錦之助ざんまい

時代劇のスーパースター中村錦之助(萬屋錦之介)の出演した映画について、感想や監督・共演者のことなどを書いていきます。

吐夢監督のお墓参り

2010-06-12 13:08:10 | 監督、スタッフ、共演者
 昨日は、女優の風見章子さんと内田吐夢監督のお墓参りに行ってきた。
 先週風見さんと電話でお話した時(これが風見さんとお話する初めての時で、お目にかかったこともなかった)、風見さんが、
「内田先生のお墓へもずいぶん長い間行っていませんので、ちょうどお参りに行こうと思っていたところなんですよ」
「そうですか。ぼくも行こうと思ってました。良かったらごいっしょにどうですか」
 じゃあ、そうしましょうということで、すぐに話が決まった。
 吐夢監督のお墓は、明大前の築地本願寺和田堀廟所にある。甲州街道に面していて、明大和泉校舎の隣り。私の家の近くである。ここには、有名人の墓がたくさんあるが、中に入るのは今度が初めて。吐夢監督のお墓参りももちろん初めてだ。
 風見さんは、川崎の柿生に住んでいらっしゃるのだが、足を悪くしていると聞いていたので、私の自家用車でお迎えにあがることにした。
 11時半に風見さんの住んでいるマンションに着いて、それからまた明大前に引き返す。
 風見さんは、後部座席にすわり(助手席はお好きでないらしい)、いろいろなことをお話になる。昨年風見さんが出した本のこと、はがき絵のこと、吐夢監督のこと、映画『土』のこと、もちろん私の質問に答えて、錦之助さんのことも。
「錦ちゃんは、すばらしい役者さんでしたね。役に入り込んでしまうのね、私、そこにいるのが錦之助さんなのか武蔵なのか判らなくなるほどでした。それにとても純なところがあって、私が何かのことでお褒めしたら、耳たぶが真っ赤になったの……」
 風見さんは現在88歳で、7月23日には89歳になられるのだが、10歳以上は若く見える。頭もはっきりしていて、とても私の母親(現在90歳で存命だが、ボケてしまった)と同年齢とは思えない。ゆっくりとした話し方だが、ユーモアを交え、次から次へと途切れることなく話題を変えていく。私は、前方不注意にならぬよう、風見さんの楽しい話に耳を傾け、相槌を打ったり、質問をはさんだりしていた。
 さて、一時間ちょっとで、和田堀廟所に到着。入り口の花屋さんで、お花とお線香を買い、事務所で吐夢監督のお墓の場所を尋ねる。内田有作さんからもだいたいの場所は聞いていたのだが、なかなかお墓が見つからない。風見さんは何年か前にいらしたそうだが、廟所の建物も墓地の様子もずいぶん変わってしまったそうだ。
 20分くらい探しただろうか。やっと見つかったので、ほっとする。
 風見さんと私で黙祷。
 泉下の吐夢さんに、私の自己紹介、上映会のことなど報告して、よろしくお願いしますと手を合せる。墓碑の廻りをちょっと掃除して、風見さんの持参した缶ビールを墓碑にかけ、お花とお線香を置く。風見さんはすっきりした表情で、ニコニコしている。
 墓碑は、碧川家・内田家の連記になっている。これは吐夢さんが妻の芳子さん(キャメラマンの碧川道夫氏の妹)のご両親(碧川企救男・かた夫妻)を実の父母のように慕っていて、自分が亡くなったら碧川家の墓に入れてくれと希望していたので、それを実現したのだそうだ。この墓碑の横に、長細い碑が立っていて、そこに吐夢の言葉、「命一コマ 吐夢」が刻んである。そのまた横に、四角い碑があって、「赤とんぼの母 此処にねむる 露風」とある。これは唱歌「赤とんぼ」の作詞で有名な詩人三木露風の言葉で、露風は、碧川道夫・内田芳子兄妹の異父兄にあたる。母親のかたは、婦人運動家で、幼い露風を残して三木家を離縁された後、新聞記者の碧川企救男と再婚した。「赤とんぼ」は、露風が、去って行った母親を慕って作った詩である。
 お墓参りを終え、車で和田堀廟所を出た時には、すでに午後3時になっていた。
 お腹が空いたので、井の頭通りにあるレストラン(神戸屋)へ寄って、遅い昼食をとる。風見さんはパッフェと紅茶。私はカレーライスとコーヒーをご馳走になる。
 また、車で柿生まで風見さんをお送りする。帰り道もずっと歓談。
 別れ際に風見さんが、
「きょうは内田先生のお墓参りも出来たし、ほんとに良い一日でした。ドライブもとても楽しかったわ、ありがとう」
 
 風見さんから署名入りのご本をいただいた。タイトルは「風見章子の思い出を、あげて、もらって」(平成21年8月1日発行、栄光出版社刊)。
 中を見ると、風見さん直筆のはがき絵(虎の墨絵)がはさんであり、筆で私の名前も書いてある。風見さんは、前もって用意しておいてくださったのだ。感謝感激。
 仕事場に帰って、早速拝読。芸能界入りの経緯やいろいろな人たちとの楽しい思い出が語られている(でも、内容の四分の一くらいは車の中でお聞きしたことだった……)。風見さんのはがき絵も数多く掲載され、とても良い本である。



<追記> 風見章子さんは、8月4日、新文芸坐の吐夢特集で『土』を上映する時にトーク・ゲストとしていらっしゃる。聞き手は、内田有作さん。吐夢特集のために、風見さんには、あらかじめ吐夢監督の似顔絵(色紙サイズ)を描いていただき、会場に展示することになった。はがき絵も吐夢監督にちなんだものを三種類描いていただき、私が印刷してお客さんに配布しようと思っている。風見さんのこの本も会場で販売予定。


内田吐夢回顧上映(その2)

2010-06-08 03:16:36 | 錦之助ファン、雑記
 日程と上映作品とトーク・ゲストがほぼ決まった。
 日程:8月4日(水)~11日(水)の8日間
 会場:東京池袋・新文芸坐

 8月4日(水)
「限りなき前進」(日活多摩川1936年)78分
  出演:小杉勇、轟夕起子、滝花久子、江川宇礼雄、片山明彦
「土」(日活多摩川1939年)117分
  出演:小杉勇、風見章子、山本嘉一、村田知英子
*トークショー 風見章子さん、韓昌祐さん、内田有作さん

 8月5日(木)
「血槍富士」(東映京都1955年)94分
 出演:片岡千恵蔵、加東大介、喜多川千鶴、月形龍之介
「どたんば」(東映東京1957年)109分
  出演:江原真二郎、中村雅子、波島進、岡田英次、志村喬
*トークショー 尾形伸之介さん

8月6日(金)
「酒と女と槍」(東映京都1960年)99分
  出演:大友柳太朗、淡島千景、花園ひろみ、片岡千恵蔵
「大菩薩峠」(東映京都1957年)119分
  出演:片岡千恵蔵、中村錦之助、長谷川裕見子、丘さとみ、月形龍之介
*トークショー (出演女優を交渉中)

8月7日(土)
「黒田騒動」(東映京都1956年)108分
  出演:片岡千恵蔵、大友柳太朗、高千穂ひづる、南原伸二
「暴れん坊街道」(東映京都1957年)95分
  出演:佐野周二、山田五十鈴、千原しのぶ、植木基晴
*トークショー 高千穂ひづるさん

8月8日(日)
「森と湖のまつり」(東映東京1958年)113分
  出演:高倉健、三國連太郎、香川京子、有馬稲子
「浪花の恋の物語」(東映京都1959年)105分
  出演:中村錦之助、有馬稲子、千秋実、田中絹代
*トークショー 有馬稲子さん
夜の部は、澤登翠さんの活弁公演
「人生劇場」(日活多摩川1936年)47分の短縮版
  出演:小杉勇、山本礼三郎、村田知栄子
「警察官」(新興キネマ1933年)121分
  出演:小杉勇、中野英治、森静子

8月9日(月)※夜は落語会のため5時ごろ終了
「たそがれ酒場」(新東宝1955年)94分
  出演:小杉勇、津島恵子、野添ひとみ、丹波哲郎
「花の吉原百人斬り」(東映京都1960年)109分
  出演:片岡千恵蔵、水谷良重、木村功、千秋実
*トークショー 水谷八重子さん 16:30~

8月10日(火)
「大菩薩峠・第二部」(東映京都1958年)105分
  出演:片岡千恵蔵、中村錦之助、丘さとみ、東千代之介、月形龍之介
「宮本武蔵」(東映京都1961年)110分
  出演:中村錦之助、木村功、入江若葉、丘さとみ、風見章子、三國連太郎
*トークショー 入江若葉さん

8月11日(水)
「飢餓海峡」(東映東京1965年)183分(全長版)
  出演:三國連太郎、左幸子、高倉健、伴淳三郎
*トークショー (出演俳優を交渉中)


 前々回お名前を挙げた「吐夢没後40年回顧上映を支援する会」に新たに以下の方々が加わった。
 水谷八重子さん、風見章子さん、高倉健さん
 小杉修造さん(近代映画社・社長)
*水谷八重子さんと高倉健さんは、専属事務所を通じて、ご本人に上映会の趣意書をお読みいただき、賛同を得た。風見さんと小杉さんとは、私が直接お話しし、快諾をいただいた。



錦之助映画ファンの会の集い

2010-06-02 23:22:58 | 錦之助ファン、雑記
 もう6月になってしまった。東京ではこの三、四日、初夏らしい天気が続いている。
 先月29日の土曜と30日の日曜に錦之助映画ファンの会の集いを催した。土曜は午後6時半から、日曜は午前9時半から、東京新橋のTCC試写室で16ミリの映画を2本ずつ上映して、みんなで楽しく鑑賞した。土曜は35名、日曜は41名が参加。そのうち二日とも参加した人が28名だった。TCC試写室は座席数38名なので、日曜は満員で補助イスを出したほど。
 土曜の夜、ホテルに一泊して参加した会員も何人か居た。福岡県から2名、山口県、香川県、大阪府、京都府、静岡県、長野県から1名ずつが参加した。皆さん、熱烈な錦ちゃんファンである。
 土曜の夜は上映会の後、近くの飲み屋で小宴会を開き、前夜祭を祝った。15名ほどで、11時過ぎまで歓談。
 日曜は、上映会の後、銀座並木通りにある欧風レストラン「いちこし」でパーティを開いた。37名が参加。新橋の試写室からレストランまで歩いて3分ほどだが、みんなでぞろぞろ移動した。はた目には異様な集団に見えたことだろう。平均年齢65歳、ほとんどが初老の女性である。でも、その日は日曜、新橋寄りの銀座のこのあたりは人気(ひとけ)が少ないので、目立たなくて良かった。
 パーティには特別に入江若葉さんをお招きした。レストランに到着すると、すでに若葉さんが見えていた。黒いシックな服を着て、ヘアーメイクし、美しいお顔に、しゃれた眼鏡をかけている。いかにも銀座にぴったりの上品なお姿。若葉さんはお若い!みんなにはゲストのことを隠しておいたので、入り口のところに立っているこの麗人を見て、何人かの会員は誰だか分からず、私の方へ寄って来て、尋ねる始末。
「お通さんですよ」と言うと、驚きの歓声を上げる。中には図々しい会員もいて、すぐに若葉さんのそばへ行って、サインをねだる。写真を撮っている者もいる。会員のミーハーぶりも、困ったものだ。若葉さんは本当にいい人だから、ニコニコしながら何でもオーケーなさっている。
 レストランは貸切りで、パーティは午後4時まで続いた。マイクもあり、途中で全員に簡単な自己紹介をしていただいた。各人、錦ちゃんファンらしい熱意に満ちたスピーチで、拍手喝采。大いに盛り上る。料理はバイキングで、サンドイッチ、マリネ、から揚げ、ドリアが出て、ビールとウーロン茶は飲み放題。これで3500円。本当は最低4000円からなのを500円負けてもらったので、いささか量が少なかった。不満の声も耳に入ったが、銀座のど真ん中にある奇麗なレストランを借りて、この値段は仕方がない。日曜は休業日なのに、無理に頼んで開けてもらったのだ。幹事の苦労など、分かっちゃくれない!
 さて、錦之助映画ファンの会の総会も無事に終わり、今私はほっとしている。この日のために、第二期の収支中間報告書を作成し、挨拶状といっしょにコピーをみなさんに配った。年会費、カンパも集まった。今回参加できなかった会員には、振り込んでいただいた年会費の受領証と収支中間報告書を近日中に郵送したいと思う。しばらくお待ち願いたい。