ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 巽 好幸著 「なぜ地球だけに陸と海があるのかー地球進化の謎に迫る」 岩波科学ライブラリー

2018年09月22日 | 書評
大陸型と海洋型クラスト岩石

太陽起源から地球進化の謎に迫る、陸と海の関係から読み解く 第5回

2) 大陸地殻ーその性質と謎 (その1)
上に大陸型と海洋型クラストの岩石を示しました。大陸地殻も海洋地殻ももとはといえば、地球内部が融けた状態のマグマが地上に出て冷えて固まったものです。固体地球の8割以上を占める岩石圏(マントルと地殻)は二酸化ケイ素を主成分とする岩石です。融解したマグマもケイ酸塩です。相転移では「部分融解」という現象が大切である。つまり固相と液相がある温度圧力範囲で共存する状態が存在する。部分融解が始まる温度を「ソリダス」、完全に溶融状態になる温度を「リキダス」という。酸化物の多成分系からなる岩石は、まず低融点物質が溶融し選択的に溶け出すのです。マントルを形成するカンラン岩は1気圧であればソリダスは1200°C、リキダスは1700°Cです。融点が1650度の二酸化ケイ素と280度の酸化マグネシウムを含むととすると、カンラン岩は二酸化ケイ素が40%、酸化マグネシウムが50%が溶解し始めると、最初は二酸化ケイ素を多く含むマグマ液相ができる。温度がさらに上昇し部分溶融が進むとカンラン岩に近い組成になる。圧力(深さ)が増すと固相ソリダスが広がり、マントル上部では液状リキダスが支配的になる。岩石の状態は温度と圧力の相図から決定される。つぎにマントルからマグマが作られる(部分溶融)は、マントル最下部が3800度の高温の核で加熱され、対流で上部に上がると圧力が減少し溶融状態になりやすくなる。第3の要因はソリダスを下げる水の存在である。結晶構造に水分が入り込むと、水和結晶構造が緩みだし400度以上の融点低下となる。地殻の移動が起こりやすいことについては図-2のプレートテクトニクス、そしてマントルの対流メカニズムについては図-6、結果としての地上へのマグマの噴出については図-7に示しました。プレートテクトニクスとは、固体地球の表層は複数のプレートで覆われていてこの運動がさまざまな地質現象を引き起こすという説です。図-1に日本列島を取り巻く4つのプレートを示しました。太平洋プレート、フィリッピンプレート、アムールプレート、オホーツクプレートです。2011年の東関東大地震と津波襲来は、太平洋プレートの日本海溝への滑り込みによるひずみの所為でした。図-2に示したように、プレート下の上部マントルが剛性固体として振る舞うリソスフェアという部分と、粘性の小さい流体として振る舞うアセノスフェアの力学的関係によって決定される。海洋地殻と大陸地殻を載せているプレートは、海洋プレートが海嶺で形成されされた後冷却して密度と厚みが増してマントル内部へ沈み込んでゆく。地殻プレートの沈み込みと浮力による引っ張りが働いてプレートが裂けて「プレート発散境界(プレート生産境界)」という部分ができる。海底では海嶺、陸上では地溝帯(リフトゾーン)と呼ばれる場所がプレート発散境界である。マントル対流がプレートを運搬しているのではなく、大規模なマントル対流の吹き出し口である「ホットスポット」(下部マントルと外核境界面で発生)で強力なマントル上昇力「スーパホットプルーム」が生まれるのである。同時に地殻がマントル層を落ち込んで外核に達する「スーパーコールドプルーム」の二つの力が下部マントルに働くのである。マグマが発生する場所は、ホットスポット火山、プレート滑り込み帯火山のマグマだまりである。玄武岩海洋地殻を作り出したマグマは、含水量が少ない。滑り込み帯マグマのような水の影響はない。このようにマントル物質から分離して上昇する玄武岩マグマは図-2に示したように、地殻内の密度が釣り合ったところで「マグマ溜り」を作る。大陸地殻の二酸化ケイ素量は約60%の安山岩質組成である。海洋プレートが海溝からマントルへ潜り込む「沈み込み帯」は火山が密集するゾーンである。図-1に示したように日本列島がその典型である。火山列島と言ってもよい。安山岩質マグマの活動帯である。海嶺のプレート発散境界やホットスポット火山の主要な噴出物が玄武岩であったのと対照をなす。

(つづく)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿