ブログ 「ごまめの歯軋り」

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経済問題 神田秀樹著 「会社法入門」 岩波新書

2008年09月18日 | 書評
21世紀の「会社法」はIT革命と資本市場への対応をめざすもの 第10回

株式会社の資金調達 (2)

本書は株式会社制度を記述しながら、「株式とは不思議な仕組みである」とか「株式会社とは不思議な存在である」という感嘆詞、ため息が何度か出てくる。これは人間の頭が作った仕組みであるから、抽象的で「有るか無きかの危い存在」に見える事から出てくるのであろう。人間の約束ごとにしてはよく出来たシステムだと云う満足感も混じっているのかもしれない。それはともかく、株主は資金を出す人であり、会社の事業の所有者であると云う大前提からスタートする。会社が必要な資金は、会社が儲けた利益を次の事業の資金とした内部資金と、外部から調達する外部資金がある。外部資金とは銀行から借りる場合と最近主流になった株式や社債を発行して資本市場から資金を集める方法がある。株式や社債の発行について会社法はさまざまなルールを置いている。株や社債を有価証券化(紙に書いた)または無券面化(電子化)した振替制度による。社債権者も株主と同様な保護におかれる事は先の利害調整に述べた通りである。授権株式制度と云うのは重要な制度である。会社が将来発行する予定の株式数を定款で定めておく。経営者は機動的な資金調達を可能とするため、株主総会の決議に寄らなくても四倍までは増資できるのである。発行可能株式総数を決めておくことは株主の持ち株比率の低下の下限が分るようにしておくのである。新株発行において既存株主の利害を調整するため三つのルールが考慮される。

第一ルール 新株は必ず既存株主に対して持株比率に比例して発行するルール
第二ルール 既存株主に対して経済的損失を与えないような払い込み金額を考慮するルール
第三ルール 新株発行をするべきかどうかを既存株主自身が決定するルール
日本の会社法は非公開会社(全部株式譲渡制限会社)については第一のルールを主としルール三も考慮する。第三者に特別に有利な払い込み金額での新株発行も株主総会の特別決議を経れば可能である。(第三者有利発行は株主総会特別決議を得ていない場合は差止事由となる)既存株主は授権株式数の枠まで持株比率の低下は覚悟しなければならないが、それ以上の希薄化に対しては第三ルールで対抗できる。株主に対して不利益をもたらす株式発行が不正であるかどうかを判定する場合、その発行目的が合理的であれば許されることを「主要目的ルール」という。



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