アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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大阪はなぜ医療崩壊状態に陥ったのか

2021年05月10日 | コロナ禍と政治・社会

    
 コロナ禍で大阪はすでに医療崩壊状態と言われています。この状況下で吉村洋文府知事(日本維新の会)は、「私権制限しないことが本当に社会の安全を守るために適切なのか。医療資源には限りがある。タブー視せず議論すべきだ」(4月27日記者団に=5月3日付共同配信)など、「私権制限」発言を繰り返しています。自らの失政を棚上げし、逆にそれを口実に憲法違反の権利侵害を強めようとするのは言語道断です。

 大阪府はなぜ深刻な医療崩壊状態に陥ったのでしょうか。

 黒木登志夫東京大名誉教授は、最新著『新型コロナの科学』(中公新書2020年12月)で、全国的な状況についてこう指摘しています。
「コロナ禍の中で、保健所がこれほどの厳しい状況に置かれているのは、保健所そのものの数が減少したことによる。地方自治体に所属する地方衛生研究所と保健所は、地方財政の緊縮化を受け、積極的な応援団もない中、人員削減、予算縮小された。保健所長会の報告によると、保健所の数は、1997年から2020年までの22年間に、852から472に45%も減少した

 そのうえで黒木氏は、大阪府についてこう書いています。
橋下徹は、大阪府知事になった2008年から、大阪の保健所を「改革」した。その結果、大阪の保健所数と保健師数は減少し、全国のワースト2になった

 そして橋下氏自身がツイートで次のように述べていることを紹介しています。
「僕が今更言うのもおかしいところですが、大阪府知事時代、大阪市長時代に徹底的な改革を断行し、有事の今、現場を疲弊させているところがあると思います。保健所、府立市立病院など。そこは、お手数をおかけしますが見直しをよろしくお願いします」(2020年4月3日の橋下徹氏のツイート。黒木氏著『新型コロナの科学』より)

 謝罪の言葉もなく「見直しをよろしく」とはいかにも無責任ですが、自らの誤りを認めたものです。しかし吉村知事は、この橋下氏の言明にもかかわらず、医療体制の抜本的な「見直し」を行おうとせず、逆に私権制限発言を繰り返しているのです。
 こうした吉村氏に対し、兵庫県明石市の泉房穂市長が、「自分が病床確保していないのに国民に責任を転嫁して、私権制限と言うのは政治家の責任放棄だ」(5月3日付中国新聞=共同配信)と批判するのも当然です。

 問題は、これが大阪だけのことではないことです。弱肉強食・自己責任の新自由主義政策によって、医療・介護予算を削減し、現場を疲弊させてきた元凶は、前述の黒木氏の指摘にもあるように、歴代自民党政権です。その結果、コロナ禍での医療崩壊状態は全国に広がろうとしています。

 にもかかわらず菅義偉政権は、抜本的な対策を打たず、緊急事態宣言を焦点化し、これをきっかけに憲法改悪すら図ろうとしています。日本維新の大阪府市政と自民党の政権はまさに二重写しです。

 橋下氏でさえ、自らの誤りを認め、「見直しを」と言っているのです。吉村知事、菅首相が今すぐやらねばならないのは、医療・介護現場に予算を投入して抜本的に立て直すことです。

 

 




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