Dr.エイブラハム・ジェイコムズの独白、アイリーン・キャンベルの懺悔に続いてお読みください。
ブライアンの述懐
私の名前はブライアンといいます。
私の生みの親はDr.エイブラハム・ジェイコムズなので、ブライアン・ジェイコムズと名乗ってもいいのかもしれません。
生みの親といってももちろん私とDrの間に何らかの遺伝子上の繋がりがあるわけではありません。
何といっても私はウサギなのですから。
けれど私という存在が今この世に存在しているのは間違いなくDrのおかげなのです。
私の生みの親はDr.エイブラハム・ジェイコムズであると言ってよいと思います。
Dr.エイブラハム・ジェイコムズは紛う事なき天才です。生体コンピューターの分野においては他の研究者の追随を許さないほど優秀な学者です。
けれど、Drはそれほどの天才であるにもかかわらず、いえ、天才であるがゆえに凡人であれば知っていて当然の常識を知らず、考えて当然の問題を考えず、理解して当然の事柄を理解しません。
私が良い例です。
Drはウサギに人並みの知能を与えては何かしら倫理的な問題があるかもしれないとは考えないのです。
Drが知らないことは他にもあります。
Drは私がニンジンが大の好物だと思っているようですが、私は実はそれほどニンジンが好きではありません。
もちろん私もウサギですから、決してニンジンが嫌いというわけではないのですが、さすがに毎日食べ続けていると飽きてきます。
Drが毎日飽きずに食べているヌードルの方がよっぽど美味しそうに見えます。
でも私はそのことをDrに言い出せませんでした。
私がニンジンを食べているのを満足そうに眺めているDrに、ニンジン以外のものも食べたいです、とはどうしても言えなかったのです。
Drは孤独な人です。
孤独でなければウサギ相手にチェスをしようなどとは思わないでしょう。
Drの流儀を一言で言えば、勝つためには手段を選ばない、ということになるでしょうか。
そういった流儀がときに相手プレイヤーのプライドを甚く傷つける、ということがDrにはわからないのです。
長年その流儀でチェスを続けてきたために、今では私を除いてDrにはチェス仲間はいなくなってしまいました。
何だかDrの悪口ばかり言っているようですが、Drは本当は良い人なのです。
アイリーンは私がDrから虐待を受けていたのではないかと思っているようですが、とんでもありません。
よく晴れた日曜日に郊外の公園へ連れて行ってもらったことがあります。
はしゃぎすぎた私はDrとはぐれてしまいました。
Drの姿を必死に探す私の前に黒くて大きな犬が現れました。
その犬は恐らく先祖が狩猟犬だったのでしょう、本能的に私に襲い掛かってきました。
恐怖のあまり身がすくんで動けない私を助けてくれたのはやはりDrでした。
Drは必死の形相でその犬を追い払ってくれたのです。
自分自身が襲われることも顧みずに…。
私は私の生みの親であり、命の恩人であるDr.エイブラハム・ジェイコムズのことを心から尊敬しています。
Drと一緒に暮らせてとても幸せでした。
でも少しだけ、本当にほんの少しだけですが、私はDrを恨んでもいるのです。
もし私が普通のウサギだったら、こんなにもいろいろなことで悩んだり、苦しんだりせずに済んだかもしれないと思うのです。
それがつらくて私はDrの元を去ることにしました。
でもやっぱり何も言わずに出てきたのは良くないことでした。
一言、挨拶をしてから出るべきでした。
だから、一度Drの元に戻ろうと思います。
戻って感謝の言葉と別れの言葉をきちんと伝えたいのです。
ウサギだから礼儀知らずなのだ、とは思われたくないですから。
Dr.エイブラハム・ジェイコムズの謝罪へ続く
ブライアンの述懐
私の名前はブライアンといいます。
私の生みの親はDr.エイブラハム・ジェイコムズなので、ブライアン・ジェイコムズと名乗ってもいいのかもしれません。
生みの親といってももちろん私とDrの間に何らかの遺伝子上の繋がりがあるわけではありません。
何といっても私はウサギなのですから。
けれど私という存在が今この世に存在しているのは間違いなくDrのおかげなのです。
私の生みの親はDr.エイブラハム・ジェイコムズであると言ってよいと思います。
Dr.エイブラハム・ジェイコムズは紛う事なき天才です。生体コンピューターの分野においては他の研究者の追随を許さないほど優秀な学者です。
けれど、Drはそれほどの天才であるにもかかわらず、いえ、天才であるがゆえに凡人であれば知っていて当然の常識を知らず、考えて当然の問題を考えず、理解して当然の事柄を理解しません。
私が良い例です。
Drはウサギに人並みの知能を与えては何かしら倫理的な問題があるかもしれないとは考えないのです。
Drが知らないことは他にもあります。
Drは私がニンジンが大の好物だと思っているようですが、私は実はそれほどニンジンが好きではありません。
もちろん私もウサギですから、決してニンジンが嫌いというわけではないのですが、さすがに毎日食べ続けていると飽きてきます。
Drが毎日飽きずに食べているヌードルの方がよっぽど美味しそうに見えます。
でも私はそのことをDrに言い出せませんでした。
私がニンジンを食べているのを満足そうに眺めているDrに、ニンジン以外のものも食べたいです、とはどうしても言えなかったのです。
Drは孤独な人です。
孤独でなければウサギ相手にチェスをしようなどとは思わないでしょう。
Drの流儀を一言で言えば、勝つためには手段を選ばない、ということになるでしょうか。
そういった流儀がときに相手プレイヤーのプライドを甚く傷つける、ということがDrにはわからないのです。
長年その流儀でチェスを続けてきたために、今では私を除いてDrにはチェス仲間はいなくなってしまいました。
何だかDrの悪口ばかり言っているようですが、Drは本当は良い人なのです。
アイリーンは私がDrから虐待を受けていたのではないかと思っているようですが、とんでもありません。
よく晴れた日曜日に郊外の公園へ連れて行ってもらったことがあります。
はしゃぎすぎた私はDrとはぐれてしまいました。
Drの姿を必死に探す私の前に黒くて大きな犬が現れました。
その犬は恐らく先祖が狩猟犬だったのでしょう、本能的に私に襲い掛かってきました。
恐怖のあまり身がすくんで動けない私を助けてくれたのはやはりDrでした。
Drは必死の形相でその犬を追い払ってくれたのです。
自分自身が襲われることも顧みずに…。
私は私の生みの親であり、命の恩人であるDr.エイブラハム・ジェイコムズのことを心から尊敬しています。
Drと一緒に暮らせてとても幸せでした。
でも少しだけ、本当にほんの少しだけですが、私はDrを恨んでもいるのです。
もし私が普通のウサギだったら、こんなにもいろいろなことで悩んだり、苦しんだりせずに済んだかもしれないと思うのです。
それがつらくて私はDrの元を去ることにしました。
でもやっぱり何も言わずに出てきたのは良くないことでした。
一言、挨拶をしてから出るべきでした。
だから、一度Drの元に戻ろうと思います。
戻って感謝の言葉と別れの言葉をきちんと伝えたいのです。
ウサギだから礼儀知らずなのだ、とは思われたくないですから。
Dr.エイブラハム・ジェイコムズの謝罪へ続く