ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 岡田雅彦著 「医療から命をまもる」(日本評論社 2005年12月)

2013年12月27日 | 書評
現代医学の常識と誤りから、自分の健康を守る 第6回

6) 医者は苦し紛れの嘘をつく

 「さー検査をしましょう、さー治療をしましょう、さー薬を飲みましょう」という現代医学を推進する人たちには、不利なデーターばかりが出てきました。そんな現実を突きつけられた彼らは苦し紛れの言い訳ばかりをしています。抗がん剤の併用療法は、がんを治せるかどうかは別にして常識になっていますが、脳卒中や高血圧に複数の薬を投与するとどうなるかに興味が移っています。脳卒中患者の再発防止にサイアザイド系とアンギオテンシン変換酵素阻害剤の同時服用について大規模調査が行われました。結果は2剤を服用することで最高血圧が12mmHg下げられることと脳卒中再発を43%抑えることができ、1剤だけでは血圧は下げられても脳卒中は減少しないということです。この調査がきっかけとなり今や世界中で2剤投与が勧奨されています。ところが1剤服用でもブラセボ偽薬と比べて総死亡数は減少しませんでした。今や日本の製薬業界の年間売り上げは6兆円産業となりました。血圧降下剤の開発競争はめまぐるしく、アンギオテンシンⅡ受容体拮抗剤という新製品が注目されています。この薬に関するサイアザイド系薬剤との比較目的で大規模調査の結果が2003年に発表されました。結果は脳卒中による死亡も、心筋梗塞により死亡もサイアザイド系薬剤との差はなかった。さらに総死亡率についても両者に違いはなかった。こうなると新薬開発という話題のために、従来薬の効果比較という総論がどっかに忘れられてしまったようです。ガンは予防の方法はなく国民の半数はいずれガンで亡くなります。ガンには遺伝的要素(家族的)は少なく、生活習慣や環境汚染のほうが主要因となっています。ガンの試験で対象を均質にして行うのは困難で、かつ手術が終わってからでないとわからない情報も多いのです。ガンの大きさと浸潤の程度、転移、どこまで転移していたか、がん細胞の性質などです。これらの要因で治療の効果も随分異なります。肺がんの治療薬「イレッサ」による死亡や延命効果に対する社会の疑問(メディア)は頂点に達しました。抗がん剤に強い副作用があるのはイレッサに限りません。抗がん剤の医薬品としての認可条件は「20%以上の患者で、腫瘍の面積が半分以下になることで、その状態が4週間以上続くこと」です。抗がん剤について多数の大規模試験が行われ、2000年に完了しました。結果は「腫瘍を縮小させるが、ブラセボにくらべて延命効果はない」というものでした。乳がんの標準的治療薬である「タモキシフェン」の先を行くといわれた新薬「アロマターゼ阻害剤」(女性ホルモンの合成阻害剤)を世界中の医療機関で9000人の乳がん手術患者を対象にして、再発防止薬としてのブラセボを入れた単独アロマターゼ阻害剤と単独タモキシフェンの効果と、2剤併用効果が調べられました。5年後の乳がん再発数はアロマターゼ阻害剤が一番少なく、2剤併用が一番再発率が高かったという結果でした。ところが総死亡率を見ると、新薬と従来薬には延命効果の差異はありません。総死亡数の項目を無視して、アロマターゼ阻害剤の効果が宣伝され、新薬は世界中の注目を浴びました。またタモキシフェンを乳がんのハイリスクの人々に予防的に使えないかという目的で調査が行われましたが、総死亡率が2倍以上になってしまいました。死亡例は大腸がん、心筋梗塞、エコノミー症候群による死亡でした。女性ホルモンには出血を調整する大切な働きがあります。これを阻害するとホルモンバランスが崩れ心筋梗塞やエコノミ症候群が増えたのです。抗がん剤の効果をよく調べないで、抗がん剤の効果=腫瘍の縮小が腫瘍の縮小=がんが治ると短絡的な話にすり替わっていたようです。抗がん剤は正常細胞も殺しています。功罪半ばで実質延命効果はないのですが、今もなお病院では抗がん剤が大量に使用されています。医者は製薬業界のドル箱に貢献しています。
(つづく)


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