだが、忙しくて行けなかった。九段下の私の仕事場から自転車で2分。すでに店頭に一冊飾ってあったので、取次の八木書店から仕入れたようだ。「胡蝶奮戦」も飾ってある。「一心錦之助」3冊を定価の75パーセントで即金で買い取ってもらう。店員さんの話によると、「胡蝶奮戦」もよく売れているとのこと。ちょっと驚く。一誠堂は、古本から新刊本まで映画の本をたくさん取り揃えているので、映画ファンの常連客も多く、高千穂さんの本も売れるのだろう。三省堂よりも売れているかもしれない。
 神保町シアターへチラシをもらいに行く。ちょうど映画が終ったところで、お客が出てくる。高橋さんがいたので声をかける。彼女と近くの喫茶店へ行き、30分ほど話す。明日仙台へ行くそうだ。定期的な上映会があって、明日錦之助の映画をやるらしい。(タイトルは聞いたけれど忘れた。いやはや、近頃は私もボケが始まったようで、人の名前をすぐに忘れたり、今日も自転車をどこに停めたか分からなくなる始末。記憶力の低下が甚だしい。)
 高橋さんと別れ、三省堂へ寄る。「一心錦之助」が8冊ほど、棚の上段に面出しになっている。すく隣りには佐藤忠男氏の時代劇の新刊本が並んでいる。映画担当の書店員(若い女の人)がいたので、あいさつする。
 東京堂へ行く。4階の売り場に、顔なじみの畠中さんが居たので、10分ほど話す。彼女は、昨年まですずらん通りにあった書肆アクセスの店長で、書肆アクセスは私が出版社を始めてからずっと世話になっている取次の地方小出版流通センターの直営店だったのだが、残念ながら経営難で閉店になってしまった。しばらく畠中さんは地方小の内勤をしていたのだが、書店員の方が性に合っているらしく、東京堂の店員になって再出発した。「一心錦之助」が2冊棚差しになっていたので、売れ行きを聞く。よく売れているとの話。(後で、1階の深谷部長にきくと、15冊仕入れ、2週間で7冊売れたそうだ。売れ行き上々とのこと。「一心錦之助」は1階の話題書売り場にも置いてあるようだが、見当たらず。「胡蝶奮戦」は2冊棚差しを発見。)畠中さんの話だと、「胡蝶奮戦」も鈴木さんとかいう某雑誌の有名な編集者が読んで面白かったと言っていたそうで、その雑誌で近々紹介するらしい。(この雑誌名も忘れてしまった。メモしておかないと、ダメだなー。)東京堂で本を2冊買う。伊藤大輔のことを書いた新書本と山根貞男氏のマキノ雅弘論。山根氏の本はあちこちの書店で見かけて、ちょっとだけ立ち読みしたが、ちゃんと読んでおこうと思って買ってみる。
 書泉グランテへ行く。地下1階の映画本売り場で「一心錦之助」が数冊平積みになっている。映画担当の書店員はレジに居たが、忙しそうなので声をかけずに出る。
 今日は久しぶりに神保町へ来たので、行きつけのタンゴ喫茶「ミロンガ」とジャズ喫茶「ビッグボーイ」へ寄ってみたのだが、「ミロンガ」は貸切りでコンサートをやっていて、「ビッグボーイ」は満席だった。「ビッグボーイ」の店長にあいさつしたら、私がNHKに出たことを常連客から聞いたらしく、驚いていた。
 中華料理屋で一人寂しく、夕食をとる。カウンターに座る。両側に若い男女のカップルがいて、中年のおじさん(私)が真ん中にはさまれた感じ。餃子定食にマーボ茄子の単品を注文。餃子、大きくて食べきれず。
 仕事場に帰ると、ポストに中村獅童さんから新刊本が届いている。「歌舞伎座の怪人」だ。お母さんの小川陽子さんから本の話は聞いていた。「銀座百点」で連載していた文章を編集して本にしたらしい。タイトルも同じ。中に陽子さん自筆の礼状と獅童さんからの書状(印刷したもの)が入っている。陽子さんからは「萬屋一門をよろしく」とのお願い。今は初代錦之助さんのことだけで精一杯だが、「錦之助映画祭り」が一段落したら、二代目錦之助さんも獅童さんも応援しなければなるまい。
 午後8時半ごろ、横になった途端、眠ってしまう。午前1時に起きる。錦之助さんのお姉さんの多賀子さんから留守電が入っている。先日、祇園会館の招待券を2枚送ったことへのお礼だ。多賀子さんの京都のお知り合いが祇園会館へいらっしゃるそうで、その方が招待券をもらってとても喜んでいたとのこと。良かった。 
 明日日曜は、ゆっくり休んで、読書の日にしようと思う。




「錦之助映画祭り」日誌(3月27日)

2009-03-28 14:16:24 | 錦之助映画祭り
昨日、京都シネマの神谷さんからファックスをもらった。各映画館に通知する速報である。これで、東映にブッキングを依頼した錦之助映画の4作品がなぜ押さえられてしまったのかが判明。年間の稼動予定というのは、以下の上映企画だった。速報を転記するのでお読みいただきたい。

◎T・ジョイ系全国13劇場で4月20日から1年間、
平日の午前10時から1回、東映旧作時代劇を上映。

 ㈱ティ・ジョイは同社が運営する全国シネマコンプレックス13ヶ所で4月20日(月)から2010年4月16日(金)まで1年間にわたり「東映時代劇まつり」と題して平日の午前10時から1回、東映旧作時代劇を上映する。料金は一律1,000円(団体割引30名以上800円)。

 上映劇場は、T・ジョイ東広島、T・ジョイ新潟万代、T・ジョイ大泉、T・ジョイリバーウォーク北九州、T・ジョイ久留米、T・ジョイパークプレイス大分、T・ジョイ長岡、T・ジョイ出雲、XYZシネマズ蘇我、新宿バルト9、広島バルト11、梅田ブルク7、鹿児島ミッテ10。

 上映作品は次の通り。
『新選組鬼隊長』『一心太助 天下の一大事』『旗本退屈男』『花笠若衆』『ひばり捕物帳かんざし小判』『血斗水滸伝 怒涛の対決』『雪之丞変化』『水戸黄門 天下の副将軍』『恋山彦』『江戸の悪太郎』『壮烈新選組 幕末の動乱』『反逆児』『怪談 お岩の亡霊』『赤穂浪士』『宮本武蔵』『瞼の母』『千姫と秀頼』『関の彌太ッぺ』『一心太助 男一匹道中記』『十三人の刺客』『血と砂の決斗』『忍者狩り』『徳川家康』『沓掛時次郎 遊侠一匹』『柳生一族の陰謀』『十一人の侍』

 おいおい、上映作品26本のうち錦之助出演作が15本もあるではないか!錦之助主演作が8本だ。全国各地で錦之助映画を上映してくれるのは大歓迎である。が、一年間も上映フィルムを独占されてしまうのは困る。今年は「錦之助映画祭り」の一年なのに、これでは11月の新文芸坐で『反逆児』も『瞼の母』も『関の彌太ッぺ』も『沓掛時次郎 遊侠一匹』も『徳川家康』も『血斗水滸伝 怒涛の対決』も『赤穂浪士』も東映からフィルムを借りて上映できないではないか。でも、これらの作品は新宿バルト9で上映するというので、まあいいか。モーニングの一回だけというのはちょっと気に入らないが、仕方あるまい。それにしても、どうした風の吹き回しか。もしかすると「錦之助映画祭り」に刺激されて、こうした企画を立てたのかもしれない。「祭り」を「まつり」にしているが、タイトルも真似されたような気もする。
『反逆児』『瞼の母』『関の彌太ッぺ』『沓掛時次郎』の4本は、これまでも東京の映画館のあちこちでやっている映画だから、11月の上映会でやらないでも良いかもしれない。11月の「錦之助映画祭り」では、別のあまり上映しない作品をずらっと並べることにしよう。そのほうがお客さんもたくさん観に来るだろうし、喜ぶにちがいない。ただ、『徳川家康』ができないのは痛い。『柳生一族の陰謀』は、最初から「錦之助映画祭り」では上映するつもりがなかったので、かまわない。

ところで、京都シネマでの上映プログラムは次のようにしたいと思っている。まだ最終決定したわけでないが、来週中には確定するはずだ。

6月6日(土)『隠密七生記』と『怪談千鳥ヶ渕』 ゲスト予定:千原しのぶさん
6月7日(日)『弥太郎笠』と『殿さま弥次喜多』 ゲスト予定:雪代敬子さん
6月8日(月)『浅間の暴れん坊』と『真田風雲録』
6月9日(火)『ちいさこべ』 ゲスト予定:中島貞夫さん
6月10日(水)『隠密七生記』と『怪談千鳥ヶ渕』
6月11日(木)『弥太郎笠』と『殿さま弥次喜多』
6月12日(金)『浅間の暴れん坊』と『真田風雲録』ゲスト予定:井川徳道さん
 *上映時間は午前10時ごろから午後5時半ごろまで。一日各作品2回ずつ上映。



「錦之助映画祭り」日誌(3月23日~26日)

2009-03-28 12:45:37 | 錦之助映画祭り
 3月23日(月)。中島貞夫監督へ電話。新文芸坐での盛況ぶりを報告する。京都シネマでの上映作品の件を話し、『ちいさこべ』の上映日にはぜひトークゲストに来てくださいとお願いして、快諾を得る。中島監督は『ちいさこべ』では助監督をなさっていたので、苦労話も聞けそうだ。4月11日の祇園会館の日は朝から来てくださるとの話。私は10日に京都に行くのでその日の夜に連絡することにする。
 京都シネマの館主の神谷さんと上映作品およびプログラムの組み方について電話で話す。トークゲストを4人呼ぶこと、ゲストへのお礼をファンの会と折半にすることに関して合意。

 3月24日(火)。自宅近くの郵便局へ行き、新文芸坐で錦ちゃんファンの方から現金でいただいた寄付金(計8万円)をファンの会の口座に預け入れる。受領証を寄付された方へ郵送する。
 
 3月25日(水)。朝、有馬稲子さんの事務所に『一心太助』2作の録画を送る。「ぴあ」関西版の掲載原稿の校正をする。電話で担当者が「錦之助」を「にしきのすけ」と言うので、注意する。20代の若い男の人なのだろうが、錦之助もその程度の知名度になってしまったようだ。「にしきのすけ」という呼び名は、電話で若い書店員から「一心錦之助」の本の注文をもらった時も何度か聞いたが、そのたびに「きんのすけ」という時代劇の大スターの名前なので間違えないようにと注意してきた。錦之助のことを知らない若者が増えつつある。嘆かわしい限りだ。
 
 3月25日(木)。今日からまた「錦之助映画祭り」の仕事を本格的に始める。午前中、銀行でいろいろな支払いを済ませる。近代映画社へ「一心錦之助」で使ったカバー写真の掲載料を振り込む。小杉社長がずいぶん値段をまけてくれた。
 午後、毎日放送・大阪ラジオ局副部長の島さんへ電話する。関西での長寿人気ラジオ番組「ありがとう浜村淳です」で「錦之助映画祭りイン京都」の告知をしてもらえるとの情報を得たからだ。これはファンの会の熱狂的錦ちゃんファンの田中さんが何度も働きかけ(二度ラジオ局へ押しかけたそうだ)、宣伝してほしいと頼んだ成果である。いつ放送するのか確かめようと思って電話したのだが、なんと今朝10時ごろ、浜村さんがもう喋ったとのこと。バックに錦之助の歌(「やくざ若衆」)を流し、祇園会館での上映作品、日時、ゲスト(有馬稲子さん)について紹介してくださったという。さすが、錦ちゃんファンの浜村さん、やってくれたじゃありませんか!「笑点」の木久蔵さんといい、ご協力に感謝。電波の宣伝効果は違うし、無料で宣伝してくれたのだから、本当に嬉しい。
 東映ビデオ宣伝部のKさんに電話する。新文芸坐の店頭で販売した錦之助出演作のDVDがなんと58枚も売れたと言って喜んでいる。そのうち5枚は私が買ったのだが、それにしても1枚4725円もするDVDがこんなにたくさん映画館で売れたのは初めてのことらしい。今後もよろしくとのことでKさんもやる気満々になっている。11月発売の錦之助映画5本のDVDについても打ち合わせる。『遠州森の石松』『風雲児織田信長』『美男城』『若き日の次郎長 東海の顔役』『花と龍』の5本をリクエストしておく。東映ビデオが今回作成したチラシ(錦之助出演作のDVD一覧)を祇園会館と京都シネマへ500枚ずつ送るよう手配するとのこと。
 午後5時、銀座の東映本社へ行く。著作権課のチーフのHさんと1時間ほど話す。ファンの会のコレクター・諸星さんから借りた「東映ウィークリー」約20冊と私の持っている「東映の友」の創刊号から数冊を預ける。東映には残っていないので、資料としてコピーしておきたいとのこと。
 午後6時半、京橋のフィルムセンターへ。研究員の板倉さんに「錦之助映画祭り」の報告とお礼をする。「一心錦之助」を1冊寄贈する。
 夜、京都で療養中の千原しのぶさんへ電話する。6月の京都シネマで『怪談千鳥ヶ渕』を上映する予定なので、ゲストにいらしていただきたいとお願いする。「そのとき元気だったら」という条件つきでオーケーをいただく。千原さんとは、昨年一月末に京都撮影所でお目にかかって以来、時々連絡をとっている。非常に折り目正しい方で、私がDVDとか本とかを送るたびに、必ず返礼のお電話をいただく。京都のおせんべいを送ってもらったこともある。
 美術監督の井川徳道さんへ電話する。井川さんも京都にお住まいである。「映画祭り」の報告、「一心錦之助」へ寄稿のお礼(本はお送りしてある)、京都シネマでのトークゲストの依頼をする。快諾。井川さんは、美術デザインの名匠なのに、大変腰の低い方で、とてもいい人である。上映作品は、『真田風雲録』が良いということに。この映画のセットについては、大変苦心なさったそうで、思い出話もいろいろあるようだ。この映画のセットは確かにユニークですごい。専門的な面白いお話が聞けそうだ。
 さて、これで、6月6日からの京都シネマの上映作品とゲストがほぼ固まってきた。ゲストにもう一人、雪代敬子さんをお招きしようと思っている。雪代さんの出演作を選ぶとなると、沢島監督の『殿さま弥次喜多』とうことになる。『怪談道中』は現在上映用フィルムがない。『捕物道中』はこの間新文芸坐で上映した。京都シネマでは第三作の『殿さま弥次喜多』にしようと思う。美空ひばり、丘さとみ、大河内伝次郎が出演する豪華版である。これはきっと京都でも受けるにちがいない。最後に花魁(おいらん)役で出演するのが雪代敬子さんで、これが綺麗のなんの!そして、ラストは錦ちゃんの超特大アップで終る。この笑顔がたまらない。



「錦之助映画祭り」日誌(3月21日)

2009-03-26 02:45:57 | 錦之助映画祭り
 朝8時起床。今日は最終日なので初回から二本観ようと思う。『独眼竜政宗』『源氏九郎颯爽記 白狐二刀流』、どちらも今回初披露のニュープリントだ。
 9時半。新文芸坐着。もうお客さんがたくさん来ている。館内は7割の入り。
真ん中の後ろの方に座る。とうとう最終日までやってきたという実感が湧いてくる。2週間、長いようで短かった。私は1日だけ休んで、13日間通ったが、この期間、新文芸坐にずいぶん長時間居たと思う。ロビーではたくさんの年配方々と言葉を交わした。ほとんどの方のお名前も知らず、お顔も今となっては思い出せない。錦之助ファンの方が多かったようだが、そうでない方もかなりいたような気がする。『笛吹童子』を懐かしんで観に来た人、東映オールスター映画を五十年ぶりにスクリーンで観たいと思って来た人、『親鸞』というタイトルに惹かれて観に来た人、その他、東千代之介ファン、美空ひばりファン、中村賀津雄ファン……。錦之助の出演作を観ることが目的ではなかった方も、観終わってやっぱり錦之助はいいなと感じて映画館を出られたとしたら、私も大変嬉しい。ファンの会のみんなも同じ気持ちだろう。錦之助の映画をあまり観たことのなかった人が、錦之助ファンになって、これから錦之助の映画をどんどん観てくれたとしたら、これに勝る喜びはない。
 今回の上映会は、オールドファンを映画館へ呼び戻し、錦之助の素晴らしさはもちろん、昭和30年代の時代劇の面白さを再認識していただけたことでは成功だったと思う。しかし、観客層を見ていると、なんだか懐古上映会に終ってしまった感はぬぐえない。今回はそれでも仕方がないと思うし、年配の方が多かったとはいえ、たくさんのお客さんが来てくれたことで満足すべきなのかもしれない。連日通ってくれた方も多かったようだし、みんな喜んで帰られたと思うので、その意味では大きな役割を果たせたと思っている。観客に若い人が少なかったと感じるのは比率の上で年配の方が多数を占めていたからなのだが、上映作品によっては三十代の人が結構いたときもあった。それでも私はもっと若い人に錦之助映画、そして全盛期の東映時代劇の素晴らしさを広めなければならないと痛感した。若い人を無理矢理映画館へ引っ張り込むことはできないので、今回観に来てくれた少数派の若い人が口コミで宣伝してくれることを望んでいる。そうすれば、少しでも若い観客が増えていくにちがいない。
 私が常に思っていることは、二十代、三十代の日本の若い人たちに、過去の映画人たちの努力の結晶である時代劇を鑑賞してもらい、その素晴らしさを知ってもらうこと、大袈裟に言えば、時代劇を通じて日本の良き映画文化を認識し、継承してもらいたいことなのだ。中村錦之助は、時代劇を演じたその代表的役者の一人であり、私がいちばん好きな時代劇映画のスターだから、今回の「錦之助映画祭り」を催すために尽力したのだが、彼の出演作を観れば、本格的な時代劇の醍醐味も満喫できると思っている。そのことはチラシの前書きにも書いた通りである。
 さて、『独眼竜政宗』は、錦之助の意気込みがひしひしと伝わってくる作品だった。大河内傳次郎と錦之助の共演作では、ベストスリーに入るだろう。佐久間良子も可愛い。お人形さんみたいな大川恵子は、まあまあか。
 11時半、『白狐二刀流』が始まる。客席は満員になっている。
 この映画は、加藤泰監督作品としては不出来な部類に入る。詳しいことは、以前書いた私の記事をお読みいただきたい。スクリーンで観るのは今回が初めてだったが、印象は変わらなかった。ビデオで観て良い映画だと感じた映画は、スクリーンで観るとその良さが倍増する。しかし、ビデオで観てまあまあだと感じた映画は、スクリーンで観てもせいぜい2割増しくらいしか良さが増さないと思う。
 今日は一回ずつ観れば十分。休憩時間に館内やロビーにいる顔見知りのファンの会のみんなに声をかける。午後5時ごろから打ち上げ(祝勝会)をやるから、良かったら参加するようにと誘う。
 午後1時半。新文芸坐を出て、近くの喫茶店へ。ファンの会の町田さん、西奈美さんがいっしょ。1時間半ほど歓談。町田さんは用事があって帰る。西奈美さんと池袋北口の古本屋へ行き、時間をつぶす。
 午後4時半、新文芸坐へ戻る。午後5時、ファンの会の会員総勢15名と近くの日本料理店へ。乾杯のあと、2時間ほど錦ちゃん談義に花を咲かす。みんな、連日の池袋通いにもかかわらず、疲れを見せず、充足感にひたっている。私がいちばん疲れているみたいだった。
 午後7時半、お開き。柴田さんと焼き鳥屋へ。今回の映画祭りの常連が5名二階の片隅に陣取って飲んでいる。高橋さん、巨体コンビの大川さんと杉山さん、古林さん、それに榎谷さん。
 午後8時半、飲み屋のみんなに別れを告げ、新文芸坐へ帰る。スタッフの柳原さんがロビーに展示していたポスターと雑誌類をまとめておいてくれたので、返してもらう。これらはみなファンの会のコレクターの諸星さんから借りた貴重品である。ちゃんと引き取って、諸星さんに返却しなければならない。雑誌類は東映の著作権室のHさんがコピーしたいと言うので、来週あたり東映に持っていかなければならない。記念本の余りは、近々、車で取りに来る予定。
 午後10時半、二週間ぶりに自宅へ帰る。家ではいろいろな用事がたまっている。出来れば、3日ほど何もかも忘れ、休息しようと思っているが、多分不可能だろう。



「錦之助映画祭り」日誌(3月20日)

2009-03-25 23:03:56 | 錦之助映画祭り
 今日は祝日で、上映作品は『宮本武蔵 般若坂の決斗』と『若き日の次郎長 東海の顔役』の二本。それに入江若葉さんのトークショーがあるので、大入り満員を予想。
 11時ごろ新文芸坐へ行く。『般若坂の決斗』を上映中で、まだ次の『東海の顔役』まで40分以上間があるのにロビーにはお客さんが十数人来ている。
 11時半、尾形伸之介さんが見えたので、少し話す。休憩時間に尾形さんを関係者席へ案内。館内はもう満員になっている。関係者席を12席取っておいたが、この回はまだ関係者はいらっしゃらないと思い、8席を開放する。この席に座ったお客さん方には次の回で席を移っていただくよう、念のためお願いしておく。
 すぐそばの客席に、日本テレビの元プロデューサーの野崎元晴さんがいらしたので、あいさつする。今日で5日間新文芸坐へ足を運ばれたとの話。野崎さんは女優の宇治みさ子さんの元のご主人で、宇治みさ子は俳優の田中春男の娘さんなので、野崎さんと田中春男の関係は義理の父子だったわけである。田中春男は、数多くの映画で大阪弁でアクの強い役柄を演じ続けてきた個性派であるが、錦之助の映画でも同様。今回の「錦之助映画祭り」では、『一心太助 天下の一大事』の「絶望の幸吉」、『弥太郎笠』の照吉、『暴れん坊兄弟』の十人の子持ちの小役人などが強烈。今日の『若き日の次郎長 東海の顔役』では、乞食坊主の法印の大五郎を演じている。野崎さんとは一昨年の新文芸坐の溝口健二特集の時に知り合いになったのだが、今度ゆっくりお話したいと申し上げたきり、機会がもてないままになっている。テレビ時代劇を数多く手がけてきたプロデューサーなので、お元気なうちにゆっくりお会いしていろいろな話をうかがいたいと思っている。
 11時50分、『東海の顔役』上映開始。私は関係者席に座って鑑賞。マキノ雅弘監督のこの作品は私のいちばん好きな映画の一本である。スクリーンでは4度目、ビデオでは20度以上観ている。清水次郎長は本来静岡弁なのだが、錦之助の次郎長はチャキチャキの江戸っ子。きっぷが良く、ずけずけと物を言う。丘チンのお蝶さんとのやり取りがとても愉快。錦之助と丘さとみの共演作はたくさんあるが、この映画のアドリブのようなセリフはとくに面白い。富士山で始まり、富士山で終るこの映画、見どころ満載、ぐいぐい引っ張られてあっという間に観終わる。スッピンの錦ちゃん、素のままの錦ちゃんの傑作の一本だと思う。
 午後1時半。ロビーに出ると、石森史郎さんと奥様と息子さんが待っていらしたのであいさつし、関係者席へ案内する。次に嶋田景一郎さんと奥様がいらしたので、案内。1時40分ごろ、入江若葉さんが若いマネージャー二人(男女)と受付へお見えになる。女性のマネージャーのSさんとは、打ち合わせなどで何度も話し、よく知っているが、若い男性のほうは今日が初対面。三十歳くらいのなかなかいい男だ。今日の若葉さんはシックな黒い洋服で、相変わらず綺麗でお若い。若葉さんが現れると、あたりがぱっと明るくなる。あいさつを済ませ、若葉さんと二人を関係者席へ案内する。関係者のみなさんは全員『宮本武蔵 般若坂の決斗』をご覧になることに。
 館内は超満員。立ち見のお客さんが最後列に十数人。通路に座って観ている方もいた。かくいう私も通路に座って観る。子供のころはよくこうして映画を観たなー。『般若坂の決斗』は何度観てもしびれる。内田吐夢監督の『宮本武蔵』五部作の中で、私がいちばん好きな作品だ。
 午後3時半。若葉さんと4階の事務所へ。ちょっと打ち合わせして、スクリーン前の壇上へ。まず私が簡単にあいさつ。映画を観に来てくださったお客さんへお礼を述べる。若葉さんを紹介し、壇上へお呼びする。盛大な拍手。
若葉さんは前の晩、話す内容を紙に書いていらっしゃったそうで、紙を5枚ほど取り出す。多分話したいことは覚えていらっしゃると思い、若葉さんが話しやすいように、私はところどころで合いの手を入れるだけにする。
 『宮本武蔵』のお通役に選ばれた経緯。母のたか子さんと内田吐夢監督の自宅へ断りに行って、吐夢監督と書斎で二人きりになって説得された話、舞台初出演の「宮本武蔵」では錦之助さんと女形の時蝶さんが懇切丁寧に演技指導をしてくださったことなど、たっぷりと話される。
 30分後にセットした携帯のバイブレーターがポケットで起動。そろそろトークを切り上げるように話を持っていく。今日は石森史郎さんにもあいさつの言葉をいただくように打ち合わせしてある。石森さんは萬屋錦之介の最後の舞台「鬼と人と」の脚本を書かれた方である。客席にいる石森さんを壇上へお呼びする。
 石森さんが錦之助さんへの思いを簡単に話された後、例の企画について私が話題をふる。その企画とは、石森さん自身が脚本を書いて舞台化したいと思っている企画で、若葉さん主演の「お通菩薩」。吉川英治の「宮本武蔵」ではその後お通さんはどうなったか、まったく分からない。巌流島の決斗の後、労咳で死んでしまったのだろうか。朱美と又八は夫婦になって子供も生まれ幸せになるのに、取り残されたお通さんは可哀相で、どうにかしてあげたい。この点がロマンチストの石森さんは昔からずっとご不満らしい。お通さんの一途に武蔵を慕う気持ちをないがしろにして、剣の修業もあったもんではない。女性に対して責任のとれない武蔵は卑怯者だと石森さんは言う。私も同感である。石森史郎作「お通菩薩」は、いわば「それからのお通」で、年老いたお通さんが尼さんになって武蔵の殺した人たちの菩提を弔っている。そこへ盲目の乞食が現れ、これがなんと武蔵の成れの果てで、ここからドラマが始まる。先日石森さんと話してシノプシスをお聞きし、大いに賛同したところ、「あなたがプロデューサーやってよ」と言われてしまった。他日、若葉さんにお会いした時、「お通菩薩」の話をしたら、あまり乗り気でないような感じだった。石森さんの話だと脚本の構想は出来上がっているので、あとは若葉さんがお通さん役を承諾すれば前に進むと言うのだ。今日、トークショーで石森さんが舞台化の話を持ち出したのも、お客さんの反応を確かめて、若葉さんを乗り気にさせようという魂胆だった。私もその片棒をかついだわけだ。お客さんの受けはなかなか上々で、若葉さんの年老いたお通さんを待望する雰囲気だった。これは私だけの考えだが、武蔵を北大路欣也さんがやり、城太郎(伊織でもよい)を中村獅童さんがやれば、きっと評判を呼ぶ舞台になるにちがいない。
 閑話休題。トークショー終了後、サイン会は長蛇の列。若葉さんは多分100人以上の方の本(「一心錦之助」)にサインしたと思う。握手、写真撮影など、若葉さんはニコニコしながらお客さんの要望に快く応えておられた。
 喫煙所で一服していると、そばに立川企画の社長の松岡さん(立川談志師匠の弟さん)がいらしたので、しばらく話す。若葉さんに招かれたのでいらしたとのことだが、松岡さんは大の錦ちゃんファンなのだそうだ。錦ちゃんが歌った『やくざ若衆』の主題歌を口ずさんでいる。レコードがあったら、カセットに録音してもらえないかと松岡さんに頼まれる。ファンの会の人がレコードを持っているのでお引き受けする。松岡さんに「一心錦之助」を一冊買ってもらい、いっしょに若葉さんのところへ行き、サインをお願いする。若葉さんも松岡さんも喜んでいた。
 次の映画上映の時間が迫ってきたので、新文芸坐の関口さんを呼び、サインをしてもらいたい人に番号の付いた引き換え券を渡し、半券を本にはさんで預かり、映画終了後に受付で手渡すことにする。30冊ほどあったと思う。
 サイン会終了。円尾さんから、今さっき丘さとみさんが『東海の顔役』を観にいらしたと聞く。若葉さんとマネージャー二人と4階の事務所へ。今日、若葉さんは『宮本武蔵 般若坂の決斗』よりむしろ『東海の顔役』を観たいとおっしゃっていたのだが、あいにく観られないことになってしまった。事務所で歓談しながら、預かった本30冊にサインしていただく。
 午後6時10分、『東海の顔役』が終るころに、続けてこの映画を観ておられる石森史郎夫妻と息子さんを関係者席まで迎えに行く。若葉さんがぜひ丘さとみさんにごあいさつしたいとおっしゃるので、丘さんを探す。相変わらず大きなマスクをしておられたが、すぐに丘さんを発見。いっしょにエレベーターで4階の事務所へ。丘さんと若葉さんの再会は久しぶりだったようだ。若葉さんが丘さんに抱きつく。5分ほど二人だけで話しておられた。丘さんは『般若坂の決斗』もご覧になりたいというので、若葉さんとお別れのあいさつを済ませ、また下の関係者席までご案内する。
 午後6時半。今日、私は二本の映画ともじっくり鑑賞できた。そして、若葉さんのトークショーの聞き役もなんとか無事に務めたのでほっとする。若葉さんも石森さんたちもみんなお腹がすいたとおっしゃるので、近くの日本料理屋へみなさんをお連れする。個室をとる。7名で乾杯。いろいろな小料理を食べたあと、鍋料理を注文。2時間ほど歓談。石森さんも若葉さんも楽しそうにおしゃべりなさるので、時間を忘れる。
 午後9時半にお開き。みなさんとお別れし、池袋駅から地下鉄の有楽町線に乗って帰る。飯田橋駅まで若葉さんとマネージャーのSさんとご一緒する。