京都にいる時、とんだ手違いが起った。
「錦之助映画祭り2010」のリーフレット(チラシ)が18日の月曜に出来るので、印刷所からその日に新文芸坐へ約1万部を納品し、そのうち500部を私のいるT・ジョイ京都へ新文芸坐から宅急便で送ってもらうことにしていた。リーフレットを錦之助映画ファンの会員と関係者へ京都から発送しよう思い、私は京都へ行く前の日に宛名シールと同封物をコピーし、用意を整えていた。茶封筒は手荷物に入れるとかさばるので、京都の100円ショップで大量に買った。19日の火曜にはリーフレットが京都に届くはずなので、宿泊していたホテルで封筒に宛名シールを貼り、ウラにファンの会のゴム印を押し、さあ、後はリーフレットを入れて封詰めするだけという状態で待っていた。それが、新文芸座のスタッフから宅急便を月曜に出すのを忘れたという電話が入った。一日遅れるが、その時は仕方がないと思った。
20日の水曜の昼過ぎにようやくリーフレット500部の包みがT・ジョイ京都に届いた。早速T・ジョイのロビーの片隅に出してもらった机で封詰めをしようと、包みを開け、出来具合を見ようとリーフレットを手にした瞬間、唖然とした。
錦ちゃんの顔(片目がまだ潰れていない独眼竜政宗)のある表紙と時間表のあるウラ表紙が左右逆になっているではないか!折りが右側に来てしまい、表紙を左から右に開ける形になっている。中のページが縦書きならいいのだが、リーフレットの文章は横書きなので、これではまずい。一番最初のいわゆる面付けを間違えている。印刷会社としてはごく初歩的な、あり得ないミスである。
「怒り心頭に発する」という表現があるが、その時の私はまさにそうした状態だった。私が仕事を頼んでいる印刷会社の若い担当者が不注意だったためだ。
すぐにその担当者へ電話して、刷り直しを命じた。彼の顔は見えなかったが、きっと顔面蒼白だったにちがいない。これは完全に印刷会社のミスだから、12000部、翌日の夕方までに刷り直すことになった。もちろん、費用はあちら持ちだ。
次に新文芸坐に電話を入れた。新文芸坐のスタッフにも私は腹が立った。月曜日にリーフレットが届いた時に、表紙と折りの位置がおかしいことに誰か気付きそうなものだ。私に電話をして来た時に、それに気付いて教えてくれれば、もっと早く手が打てただろうし、すでに都内の映画館に送ったリーフレットを回収しなくてすんだはずである。要するに、私が苦労して作ったリーフレットをスタッフが誰もしっかり見ていないということなのだ。電話をするとスタッフの中でも若手のGさんが出た。彼の言い分がふるっていた。というよりも、私はあきれてしまった。
「ちょっとおかしいとは思いましたが、そういうチラシもよくあるんで……」
面付けを間違えていても、刷り直しをしないで、そのまま配ってしまうらしいのだ。
「それで、都内の映画館には全部でどのくらい送っちゃんたんだ?」と私。
「いや、まだ送っていなくて、今日の夕方送ることになっているんです。今のところ館内に置いているだけです」
私はそれでなくても腹が立っているのに、新文芸坐のスタッフのていたらくに対し、火に油を注がれたように激怒した。リーフレットをできるだけ早く配布しようと徹夜をして急いで作ったのに、そして月曜の午前中には新文芸坐へ届くように手配したのに、何たることか!実はGさんが責任者ではないので、チーフの矢田さんを電話に出すようにと言った。矢田さんは遅番なので、まだ出勤していないとのこと。
「ともかく、明日の夕方、刷り直しがそちらに届くので、前のやつは映画館へは送らないように。それから私の分は、もう京都へ送らなくてもいいから」と私はGさんに指示を出した。
しばらくして、チーフの矢田さんから電話が来た。彼は謝りもせず、言い訳ばかりして、責任を人に押し付けるので、「バカヤロー!」と怒鳴りつけて電話を切った。
ロビーに円尾さんが来たので、事情を話すと、彼は結構冷静で、
「いちばん悪いのは印刷会社ですよ。新文芸坐のスタッフはみんな忙しいんだから、しょうがないですね」と言う。まだほかの映画館へ発送していないのは、不幸中の幸いだった、みたいな言い方をする。確かに円尾さんの言う通りかもしれない。
後で、円尾さんに聞くと、私が怒鳴って電話を切った後に、新文芸坐の矢田さんから彼の携帯に電話がかかって来たそうだ。
「Fさん(私のこと)は今、頭に血が上っているから、一日置いて明日にでも電話をかけ直したほうがいいですよ、と矢田さんに言っておきました」と彼。
翌日の夕方、矢田さんから電話があったが、私は映画を観ている最中だったので、電話に出られなかった。
留守電を聞くと、「刷り直しが先ほど届き、発送も済ませましたので、ご心配なく」とのメッセージ。
長々と書いたが、錦之助映画ファンの会の会員のみなさんに「錦之助映画祭り2010」のリーフレットが届くのが一週間も遅れてしまった顛末である。結局、リーフレットは京都から発送できず、かさばる封筒一式を東京へ持ち帰り、23日の土曜の午後に封詰めを終え、発送した次第。左右逆の欠陥リーフレットはどうしたかと言うと、京都に送ってきた分は、知り合いやお客さんに差し上げてしまった。高知で上映活動をやっている岡本さんと京都大学で映画論を教えている先生がみんなに配ってくれると言うので、それぞれ200部ずつ持って行った。新文芸坐の分は、印刷会社が引き取って処分したと思う。
「錦之助映画祭り2010」のリーフレット(チラシ)が18日の月曜に出来るので、印刷所からその日に新文芸坐へ約1万部を納品し、そのうち500部を私のいるT・ジョイ京都へ新文芸坐から宅急便で送ってもらうことにしていた。リーフレットを錦之助映画ファンの会員と関係者へ京都から発送しよう思い、私は京都へ行く前の日に宛名シールと同封物をコピーし、用意を整えていた。茶封筒は手荷物に入れるとかさばるので、京都の100円ショップで大量に買った。19日の火曜にはリーフレットが京都に届くはずなので、宿泊していたホテルで封筒に宛名シールを貼り、ウラにファンの会のゴム印を押し、さあ、後はリーフレットを入れて封詰めするだけという状態で待っていた。それが、新文芸座のスタッフから宅急便を月曜に出すのを忘れたという電話が入った。一日遅れるが、その時は仕方がないと思った。
20日の水曜の昼過ぎにようやくリーフレット500部の包みがT・ジョイ京都に届いた。早速T・ジョイのロビーの片隅に出してもらった机で封詰めをしようと、包みを開け、出来具合を見ようとリーフレットを手にした瞬間、唖然とした。
錦ちゃんの顔(片目がまだ潰れていない独眼竜政宗)のある表紙と時間表のあるウラ表紙が左右逆になっているではないか!折りが右側に来てしまい、表紙を左から右に開ける形になっている。中のページが縦書きならいいのだが、リーフレットの文章は横書きなので、これではまずい。一番最初のいわゆる面付けを間違えている。印刷会社としてはごく初歩的な、あり得ないミスである。
「怒り心頭に発する」という表現があるが、その時の私はまさにそうした状態だった。私が仕事を頼んでいる印刷会社の若い担当者が不注意だったためだ。
すぐにその担当者へ電話して、刷り直しを命じた。彼の顔は見えなかったが、きっと顔面蒼白だったにちがいない。これは完全に印刷会社のミスだから、12000部、翌日の夕方までに刷り直すことになった。もちろん、費用はあちら持ちだ。
次に新文芸坐に電話を入れた。新文芸坐のスタッフにも私は腹が立った。月曜日にリーフレットが届いた時に、表紙と折りの位置がおかしいことに誰か気付きそうなものだ。私に電話をして来た時に、それに気付いて教えてくれれば、もっと早く手が打てただろうし、すでに都内の映画館に送ったリーフレットを回収しなくてすんだはずである。要するに、私が苦労して作ったリーフレットをスタッフが誰もしっかり見ていないということなのだ。電話をするとスタッフの中でも若手のGさんが出た。彼の言い分がふるっていた。というよりも、私はあきれてしまった。
「ちょっとおかしいとは思いましたが、そういうチラシもよくあるんで……」
面付けを間違えていても、刷り直しをしないで、そのまま配ってしまうらしいのだ。
「それで、都内の映画館には全部でどのくらい送っちゃんたんだ?」と私。
「いや、まだ送っていなくて、今日の夕方送ることになっているんです。今のところ館内に置いているだけです」
私はそれでなくても腹が立っているのに、新文芸坐のスタッフのていたらくに対し、火に油を注がれたように激怒した。リーフレットをできるだけ早く配布しようと徹夜をして急いで作ったのに、そして月曜の午前中には新文芸坐へ届くように手配したのに、何たることか!実はGさんが責任者ではないので、チーフの矢田さんを電話に出すようにと言った。矢田さんは遅番なので、まだ出勤していないとのこと。
「ともかく、明日の夕方、刷り直しがそちらに届くので、前のやつは映画館へは送らないように。それから私の分は、もう京都へ送らなくてもいいから」と私はGさんに指示を出した。
しばらくして、チーフの矢田さんから電話が来た。彼は謝りもせず、言い訳ばかりして、責任を人に押し付けるので、「バカヤロー!」と怒鳴りつけて電話を切った。
ロビーに円尾さんが来たので、事情を話すと、彼は結構冷静で、
「いちばん悪いのは印刷会社ですよ。新文芸坐のスタッフはみんな忙しいんだから、しょうがないですね」と言う。まだほかの映画館へ発送していないのは、不幸中の幸いだった、みたいな言い方をする。確かに円尾さんの言う通りかもしれない。
後で、円尾さんに聞くと、私が怒鳴って電話を切った後に、新文芸坐の矢田さんから彼の携帯に電話がかかって来たそうだ。
「Fさん(私のこと)は今、頭に血が上っているから、一日置いて明日にでも電話をかけ直したほうがいいですよ、と矢田さんに言っておきました」と彼。
翌日の夕方、矢田さんから電話があったが、私は映画を観ている最中だったので、電話に出られなかった。
留守電を聞くと、「刷り直しが先ほど届き、発送も済ませましたので、ご心配なく」とのメッセージ。
長々と書いたが、錦之助映画ファンの会の会員のみなさんに「錦之助映画祭り2010」のリーフレットが届くのが一週間も遅れてしまった顛末である。結局、リーフレットは京都から発送できず、かさばる封筒一式を東京へ持ち帰り、23日の土曜の午後に封詰めを終え、発送した次第。左右逆の欠陥リーフレットはどうしたかと言うと、京都に送ってきた分は、知り合いやお客さんに差し上げてしまった。高知で上映活動をやっている岡本さんと京都大学で映画論を教えている先生がみんなに配ってくれると言うので、それぞれ200部ずつ持って行った。新文芸坐の分は、印刷会社が引き取って処分したと思う。