「日琉同祖論研究の現状-入門編-」という大変興味深い講座(県立博物館、久場政彦学芸員)が16日ありました。この日はほかにも行きたい企画がいろいろあったのですが、これを選びました。期待通りの講座でした。
「日琉同祖論とは日本人と沖縄人の民族的な起源が同じであり、これを学術的に立証することでその正当性を主張する理論のこと」と定義され、「沖縄学の父」といわれる伊波普猷(いはふゆう、1876~1947)の思想を中心にたどるものでした。伊波普猷については名前は知っていましたがまとまって学ぶのは初めてでした。1回の講座ではとても理解できるものではありませんが、文字通り「入門」者として、どこに刺激を受けたのかを書き留めておきます。
◎伊波の思想の基本=かつて琉球王国は独自のすぐれた文化を持っていたが(古琉球)、薩摩の侵攻(1609)によって奴隷状態におかれた(近世琉球)。それが明治政府の廃琉置県=琉球処分によって解放され近代化の道を歩むことができた(近代琉球)。つまり伊波は帝国日本への同化を積極的に提唱・推進した人物だった。
◎その一方、伊波はキリスト教を沖縄に普及した人物で、沖縄人には神の意思による「個性」があると、キリスト教にもとづく異化論を主張した。
◎伊波の最期の言葉=「地球上で帝国主義が終わりを告げる時、沖縄人は『にが世』から解放されて、『あま世』を楽しみ十分にその個性を活かして、世界の文化に貢献することが出来る」。
帝国日本への同化論と異化論の同居。帝国主義への同調と反帝国主義。伊波の思想の歩み(転向?)は実に複雑です。でも、その底流には、沖縄(沖縄の人々)への愛が一貫して流れていたような気がします。
講座は開会まえから用意されていた資料がなくなり立ち見が出るほど、主催者も驚く超満員でした。伊波普猷、日琉同祖論が今も多くの沖縄の人々の関心の的であることが表れていました。私もこれからさらに勉強していきたいと思います。
<今日の注目記事>「沖縄タイムス」(18日付1面トップ)から(琉球新報にも同様記事)
「高江の移植植物6割枯死 絶滅危惧種含む11株中7株 ヘリパッド建設で防衛局」
「米軍北部訓練場に垂直離着陸輸送機オスプレイが使う離着陸帯(ヘリパッド)を造るため、沖縄防衛局が東村高江の建設予定地に生えている希少植物を別の場所に植え替えて保全しようとしたが、6割以上が枯れるなど事実上失敗していたことが17日、分かった。訓練場がある北部地域は、国の天然記念物ヤンバルクイナが住む森林地帯で、枯れた中にはモクセイ科の絶滅危惧種も含まれる。離着陸帯建設が自然を損なう結果となったことで、オスプレイ配備への反発が一層高まりそうだ」