アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

首相の「夫人同伴」とジェンダー

2023年07月21日 | 天皇制と政治・社会
  
 
 岸田文雄首相は先のNATO(北大西洋条約機構)首脳会議出席(11、12日)に裕子夫人を同伴しました。今回に限らず、外遊に夫人を伴うことは少なくありません(写真左)。日本だけではありませんが、この悪しき慣習はやめるべきです。その理由はいくつもあります。

 第1に、「夫人同伴」は天皇制(君主制)の模倣だからです。

 「夫人同伴」がいつから、どういう経緯で始まったのか、詳細は分かりませんが、ウィキペディアには、「首脳が外国訪問に妻を伴うのは、かつて王侯が遠方へ出かける際には必ず妃を伴った習慣の名残である」とあります。

 日本の「皇室外交」において、天皇や皇太子は基本的に皇后、皇太子妃を同伴します(写真中)。

 主権在民の社会で、「国家」の代表とされる首相が天皇制の慣習に倣うのはきわめて不適切です。

 第2に、甚だしい政治の公私混同だからです。

 言うまでもなく、首相夫人(いわゆるファーストレディ)は選挙で選ばれた人ではありません。公務員でもありません。その人物が首相の配偶者であるという属性で「国家」を代表するかのように振る舞う権限はなく、公私混同も甚だしいと言わねばなりません。

 首相の息子を「秘書官」にして首相官邸に入れることが問題になりましたが、外遊への「夫人同伴」もそれと同じ問題性を持っています。

 第3に、公費(市民の税金)の無駄遣いだからです。

 「夫人」の海外渡航・滞在費用はすべて公費(税金)です。
 それだけではありません。「首相夫人」には複数の省庁から派遣された官僚が専属担当としてつきます。安倍晋三元首相の昭恵夫人には5人の担当官僚がつき、「森友学園」疑惑で問題になりました。専属官僚ももちろん公費負担です。

 第4に、強調する必要があるのは、典型的なジェンダー差別だということです。

 首相が女性の国では男性のパートナーが同行することが希にありますが、圧倒的に「夫人同伴」です。

 夫人が一歩下がって首相に同行する姿は、典型的な「内助の功」の図であり、家父長制度の残滓といえます。

 これは、第1の「天皇制の模倣」と表裏一体の問題です。天皇・皇太子が皇后・皇太子妃を従える姿は、家父長制度そのものであり、「男系男子」の世襲制である天皇制の本質です。

 首相の「夫人同伴」はその天皇制に倣って、男尊女卑の家父長制を表象したものです。ジェンダー差別の解消が焦眉の課題になっているとき、けっして容認できるものではありません。それが無意識の慣習になっているだけにいっそう危険です。直ちにやめるべきです。

 
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