錦之助ざんまい

時代劇のスーパースター中村錦之助(萬屋錦之介)の出演した映画について、感想や監督・共演者のことなどを書いていきます。

ざ☆よろきん「纏若衆~木遣り唄~」7日目

2012-07-11 00:04:39 | 錦之助ファン、雑記
 島英津夫さんの萬屋錦之助一座のことが気になり、今日また池袋のシアターグリーンへ行ってきた。初日からちょうど1週間、今日の昼の部までに12回の舞台が終っている。初日はお客さんが50人ほど入ってまずまずだったが、その後どうだったのだろう?連日客の入りが悪くて、島さんが頭を抱えていたらどうしよう?なんて心配になったのだった。
 夕方6時半前に劇場に着く。入口の前の喫煙所で一服しようとすると、ちょうど島さんが中から出て来たので、声を掛ける。顔を見合わせると、なんだかニコニコしている。
「どう?」
「お蔭様で、思った以上にいい感じで……」
 その一言を聞いてほっとする。
「良かったじゃない!」
 島さん、ニコニコどころか、多少興奮気味で、結果報告。
「金土日とお客さんが結構入りましてね。で、きのうなんか平日の月曜じゃないですか。ガクッと減ると思ったら、それが昼夜の二回とも満員だったんですよ。なぜだか分んないですけど、もう驚いちゃって」
「ほー!きっと口コミで広がったんじゃない」
「そうでしょうかね。今日の昼の部はさすがに少なかったですけど」
「いやァ、そろそろ客の入りが悪くなるんじゃないかと思ってさ、心配になってまた観に来たんですよ」
「ありがとうございます。こないだなんか、終わりに挨拶したら、年配の方から『萬屋!』って声が掛かって、嬉しかった。鳥肌が立っちゃいました」
 島さん、初日の後私がここに書いたこともちゃんとチェックしていて、お礼を言われる。及ばずながら少しは私も力になれたのかもしれない。
 島さんから脚本演出の柿ノ木タケヲさんを紹介され、少し話す。柿ノ木さんは日大芸術学部演劇科の出身で、「ゲキバカ」という劇団を主宰しているとのこと。年齢は知らないが、多分30歳代の若い人である。「笑える芝居が書けるっていうのは大したもんですよ」と私が言うと、嬉しそうにしていた。
 
 ホールに入場して、今日の夜の部はどうなんだろうと思って見ていると、お客さんがゾロゾロ入って来て、いつの間にか満員ではないか。最後列に急遽イスまで出している。当日券を買って入場するお客さんが私を含め十数人いたのだろう。
 開演前に島さんから女優の芦田由夏さんを紹介される。由夏さんは名優芦田伸介さんのお孫さんで、俳優松山英太郎さんのお嬢さんである。松山英太郎さんは錦之助さんとも縁が深く、テレビや舞台で共演したが、若くして(四十代半ば)亡くなった方である。由夏さんは島さんの応援に駆けつけたとのこと。

 さて、「纏若衆~木遣り唄~」をもう一度観た感想。
 初日よりずっと良くなっていた。ところどころ工夫を加えていたし、スピーディになっていた。出演者の緊張も解け、セリフもスムーズに口をついて出るようになり、動作もしっかり身に付いて、テンポも良くなったのだろう。
 なにしろ出演者がみんな上達しているのには驚いた。初日の感想で、まだ目が泳いでいる人がいると書いたが、今日観た限り、そんな人はいなかった。
 とくに主役の木村延生くんが数段良くなっていた。きっと吹っ切れたのだろう。このくらいのオーバーアクションでいいのだ。初日はちょっと自信のなさが垣間見えたが、場数を踏んで自信が出て来たようだ。実は主役の木村くんのことを私は一番心配していた。初日は多分稽古疲れと緊張からだろうか、顔色も冴えず、このまま16公演も持つのだろうか、途中で倒れなければいいが、と思っていた。が、今日観て、そんな心配はなくなった。テンションの高さを保ち続けているし、みんなを引っ張っている感じになっていた。
 ヒロインの梅本静香さんもずっとうまくなっていた。顔の向きも直っていたし、セリフも動作も自然になり、何よりも楽しそうに演じているのが良かった。
 出演者全体のレベルが上ったためか、芝居にまとまりが生れてきたと感じた。
 あと2日、残すは3公演だが、みんなこの調子でがんばってほしい。


 

萬屋錦之助一座 ざ☆よろきん「纏若衆~木遣り唄~」初日を観る

2012-07-05 05:25:08 | 錦之助ファン、雑記
 面白かった。
 どんなことを演るのかまったく知らないまま観て感じた感想である。
 私はお世辞は言わない主義で、つまらない映画や芝居のことは書かないようにしているが、この芝居には大変好感が持てた。
 まず、最後まで飽きずに楽しく観ることができた。役者のセリフも一言一言ちゃんと聴ききながら、イスの座り心地の悪さも感じることなく、途中でタバコを吸いたくなることもなく、芝居を最後まで観たということは、映画好きの私としては珍しく、近年久しくないことだった。
 歌舞伎でも現代劇でも、劇場の大小は問わず、芝居を観ていると途中でうんざりして、どうしても抜け出したくなってしまう。が、途中で退席することはなかなか困難で、我慢してそこに居なければならない。これがつらい。30分も経たないうちに、監禁されているような不自由さを味わうことがほとんどなのだ。最近観た芝居はそんなものばかりで、例外はイッセー尾形さんの一人芝居だけ。
 映画の場合だと、三本立てを続けて観てもそういうことは感じないし、つまらなければ途中で出るか、安眠すればよい。が、芝居だとそうはいかない。料金が高いので観なきゃ損だという負い目を感じる上、招待されて無料で観る場合も義理があって退席できないし、音や声がでかくて、なかなか眠れない。
 芝居、とくに初めて観る芝居は、役者のセリフ(実は脚本のセリフ)を注意して聴かなければならない。役者の動作も観なければならないが、セリフの方が圧倒的に重要である。セリフを聴くのを放棄すると話の筋も内容も分らなくなってしまう。映画は逆で、画面を観ていればなんとかストーリーが分るように作られているので、私のように映画慣れした者は、セリフの多い芝居は苦手なのだ。とくに脚本家が登場人物に独善的な説明セリフや観念的セリフをたくさん言わせる芝居は苦痛である。
 
 さて、「纏若衆~木遣り唄~」、タイトルがちょっと若い人には分りづらく、「まとい」も「わかしゅ」も「きやりうた」も古めかしく意味不明なのではあるまいかと思った。むしろ、平成時代劇「火消しダメ男 恋の後始末」くらいの感じで良かったかもしれない。そんな内容だった。
 時は元禄、所は江戸。零落した武家の長男(主人公)が鳶職になった。父は亡く、母と妹がいるだけだが、この男、臆病者で火消しにはまるで向いていない。子供の頃から剣術もダメ、ただ算術だけは得意で、建物の設計図なんかを描いている。ある日、この家に、幼馴染で相思相愛だった女の子(ヒロイン)が貧乏して奉公にやって来る。が、男は思っていることを素直に言えない性格で、いつも逆に嫌がらせを口走り、女の子を悲しませてしまう。妹も鳶職の仲間(辰組)も男の恋心は分っていて、男をけしかけるのだが、うまく行かない。この妹が変った子で、発明家の平賀源内に入門し、消火器やエレキテルなんかの試作品を作って、兄の仕事に役立てたいと思っている。そんな時、盗賊で放火魔の二人組が現れ、江戸の町を騒がす。この二人、ホモ関係で、旅芸人の女形と土方あがりの不良である。そして、この二人が、評判のエレキテルの試作品に目をつけ、ヒロインを誘拐して、鳶職たちとの対決となり、最後に臆病者の主人公が乗り出して、惚れたヒロインを救い出し、プロポーズする。ヒロインと盗賊の不良との関係、これは伏せておく。ざっと言うと、こんなストーリーだった。
 狂言回しの役で、瓦版売りの女が時々出て来るのだが、これが筋の運びを円滑にして良かった。全体的に話も平明で難しくなく、ところどころに奇抜なアイディアもあり、時代劇を現代風にアレンジした小気味良いエンターテイメントになっていたと思う。脚本・演出の柿ノ木タケヲという方のことはまったく知らないが、面白い軽喜劇が書ける人だと思った。客を笑わせる芝居を書き、またその演出をすることほど難しいものはない。それに、若い人だけでなく、私みたいな年配の気むずかし屋を笑わせるとは、たいしたもんだと感心した。
 登場人物では、瓦版売りの女、主人公の妹、盗賊の女形、この三人の脇役の設定が良く、また演じた役者さん(佐々木三枝、川本まゆ、阿部直生)も個性的で目立った。主役(木村延生)をはじめみんな熱演で良かったと思うが、まだまだ目が泳いでいる人が多く、もっと自信をもって、客を見据えるくらいのつもりで演じてもらいたい。とくにヒロインの女の子(梅本静香)は舞台初出演らしいが、顔をもっと客席に向けないないといけません。まあ、初日だから仕方がないと思うが、堂々と演じること、これが課題ではあるまいか。

 池袋のシアターグリーンのBase Theater(3ホールあるうちの一つ)は、収容数70名の小劇場だが、観やすかった。初日なので客の入りも良く、50名ほどだった。これからあと15公演もあるそうで(楽日前までは7日間昼夜二回が続く)、観客動員が大変だと思うが、たとえ客の入りが少なくとも、がんばってもらいたいと思う。今回が旗揚公演なのだから、これからお客さんをどんどん増やしていくつもりで、面白い出し物を続演していけばよい。萬屋錦之助一座が末広がりになっていくことを願っている。
 座長の島英津夫さんは今回は出演せず、終わりに挨拶しただけだったが、次回は出演するそうである。

 

島英津夫さんの「ざ☆よろきん」旗揚公演

2012-07-01 20:45:13 | 錦之助ファン、雑記



 錦之助さんの息子の島英津夫さんが、7月4日(水)から池袋のシアターグリーンで平成時代劇「萬屋錦之助一座 ざ☆よろきん」の旗揚公演を行なうので、お知らせしておきたい。
「萬屋錦之介一座」では畏れ多いということで、「萬屋錦之助一座」である。旅回りの一座のように、「介」の字を「助」に変えている。が、「萬屋錦之助」という表記もたまに印刷物などで見かけるが、あの萬屋錦之介を指すとするなら、もちろん間違いだ。
 島英津夫さんの場合、血は繋がっていないが、今でも親父と慕う萬屋錦之介の衣鉢を継いでいるといった自負もあるし、その偉業を後世に伝えたいという煮えたぎるほどの熱情もある。
 島さんとは、池袋で二度お会いし、飲みながら延々数時間お話したことがある。その自負も熱情もひしひしと伝わって来て、私もできるだけのことは協力したいと申し出たのだった。今のところ、このチラシを配ることくらしかできないが、新文芸坐やラピュタ阿佐ヶ谷に置かせてもらったり、知人に手渡したりしている。初日と中日と楽日には観に行こうと思っている。
 さて、今回の出し物は「纏若衆~木遣り唄~」である。江戸の火消しの纏物らしい。台本を読んだわけでもないし、稽古を観たわけでもないので、内容はよく分らないが、時代劇を現代風にアレンジした芝居らしい。出演者も平均年齢三十歳未満のようだ。座長の島さんだけが五十歳をわずかに越えている。
 
 チラシの裏面に島さんの決意表明が書いてあるので、引用しておく。
 
弟が死んだ。
萬屋錦之介の血を引く、二人の弟が死んだ。
何の因果か親子となり、兄弟となる事は過去遠々劫の善因。
面影目に浮かび、思い出雲の如く湧き、感慨一入深し。
追善なんて柄でもないが、これが俺の役年か…
根深ければ枝葉枯れず、源に水あれば流れ涸れず。
湧水の如きこの小さな源流が、やがて貴方の様な大海へ注ぐ様、
心の向くまま、足の向くまま、あても果てしもねぇ旅へ立つのだ。
愛する人達へ!!!
平成の世に贈る、人情時代劇エンターテイメント。
萬屋錦之助一座 「ざ☆よろきん」
旗揚げします。
                         座長 島英津夫


ざ☆よろきん
旗揚公演「纏若衆~木遣り唄~」
原案:朝比奈 文邃
座長:島英津夫
脚本・演出:柿ノ木タケヲ(ゲキバカ)
シアターグリーン BASE THEATER
2012年7月4日(水)~12日(木)
キャスト
座員 木村延生、帖佐寛徳、中川敏伸、花渕雅浩、伊藤亜斗武、佐々木三枝、塚田まい子
客演 梅本静香、川本まゆ、阿部直生 / 桐山京

●公演日程 2012年7月4日(水)~7月12日(木) 全16公演
7月 4日(水) 19:00
7月 5日(木) 14:00 19:00
7月 6日(金) 14:00 19:00
7月 7日(土) 13:00 18:00
7月 8日(日) 13:00 18:00
7月 9日(月) 14:00 19:00
7月10日(火) 14:00 19:00
7月11日(水) 14:00 19:00
7月12日(木) 14:00

●チケット チケット料金

[全席指定・税込] 前売り4,000円 /当日4,200円 /学生割引(前売・ 当日共) 3,800円

[チケット取扱い] ローソンチケット 0570-084-003(Lコード: 34995)
[問い合せ]アリー・エンターエイメント TEL 03-3983-0644
  公式HP http://yorokin.com
  



ラピュタ阿佐ヶ谷の桜町弘子トークショー(その2)

2012-07-01 18:51:17 | 監督、スタッフ、共演者
 桜町弘子さんは伊豆半島の南端下田の生まれ。ご両親は旅館をやっていた。県立の女子高の三年生の時に、写真コンテストに入賞、続いて「ミス丹後ちりめん」の東海地区代表に選ばれ、全国大会で準優勝した。下田では評判のお嬢さんだったようだ。
 ちょうどその頃、東映作品『剣豪二刀流』(原作「それからの武蔵」、武蔵=片岡千恵蔵、小次郎=東千代之介)のロケハンで松田定次監督一行が巌流島を探しに下田を訪れた。そして、たまたま桜町さんの評判を聞いて、会ってみようということになり、実家の旅館にやって来た。
 桜町さん、「旅館の囲炉裏端に坐って、わたしをジロジロ見て。みなさん、なんだか人相が悪くて、ギャングみたいだった」と。結局、巌流島のロケ地に下田は使わなかったが、桜町さんはスカウトされ、東映の第三期ニューフェイスに選ばれる。同期は大川恵子さん、里見浩太郎さん。
 初めの芸名は、松原千浪だったが、勝浦千浪さんという似たような名前の女優さんが居たので、デビュー後3作目で、桜町弘子に改名した。
「知らないうちに勝手に名前変えられちゃったの」とのこと。
 デビューしたての頃、共演の大川橋蔵さんが、付き人を通じて、桜町さんに「口の周りに産毛が生えてるけど、剃ってくれないか」と言ってきたそうだ。それから「鼻毛も出てるよ」と。「田舎出の娘だったので、お化粧なんかしたことなかったのね」と、桜町さん、楽しそうに話してくれた。
 錦ちゃんとの共演では、『おしどり駕篭』(1957年 マキノ雅弘監督)で、妹のお姫様役の桜町さんが、扇子を開いて投げるシーンがあるのだが、それがうまく出来なかった。あとで錦ちゃんにずいぶんからかわれたそうだ。
 『隠密七生記』(1958年 松田定次監督)では、錦ちゃんに抱かれて死ぬシーンでNGの連続。「わたし、緊張しちゃって、何度やっても出来なくて。そばで山形勲さんと原健策さんがずっと出られないまま待ってるの。もう悪くってね。錦ちゃんもわたしを抱いたまま、『重いよー』って……」
 桜町さんの話では、錦ちゃんとやっていると、「なんか威圧感を感じるの」だそうな。
 『反逆兒』では、花売り娘で登場し、舟を漕ぎながら歌を唄うが、「あの歌は吹き替えじゃなく、わたしが唄ったのよ、下手だけど」と。「今でも覚えてますか」と私が水を向けると、桜町さん、急に立ち上がって、唄い出したので、みんなビックリ。
 伊藤大輔監督のことは、「とっても恐い先生でした。古武士みたいにいつも杖をついていらして、わたしの方へ杖を向けて、『そこの女!』なんておっしゃるの」
 まだまだ桜町さんの話は続き、あと一時間はトークが出来たような感じだった。
 打ち合わせの時、「わたし、あなたの質問にイエスとノーとしか言わないかもしれないわよ」なんておっしゃっていたが、全然ウソ。後ろで、支配人の石井さんが、「あと5分」の合図をしていたが、ギリギリの1時近くまでトークショーを続けさせていただいた。
 トークの後は、一階のロビーに移動してサイン会。写真もオーケーで、私は助手兼キャメラマンになって、お手伝いした。
 
 
(ラピュタ阿佐ヶ谷ロビーにて。サイン会終了後)

 桜町弘子さん、ありがとうございました。